ガストン・リュング
鉄壁と呼ばれる男 ~副音声多め~
『一番槍』…集団戦、対城戦において先陣を切って敵に向かう。その役目は開戦の合図であると共に、味方の士気を煽り高めること。
死のリスクは高く、敵の手の内も分からない状態で突っ込み、罠にはめられ死ぬ可能性も高い。
『
最小人数で行われ、勢いに乗っている敵の猛攻を防ぎつつ味方を逃がす。弱すぎても務まらず、高い実力と自身の死を覚悟しても戦う強い精神が求めらる。生き残ることは非常に難しい役目である。
だがこれらを何度もこなし、生きて帰ってくる男がいる。
その男の名はガストン・リュング。
エウロパ王国の精鋭のみが従事する、王国騎士団、その中の分隊長の立場にあるガストンはその恵まれた体格と、大盾と槍を用いた戦法で敵を倒していく。
敵の攻撃を一身に受け止め仲間を守り、一瞬の隙をついて槍で敵を貫き活路を切り開く。
面倒見のいい性格と、細やかな気遣いのできる男として、仲間からの信頼も厚く、ゆくゆくは昇格し皆を導く存在になると誰もが信じていた。
* * *
金色の長い髪を後ろに束ね、精悍な顔立ちでガストンの前に立つ女性は、手に持った紙を見てため息をつく。
彼女の名前はメルタ・ハンメルト。エウロパ王国騎士団の小隊長で階級は中尉、分隊長であるガストンの直属の上司となる。
「それで、お前はここを辞めて冒険者になると。自由の効かないこの騎士団では人々を助けることができないと。そう言うわけだな」
紙をパシパシッと叩きながら目の前にいるガストンを鋭い目で見つめる。
「メルタ中尉。騎士団のように人々を照らし、導く太陽のような存在は必要です。
ですが私は民に寄り添い、小さな問題にも対応できる。そんな蝋燭のような存在でありたいと思っています」
〔副音声〕【メルタ中尉の鎧って特注なんだよな。胸でかいから、普通のじゃきついんだろうな。あぁ、あの鎧の間に挟まれてぇ】
胸に手を当て、曇りのない純粋で真っ直ぐな瞳で見てくるガストンの視線を受け、メルタは大きなため息をついて、諦めたように笑う。
「まったくガストン。お前という男には敵わないな。栄誉ある騎士団の立場を捨ててまで民に寄り添い守ろうというのだから。
退団を許可する。お前の活躍を期待しているぞ。
それとだな、お前が冒険者になっても、こちらから助力は惜しまない。私の名を使って良い、遠慮なく頼ってくれ」
「はっ! 望外なお心遣いに感謝します」
〔副音声〕【色気のない騎士団から出れて、尚且つメルタ中尉会える機会があるとは美味しいなこれ。
冒険者の色気も良いけど、騎士団の規律ある中でチラッと感じる色気もたまらんしな。
あ、頭下げると鎧の隙間から太ももが少し見える! いいわぁこれ! もう少し頭下げとこ】
メルタに更に深々と頭を下げ感謝の言葉を述べるガストンの態度にメルタが感心する。
(これほど謙虚に人に尽くし、強さと優しさを兼ね備えたものが、この騎士団に何人いるだろうな。
父がガストンをハンメルト家に迎え入れれなかったことを、私の唯一の失態だと怒るわけだ。
ガストンが結婚していなければ私だって……いやこれ以上は考えるのはよそう)
メルタは自分の心に持っている想いを必死に隠しながらガストンが扉の向こうへ去っていくのを見つめる。
そんなガストンが、冒険者としての道を選ぶ理由が騎士団の自由のきかなさと、色気のなさだとは露ほどにも知らない。
* * *
メルタの元を去り、廊下を歩くガストンの前からやってる左右に付き人を引き連れた清楚な女性。
ガストンは廊下の壁を背にしてその女性に道を譲る。女性はガストンの前で止まると、優雅にお辞儀をするのに対し、ガストンも胸に手を当て頭を下げる。
「ガストン、噂で聞きましたが騎士団を退団し、冒険者になるというのは本当なのでしょうか? 本当ならば、もうこの国をお守りいただけないのでしょうか」
「はっ! 退団の件本当でございます、ローレヌ王女。
ただ、私は自分の信念を貫くべく冒険者へなろうと思ったしだいであります。決してローレヌ王女にお世話になった恩義、忘れたわけではありません。故に我が盾にてこの国をこれからも守ることを誓います」
〔副音声〕【ローレヌ王女可愛いよなぁ。スカート今日もフワフワっ! あの中潜りてぇな。いきなり四つん這いとかなってスカートの中入ったらビックリするだろうな。ああ潜りてぇ!】
「そうですか残念です……ガストンはエウロパ王国にとって必要な人です。いつでも頼ってください」
「ローレヌ王女様直々にありがたき言葉を頂き感謝いたします。
このガストン、国の為なら我が身捧げますゆえ、いつでもお呼びください。いつでも駆けつけます」
〔副音声〕【ローレヌ王女のスカート長いから足見えねえな。あ、でもくるぶし見える。くるぶし綺麗だなおいっ! ここだけしか見えないのもある意味ご褒美かもな。後は想像で補えってことか。いける! オレいける!】
くるぶしから善からぬ妄想を広げるガストンはジッと姫の足元を見つめる。見つめ過ぎて瞬きを忘れ、乾いた目から涙が滲んでくる。
そんなガストンを見てはガストンが別れを悲しみ、涙が溢れぬように堪えていると勘違いしローレヌ自身も思わず涙目になってしまう。
(ガストン……地位や名誉を求めず人々の為に尽くす。貴方のような立派ない騎士はそういません。
立場なんてものが無ければわたくしも一緒に……いえ、これ以上は考えてはいけませんね)
目に溜まる涙と想いを悟られないようにローレヌはガストンの去り行く背中を名残惜しそうに見つめる。
* * *
「魔族が現れたぞ!! 撤退だ! てったーーーーい!!」
森に響く撤退の声で、冒険者の数グループが撤退を開始する。その様子に魔族率いるグループは勢い付き冒険者の男を追い詰める。
ニヤリと笑みを見せる魔族が振り下ろす剣が不気味に光る。
「伏せろ!!」
声が響き冒険者の男は身を伏せると轟音と共に飛んできた大きな盾が、魔族が振り下ろしていた腕ごと体を潰してし吹き飛ばしてしまう。
何が起きたか皆が理解出来ない中、槍を持った男が現れ、他の魔族の胸元に大きな槍を突き刺さし、素早く抜くと胸元から血を吹き出し倒れる。
魔族を押し潰している盾を素早く拾うと、魔族が使役する狼のような魔物の攻撃を盾を振り受け止めながら、そのまま魔物ごと地面に押し潰す。
「なんだコイツは!? お前たち陣形を崩すっ!?」
木の影から指示を出す魔族の1人が槍で突かれ、木にすがるようにズルズルと力なく滑り落ちる。
身の丈より大きな盾を持ち、槍を持つその男の背を見て冒険者たちは、先程までの表情とは違い、歓喜と尊敬の色を見せる。
「ガストンさん!!」
冒険者たちが呼ぶ声にガストンは背中を向けたまま答える。
「怪我しているものを運べ。戦闘できるものは運搬するものを守れ。ここはオレが引き受ける」
その力強い言葉に冒険者たちは男女問わず熱い視線を送り、撤退を開始する。
そんな冒険者一行をチラッと見るガストンはフッと笑うと、魔族がイラッとした声を出す。
「何がおかしい。少しは強いようだがお前1人で我らを相手するというのか?」
「いやなに、仲間が無事に逃げる、そんな姿を見るのがすきなだけだ」
〔副音声〕【女性の走る後ろ姿見るの好きなんだ。特に足はいい!】
余裕の笑みで答えるガストンに、無数の炎の塊が襲いかかってくる。後方に控えていた魔族の魔法攻撃よるものだが、ガストンは盾を構えそれらを受け止めていく。
盾に遮られた炎は弾け火花を散らす。絶え間なく撃たれる炎だが、やがて魔族の体力が尽きたのか、一旦炎が止む。
所々焦げ煙を上げる盾に向かって、剣を持った魔族が数人向かってくる。
盾が僅かに動くと光が走り一人の魔族が血を吹き上げ倒れ、続けざまに隣の魔族の首が斬られ喉を押さえ倒れる。
「なんだ、こいつ。我ら魔族をこうも容易く切り裂くだと……」
穂先を振るい血を払うとガストンは盾を構える。
「オレには戻るところがある。悪いが早く終わらせてもらうぞ」
〔副音声〕【早く助けた女の子達のとこ行きたいから、本気でいくぞ】
盾を構え魔族の攻撃を防ぎつつ、一瞬の隙を狙い鋭い閃光が走り魔族たちは数を減らしていき、撤退を余儀なくされる。
* * *
昼間でも薄暗い森を心配そうに見つめる冒険者の女性は、手を組み祈るように見つめる。
やがて森に人影が現れると冒険者たちの間に緊張感が走り、怪我をしていない者が武器を構える。
だが、大きな盾と槍を持つガストンだと分かると皆が喜びの声を上げ駆け寄る。
そんな冒険者たちに囲まれ、爽やかに笑うガストンが
〔副音声〕【ふむ、この位置から胸がよく見える。冒険者は距離感が近くていいっ! 距離感大事だ。やはり冒険者になって正解だな。
っておい! 男は近付くな、近い! 距離感を大事にしろ!】
などと思ってるなどは知らない。
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『転生の女神シルマの補足コーナーっす』
みんなの女神こと、シルマさんが細かい設定を補足するコーナーっす。今回で9回目っすー。
※文章が読みづらくなるので「~っす」は省いています。必要な方は脳内補完をお願いします。
ガストン・リュング。身長190センチ。盾と槍を使用し戦う。土魔法を得意とし盾に纏わせることで強度を上げたり、盾を地面に固定し攻撃を受け止める負担軽減を行う、防御面。
武器に纏わせることで強度、鋭さを上げ敵を貫く攻撃面、どちらにも特化した使い方をします。
この繊細且つ豪快な使い方が出来るお陰でガストンは、魔族を貫くことが可能となっています。
強く人当たりも良いガストンのファンは多い。彼は結婚しており現在子供2人いる。妻の名はミレーヌ。
ガストンとミレーヌはおしどり夫婦としても有名で、ガストンは他の女性に紳士的であるが決してなびかない。
そのことがさらにガストンの女性人気を上げている。
……神も万能ではないっす。彼の行動履歴なんかは把握出来るっすねど、心の内まで分からないっす。
思ってることは無茶苦茶でも実行に移していないガストンに比はないっす。
そして私が犬に転生させたこと……これは正解だったのか、失敗だったのか神も知るところではないっす……
次回
『各転生者とガストンと妻の影』
詩たちとの過去の出会いと妻ミレーヌの影。現世シュナイダーの礎は着々と作られているっす。
いや礎は初めからそこにあったっす。冒険者となったガストンの戦い? は続くっす!
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