第4話 僕とスマホ
彼女の実家を後にして、僕は来た道を帰った。その間ずっと、彼女のスマホを握りしめていた。玄関を開ける。ふわりと結花の匂いが漂った気がした。
「ただいま」
返事の返って来ない部屋へ虚しく僕の声は飲み込まれた。
日が傾き部屋は朱く染まっていた。部屋の電気を点け、テーブルにスマホを置いて、ソファーに腰を沈める。
家路に着く前に何度か電源を入れようとしたが入らなかった。まずは充電からだな。それを眺めながら思考を巡らせる。何で結花はスマホを実家に? それに音信不通になってから大分時間差で。
そんな事を考えているとスマホに明かりが灯り、特徴的なリンゴのマークが浮かび上がる。スマホを手に取ると、やはりパスコードの入力画面に切り替わった。桁数は六桁か。とりあえず、僕と結花の記念日、誕生日を数回打込む。どれも通る事は無かった。
『一分後にやり直してください』
画面に表示された文章をみて、冷静さを取り戻す。このままでは、アクセス出来なくなる。もし、結花が誰かに何かを知らせようとしていたなら、どこかにパスコードがあるかもしれない。お義父さんは気味が悪くて触らなかったと言っていた。
隠すとしたらここか――。スマホケースを徐に取り外すと一枚の紙切れが床に舞い落ちる。そこにはパスコードと、SNSのアカウントが走り書きされていた。
紙の通りにパスコードを打ち込むとホーム画面が映し出される。電話マークには数十の通知が表示されていた。僕や陽太、朋美さんにお義母さん、友達と思われる人に勤務先がずらりと表示される。
一度ホーム画面に戻り左にスワイプしながら紙に書いてあるSNSを探し起動する。アカウントを入力。パスコードは同じで良いのか。すると難なくログイン出来た。
「これは鍵アカというやつだろうか」
僕は結花の足跡を辿る為に、最初の投稿から遡って目を通すのだった。
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