第10話 これが一般人の策略?

 私は黒野真咲、ライトロードの構成員にして新聞部の部員。


 私たちが目下追っているのは『切り裂き』の異名を持つ男。奴は電車などで痴漢行為をし、自身の空間に連れ込んでバラバラにする。


 魔法や超能力、呪力なんかはすべて異能と言われる。異能の中でも強力な力というのは大体が何らかの予備動作を必要とする。


 奴が持つ力は自身の空間を造り出し、その空間内の人間を自在に操れるという強力な力だ。それだけ強力となると必ず予備動作が必要なはず、故に奴が行っている痴漢行為がそれに該当するというのがライトロードの見解だ。


 囮となって空間内に引き込まれ、そこで奴を討つ。

 その作戦を連休の初日に行うはずだったが、サオが来なかった。この作戦は彼女の魔法が必要になってくる、そのためにその日は中止になった。


 次の日、サオは予想外の男を連れてきた。

 通りすがりの一般人、彼が協力してくれるのなら作戦の成功率は上がるだろう。


 あえて痴女っぽい恰好で来たのだが、逆効果だった。

 冷静になって考えれば、痴漢行為をする奴は大体が大人しめの女の子を狙うだろう。私自身普段でもされたことないし(香とサオは有るらしい)。


 香は解るが、サオを痴漢する奴はどういう心境で行っているのやら。


 とかなんとか考えていたら、少し離れたところで香とサオと彼が何かヤっていた。

 え? 本当に何やってるの、あの子たち。


 電車内の様子がおかしな雰囲気になっていく。

 その空気に飲まれたのか、切り裂きはついに動いた。


 太く固い一本一本の指が、私のホットパンツに侵入してくる。密着状態のお尻とパンツの間に入り込んだ手は、ぐにゅぐにゅうとお尻の感触を確かめるように揉んでいく。


 くっ――長い中指が私のお尻の穴に侵入してきて、普段以上に露出度の高い恰好のせいで敏感になっていた身体が余計に感じてきてしまう。


 奴の逆の手が私のシャツの下から潜り込み、他人より大きいと自負している胸を揉みしだく。ノーブラのせいで乳首などを攻められる。

 ふーと耳に息を吹きかけられ、ぼそぼそとイヤらしくねっとり言葉責めをされる。


(感じてるのかい?)

(ここ、固くなってるよ)

(こんな恰好で来ちゃって、誘ってるんでしょ?)

(おじさん、興奮してきちゃったよ)


 気持ち悪い、がこのまま耐えるしかない。


 彼らが羞恥心に耐えてまでこの状況を作り出したのだ、私が耐えずしてどうする。


 私の判断ミスだった、なぜこんな恰好で来てしまったのか。それが作戦の失敗に繋がるとも知らずに、しかし彼がそれを察して挽回してくれたのだ。

 彼らも恥ずかしいはず、なら私はそれ以上に耐えるしかない。


「――イったね? じゃあ行こうか」


 イってしまった私は意識を失い、目覚めると四肢を拘束されて真っ白の空間に居た。立った状態で大の字で拘束され、いつの間にか全裸になっていた。


「起きたかい? ここはおじさんが造り出した空間さ。外とは時間の流れが違うからゆっくりしていきなよ」


 こつこつとゆっくり歩いてくるのは先ほどの痴漢。奴が間違いなく切り裂きだろう。


「ふむ、落ち着いているねぇ? 何かあるのではと思っていたが……もしや光の関係者かな?」


 奴は私の胸を揉みながら、顔を覗き込むようにくっさい息を吐きかける。


「まあいい、今日の私はなんだ。時間ギリギリまで楽しませてもらうよ」


 その言葉通り、奴は私の身体を弄ぼうとした。が何故か空間が壊れていく。


「な、何だ!? なぜ私の空間にヒビが? あっちも! あそこも! なぜだ!? こんなことはあり得ない!!」


 予想外の出来事に奴は困惑している。


 どういうことだ? この状況は奴にとっても想定外。

 私たちの作戦では、奴が私の身体に挿入した瞬間にサオの魔法が発動し、兄と白戸先輩が乗り込んでくるという手筈だった。


 この日の為に恥ずかしい思いをしてまでサオに子宮に魔法を掛けてもらったのに。


 ぱりーんと空間が割れていき、最後には消滅した。


 気が付くと電車内で奴に痴漢されている状態に戻った。


「ど、どういうことなんだい? 君が何かやったのかい?」

「……私は何もやっていないわ、やったとしたら、彼でしょうね」


 胸と尻を揉まれながらも、私は勝利を確信した。





「で? あんたは闇の勢力に属してんのか、ああ”」


 駅に着き、奴を拘束した私たちは喫茶店にやって来た。ここはライトロードの支部の一つだ。


 兄が奴を尋問する中、彼はサオと何やら話していた。


「ねえ、貴方が何かしたの?」

 確信はあったが、一応聞いておこう。


「さあな……だったんじゃないか? あの男は」


 これが彼の異能の力なのかしら?


 私は不思議に思いながらも、彼の腕を引っ張ってトイレに向かった。

 サオの魔法は、精液で消せる。消さないといろいろと後遺症が出てしまう。


 洋式トイレに強引に座らせた彼に私は跨った。


「ふふふ、もうすでにぐちょぐちょだから前戯は不要よ」

 仕方ない、彼に私の初めてをあげよう。


 あのおっさんに奪われなかっただけマシか。

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