スマホ

影神

メモリー



毎日毎日、、




一生懸命生きている。






例え他から見たとして、






『一生懸命』






に該当しなくても、




私は既に






『限界』






を越えていた。






何でこうなった。






どうして。






一体何を間違えたんだ。






日々を自分と向き合う。






自分はどうしたくて、




何処へ向かって行きたいのか。






答えはそう、簡単にはいかなかった。






何せ、答えがあるのならば、




最初からあったからだ。






私には答えを持ち合せる程の、




思考や、経験、技術がなかった。






現状から打開したい。




変わりたい。






ずっとそう、変化を求めた。






そうして、私がたどり着いた先は、






自らの世界を変える事だった。






夜中に山へと向かう。






辺りは静かで、冷たい。




お似合いだ。






しばらく走ると、謎の紫色をした、




出店みたいなものがあった。






違和感を覚えながら、




横目にし、派手な場所を通り過ぎた。






"あんさん、まだ、逝くには早いでっせ。"






そう、聞こえた。






私は気がついたらその店の前まで来ていた。




車を路肩に停め、歩いて来ていた。






派手な装飾の、テントのような場所。




ライトアップされていて、明らかに怪しい。






重なっている布を退かすと、奥から声がした。






「どもどうも、






いや~、、




良かったよあんさん、来てくれて、、




危うく、






勿体なく、






"する所"






だったんね」






奥から聞こえる声からは、




方言や、訛りの様なものが、




ごちゃ混ぜで発せられている。






室内は建物の様に、なっており、




扉には、『スマホ』と描いてあった。






スマホ?




なんだ?




名前か?






本当に不思議だ。






「はよ、入って入って、」






扉の先はテーブルと、向かいに、




ピエロの顔をした人が居た。






ピエロ「ささ、お掛けになって。」




私「はぁ、、」




外観では考えられない中の広さと、




対面する謎のピエロに困惑する。






ピエロ「あんさん、、辛かったとね?






まあ、まあ、まあ、まあ、




だかんととね、まーだ、早いね。






あんさんの、






"ボーナスタイム"






無駄にする所だったよ」






私「ボーナスタイム?」




ピエロ「そうさね。






人間には、波があって、




それぞれによって異なるんだけども、




大体皆あるさね。






んで、あんさんはまだ波が沈んでる時期ね。」






手振り素振りで表す表現に、




頭を傾げながらに聞く。






差し出された紅茶からはいい香りが漂い、




表面は揺れて波打っている。






私「波ってなんですか、」




ピエロ「そやね、、




まあ、波って言っても人それぞれなんやけど、






なんや、んー。




棒グラフって分かるか?






それがな、0を基に、上行ったり、




下に行ったりする事よね。






それを線でなぞったのが波っちゅー、




我々が言ってるもんですわね。」






ピエロは私の空いたカップに紅茶を注ぐ。




私「それって、皆あるんですか?」




ピエロ「そりゃ、そうや。




心臓抑えてみ?」






心臓は脈打つ様に、鼓動し、




波を打つ様に、揺れている。




私「心臓、、頑張ってんな、、」






ピエロ「そね。




あんさんが見えない所で、




皆頑張って活動してるんよ。






食べる物や、飲む物、




全てが、体の一部になって、




全ての器官が、




一生懸命にやってくれてるんよ、






それも全部波打って、、




まあ、揺れてるんよ。






常に」






私「はい、、」




何だか自分の体に申し訳なく思った。




自分の体なのに、




自分の体ではない感覚に囚われた。






ピエロ「本題に戻るけど、




あんさんの波はまだ上がってる最中ね。






若い時から成長する奴も中にはいる。






だが、そいつは下る為に上がってるんだぜ?」






私は寒気を覚えた。




表情、いや、オーラと呼ばれるものだろうか。






私「どう、やったら、




波は上がれるんですか?」




ピエロ「"時間"






かな?」




私「時間?」






ピエロ「そうよ、






人間の寿命はまあ、大体80だとして、




70ぐらいで色んな機能が衰えるとしよう、




それを半分にしたら35。






そして、あんさんが今20代後半だろ?






まだまだ35には遠いだろう。






あんさんは前半抉れてて、




後半に盛り上がるタイプなのさね。」






一瞬垣間見えた希望と共に絶望が私を襲う。




私「まだ、頑張らなくちゃいけなんですね。」




ピエロ「まだ、、って、






あんさん、、いーじゃないの、、






別にさ、評価されようが、されまいが、






あんさんのレールはあんさんしか見えないんよ。






さっきも言ったけど、他人を貶したり、




自分は成功組だと思ってる馬鹿な奴等も、






自分のレールが先が無い事には、




気付く事が出来てないんだから。






だってさ、、




前見てなきゃ道見えないじゃん?






先が見えれば、




助けを求める事だって出来るじゃん。






落ちたらさ、






"死ぬまで上がれないんだぜ?"






でも、他ばかり見つめるから




自分の状況が見えない。






何とも滑稽な。」




ピエロは腹を抱えながら笑う。






私「でも、辛いんです。」




ピエロは困った顔をした。






ピエロ「そうさね、、あんさん、




でもさ、あたいも、辛いんよね、、




、頑張ってればさ、、




あが、れるなら良くない?






貰ったもんで、もう少し頑張ってみないかい?」






そうだ、私だけじゃない、、




皆辛いんだ。






それなのに、こんなに親身になってくれて、、






何だか、頑張ってみようってそう感じられた。






私「ありがとう。




少し、頑張ってみる。」






ピエロ「その粋よ!






じゃあ、もう、朝になるから、




はよ、起き。」






はっと、目が覚めると、朝日と共に、




繋がれた紐がぶら下がっていた。






失敗したのか、、




紐をほどくと、涙がこぼれた。






裾で拭こうとすると、




紅茶のいい香りがした。






私「ありがとう」




私の背中を後押しするかの様に、




日差しが暖かく被さる。




























































ピエロ「結局、






スマホ






って何かって?






そりゃ、






スペシャル






マジック






ホリデー






やろ。






ちゃんと休むのも必要やよ?






またのお越しを。」


























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