第5話 聖女様の苦悩(聖女様視点)
「どうしてこうなったの……」
私は誰にも聞かれないように声を漏らす。
初めてレイバーとかいう少年が私たちと一緒に討伐依頼をこなしてから十日以上が経った。
普通にこの街で過ごしていく分にはまあ二、三度顔を合わせてもおかしくないほどの期間。
その間、私たちは毎日顔をあわせていた。
「おかしい。絶対にこれはおかしいわ……」
普通に街中で遭遇する分にはこれといって問題はない。
だが、違う。
私たちはそうじゃない。
毎日一緒に依頼をこなす日々を送っているのだ。
これはもはや異常とかそんなレベルではない。
元々アドットが面倒見がいいのは知っているので、仲良くなった冒険者たちと一緒に冒険することも何度かあった。
だから、今回も始めはアドットの気まぐれだろうと思っていたのだが……。
「なんで、毎日一緒になるのよ……」
アドットが言う分には朝依頼を受けに行くと必ずレイバーがいるとのこと。
アドット自身がかなりレイバーを気に入っているところもあって、姿を見つけるたびに声をかけるらしい。
レイバーは気を使って遠慮している様子だが、それも最終的にはアドットに丸め込まれている。
気を使うなら最後まで貫き通して欲しい。
私も”聖女”としての外面がある以上、人の目が多い街中でそれを無下にすることもできない。
アドットはそれを見越していつも街中で私にそのことを相談しているようだ。
本当に腹立たしい。
そして今日もまた……。
「おお、アヴァ。またせたか?」
「お、お待たせしてごめんなさい……」
アドットに引きずられるようにしてレイバーがやってくる。
その表情は出会った頃から一貫して固い。
私相手に緊張していることがヒシヒシと伝わってきた。
「……はぁ」
どうせ今日もまた面倒なことになるのだろう。
だが、これも聖女としての道を選んだ私の責任。
自分で決めたことにくらい責任は取らないといけない。
「いっそ本当に聖女になれたらな……」
周りの人には聞こえない音量で口にする。
ヒビだらけの仮面を何とか形にして、ぎこちない笑みを浮かべる。
そして、自分のむなしさから逃れるように、レイバーへと視線を向けた。
「あなた、自分で図々しいとは思わないの?」
レイバーが震えながら謝るのを見て、再び大きく息を吐いた。
今日もまた、面倒な旅になりそうだ。
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編集する仕様が分からずにもう一度投稿してしまいました。
混乱された方申し訳ありません。
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