第1話 想いのせる花
1-✾ 花がすき
きになるあのこは 花がすき
あか しろ きいろ いろんな花が
みんな みんな きれいだね
きになるあのこは 花がすき
あか しろ きいろ きれいな花が
でも でも いつしか きえちゃった
きになるあのこは 花がすき
あか しろ きいろ どれなのかしら
きれいなあのこ どこいった
私の人生、短い人生……いや、10年は生きた訳だし長いほうじゃないかな。ほんと、思い返せば色々あった。
共働きのお母さん、お父さんが家にいないときは、おばあちゃん、毎日私のところに来て、周りをせかせか歩きまわって。私、なーんも返事できないのに、昼ご飯は何したい?とか、アニメやってるけど観る?とか、手も足も動かせないし、喋れないし笑ったりもできないのに、今日は勉強の時間です……なーんて言って。たまにおばあちゃんちの花の写真を、私の目の前に広げて、この花はこういう名前なのよって……まあ目だけは動かせていたから、目の動き見てこれ好き?なんて。私はさっさと次のページめくってくれって意味で動かしてたのにさ!ほんと笑っちゃうよね。
でも、そんなおばあちゃんが大好きだったのは否定しないよ?お母さんやお父さんより、好き。まぁ声はやたら大きいし、うるさいし、お母さんとよく喧嘩しててすっごく嫌な気分になるときもあった。その上、思ってることは全然理解してくれてなかったけど、1人でいるより楽しかった。
なによりおばあちゃんが勝手にしてくれる話は超面白かった。遠いところから来たお客さんの話から、職員さんやメイドさんのお話、おばあちゃんの失敗話。あと、おじいちゃんとの恋愛話。話を聞いているだけで、私もその場で一緒に見てて、会話して、笑ったり怒ったり、歩いたり走ったりしてる気分になれた。私も動けて、話せて、笑って泣いて……もし、そんなことが出来ていたら、おじいちゃんくらいカッコいい彼氏できてたかな?まあでも、おばあちゃんくらい、あるいはおばあちゃん以上面白い話する人じゃなかったら、告白されてもオッケーしないかもね(笑)私、慎重に決めたい派だし!
真っ白な壁に真っ白な布団に真っ白な、窓からの光。すっごくまぶしい。でも、その窓から天使って来るんでしょ?テレビのびっくり映像って番組でやってたの、観たよ。死にそうな人を迎えに来てくれるってやつ。良いことしていれば来るって言ってたけれど、私も対象だよね?
……だいぶ拗ねたり愚痴ったりしてたけど。本人たちに聞こえてないからノーカンだよね?だめかな?
だんだんと、隣、機械音が聞き取りにくくなってきてるし、隣で涙ボロボロ流してるお母さんとお父さん、おばあちゃん。あとよく外に連れていってくれたおばあちゃんとこの……メイドさん。名前忘れたけど。なんか言っているみたいだけれど……よく聞こえない。もっとはっきり言ってよ。特におばあちゃん、いっつも声デカいくせにさぁ……
……でもまあ、聞こえないほうがいいかもって気はしてきた。これって確か、しんみりしちゃうってやつだよね。最後くらい楽しかったって思いながらいきたいでしょ?それに私、心残りはないよ。最後にやりたかったことは、しぃちゃんにしっかり、任せたもの。しぃちゃんは私のこと、一番分かってくれてたもんね!お別れもちゃんとしたもの。もう2度と会えないけど。ちゃんとおばあちゃんの言うこと聞いてねって、言ったから大丈夫。
もう視界もよくわからないけど、これで私、もう大丈夫。もうほんと、なんもない。次はいっぱい喋れていっぱい笑っていっぱい自由にできたらいいな。
ほんと楽しかったよ。
ありがとうね、みんな。
ほんとに、ありがとう……おばあちゃん。
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