第3話天神地下街で昼食を
兎に角現状を打破する為には情報を集めねばならない。
「局長殿!」
俺は挙手をして発言の許しを得る。
「自分は転生初心者であります。故に質問したいことが有るのですが、先ず今は西暦2022年であっていますか?」
ニヤリと笑いながらヒメナ局長は応えた。
「今は皇紀2682年だ」
なるほど何となくだが状況が理解出来そうな気がしてきたぞ。憲法改正とかしてそうな世界線だな。
質問を続けよう。
「転生管理委員会とはなんですか?それと地球防衛機構も聞いたことないので説明して欲しい」
「スマホのアプリを使え。全部それで解る。承認ボタン押したろう。もう登録は済んでる」
ホーム画面を見ると真ん中に見知らぬアプリが幅を利かせていた。
『EDO』と表示されたアイコンの下に『転生管理』の4文字がある。俺を転生させたのはコイツか。
タップし開いてみる。すこぶる使いやすい。
「おい。移動するぞ。地下に降りる」と局長殿は歩きだした。俺は無論ついて行く。行かねば後が怖い。
普通に天神地下街に降りて行くのだが多分これは秘密の扉っぽいモノが階段の途中にあるに違い無いとキョロキョロしてるうちに洒落たカフェの前に到着した。
いつもは通り過ぎてた店だ。高いコーヒーを出すタイプの、意識高い系の人々が集う場所だから俺には縁遠い。
ヒメナ局長は胸のバッテンの紋章を誇示し軍人の様にブーツをカツカツ鳴らしながら「抜刀隊見参!」と軽く声出しをして入っていく。
あぁ、やっぱ変だ、異世界なんだと思ってしまう。
店員は普通に対応し我々を奥の席に案内してくれるが良く考えたらデートみたいだな。
少しだけニヤニヤしながら着席しEDO(地球防衛機構)のアプリで異世界情報を漁る。
局長は「いつものヤツで頼む」と注文し「同じで良いな?」と俺に言うので無論「あっりがとうございまっす!」と元気よく返事をした。
アプリ内の転生者マニュアルを夢中で読んでいると店員がイツモノヤツを持ってきた。
それは大盛り豚骨ラーメン煮卵付きチャーシュー別皿セットだった。白飯は無い。
このセカイの喫茶店のメニューは居酒屋寄りなのか。
俺にも同じセットが出されたが食欲はゼロだ。
ヒメナ女史は普通に美味そうに食べ始める。
俺がポカンと眺めていると『お前も食べろ』と
頭の中で声が聴こえた。
ますますポカン顔をする俺に局長殿は鋭い眼差しをむけた。そしてラーメンを啜るのを中断して言った。
「仕事を手伝ってもらう。しっかり食事を取らんとバテるけんな。5G世界より厳しかぞ。ここは。」
そして再びラーメンを食べチャーシューも食べ再び俺の脳内に語りかける。
『質問を思い浮かべろ。答えてやる』と言う。テレパスだったのか。
『テレパスかどうかはしらん。珍しい能力ではないぞ。お前はできんのか?』
できませんよー。
『そうか。まぁヨカたい。そのうち何かの能力が出てくるだろ。転生者だからな』
えっ!てことは局長も転生を?
『そうだ。一ヶ月ほど前にコッチに来た』
なーんだ仲間じゃないですかーデヘヘ。
俺が脳内でニヤけると『先に来た者が先輩だ。わきまえろ』と冷たい声が頭蓋で響いた。
荒っぽい口調のテレパシーだ。
しかし女性が武装して高圧的な態度で街を闊歩するのがこのセカイの風潮なのだろうか?まさか世界大戦とかやってないだろうな?地球防衛機構は世界政府っぽい組織のようだし人類は遂に完全なる平和を手に入れたのかもしれん。安心して良いかな。
『残念だな。いま戦争中だ』
えっ!!それは困る。元の平和な世界に還りたい。強く俺は思った。
すると再び食事を中断し美しい瞳で睨みながらヒメナは言った。
「人類社会が平和だったことなど無いだろうが!阿呆か!」
女性から厳しい言葉を浴びせられるのは慣れている。コンビニの仕事でも居酒屋の洗い場でも女性の皆様方には俺は丁寧に接して良い関係を築いてきた。だから多少の罵詈雑言は気にしない。しかし美人に罵倒されるとキツイ。良い関係を構築できんではないか。おっとヤバイ。心を読まれる!
ヒメナは続けた。
「ファイブジー世界は平和だったのかもしれんが残念ながら此処は9Gだ。ずんだれとったら知らんけんな!」
俺も真っ直ぐに眼を見つめて訊くことにした。
「ひとつだけ確認させてください。このセカイにはラノベ有りますか?」
カクヨム無いと困るとです。
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