初めは ここから

 部屋はブルーで統一されていてひんやりとした感じ。

「ゆう子さん、どうぞ。好きなところに座って、僕は手洗いするけど」

「じゃあ、私も」

 有紗はベッドの端にそっと座る。思ったよりもふかふかではなく結構固い。冷蔵庫を開けると微炭酸のドリンクを出して修也は隣に座る。

「ブルーの部屋は神経を沈める効果がある。ジュース飲む?」

「ありがとう」

 歯磨きをしてきたようで、ミントの香りが少しする。知らないうちにすぐそこに顔があった。一口微炭酸を口に含むと修也は、ふっと深呼吸した。

 もう一口飲んだように見えたが、アッという間に有紗の肩を抱いて、顎に親指と人差し指を当ててキスをした。アッという間にベッドに押し倒される。ああ、私と思った時に短いキスは冷たい唇の感覚だけを残してすぐに離れた。


「このままでいいのかな。添い寝コースっていうんだけど、それ以上がご希望なら行ってね。でもあと一時間しかないよ。せっかく部屋入って何もしないとお金もったいなくない? それとも僕のことタイプじゃなかった?」


 同じベッドに横になり、有紗の髪をくるくると指で巻いてじっと横顔を見つめる彼の目。

 有紗はきれいな横顔を直視できずに、ドキドキする胸に手を置いた。

 修也はその手を取ると自分の胸に置いた。

「修也さんが嫌とかそういうわけじゃない。ただ……」

「ただ? 怖い。男が、僕が。それとも初めてなのは風俗じゃなくて?」

 恥ずかしいことを口にはできずに、うなずいた。

「無理してこんなことしてまで、自分をらくにしたかった? それとも興味本位?」

 有紗はあおむけが嫌で上半身を起こした。

「周りはみんな男性経験があるし、彼氏なんかしょっちゅう変えているのに。私は今まで彼氏なんかいなかった。もう大学を卒業して就職するのに……」


「じゃあ、卒業記念ということで。僕でよければ延長時間をプレゼントするからチャレンジしてみない?」

 え? と振り向こうとした有紗を後ろから修也は優しく抱きしめた。バックハグの香りは修也のコロンの匂い……。

 

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