第3話 日常に裏とか有るの?

 コツ――コツ――。


 蹴った石が転がっていき、電信柱に当たって止まった。


「ハア……どうしてあんな厨二連中に巻き込まれっかなぁ?」

 新聞部(厨二病集団)に強引に部活に入れられた俺は、トボトボと帰路に就く。断ろうにも俺の立場が弱すぎた。


 彼女たちの説明を要約すると――。


 世界の裏側で暗躍する組織が有り、それに対抗する組織も有る。

 それが『ダーク・ネクストステージ』と『ライトロード』だ。


 ダークの方に与する悪の魔法使いが居て、それに対抗するのが魔法少女。


 それらの闇と光、それぞれのバラバラの組織を纏めるのが『NNN』と『SSS』と言う連合らしい。


「――馬鹿馬鹿しい、いい歳した高校生が何言ってんだか」


「そうね、本当にそう思うわ」


 予期せぬ返答に俺は驚き、声のした方向に身体を向ける。

 そこには夕焼けに染まる美しき女性が居た。


「せい、と……かい、ちょう?」


「うふふ、どうしてそんなに動揺しているのかしら?」


「ふえ、いや、あの……ああ」


 紫の長い髪と妖艶な表情によく似合う泣き黒子、ブレザーを着こなす圧倒的なスタイル。俺より高い身長に、黒野以上茶柱未満の胸。すらっと長い脚が艶めかしい黒タイツで引き締められている。


 入学式でも挨拶をしていた生徒会長の紫藤ユカリ。


 オカシイ――本当にオカシイ。

 ここまで普通に生きてきた凡人、それが俺だ。それなのにここに来て本来関わることのない奴らと関わってしまっている。


 俺の動揺の何が面白いのか、会長はクスクスと隠すことなく笑う。


「私もあの連中のことは知っているの、本当に困る子たちよね」


「ほ、本当ですか!?」


「考えても見なさい? 副会長が関わっているのよ、それに部活申請は生徒会を通すことになってるの。当然私も一枚噛んでるわ」


 冷静に考えるとそうだな。

 聞く感じ会長も困っているようだ、つまり俺の味方?


「何なんでしょうねあいつら? 現実が見えてない」


 仲間を得たり――俺は漸く掴んだ共感できる仲間に興奮してしまう。


「そいうよねえ……まったく、光は闇に飲まれるだけなのにね」


「そうそう、闇がね! 闇?」


 何だろうか、一瞬で風向きが変わった気が。


 会長は手を翳すと、一線の光が俺の顔の横を通過する。


 ツー――。


 頬から血が流れる。


「ほえ……はわああ!! ええええ!?」


「あら、逃げちゃうの?」


 一目散に逃げだした俺を、会長は追ってこなかった。






「あの子がそんなに大事なのかしら、白戸君?」


 紫藤が男を追おうとしたときに、邪魔をした存在が居る。


 魔法の鎖が紫藤の身体に巻き付き拘束する。

 後ろからは細長いレイピアが顔の横から、前からは日本刀が逆側を通過していく。

 

「紫藤会長、いや『時空の魔女』……彼には手を出させはしませんよ」


 白戸がいつもの笑顔を崩すことなく近づいていく。横には茶柱が泣きそうな顔で付いていく。


 少し離れたところから金井が両手を突き出し、魔法で紫藤を拘束している。

 レイピアは真咲、日本刀は拳がそれぞれ手にしている。


「『通りすがりの一般人』たる彼がどちらの陣営に就くかなんて分からないじゃない、なら勧誘するのも悪くないでしょ?」


 追い込まれている様にも見える紫藤だったが、余裕の笑みは崩さない。


「彼は渡さないわ」

「俺たちが居る限りな」


「そうそう、魔女には特にね~」

「ふええん、仲良くしましょうよぉ」


 五対一、それでも警戒は解かない。


「始めましょうか――闇と光の戦いを」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る