エピローグ4 Master Of Puppets.
「猛様。本当にこれで宜しかったのでしょうか?」
セーナは不満げな様子で俺……川上猛に訊ねた。
「え? 何の事だい?」
「その……小碓武は弟君を倒したと聞きましたが、それ程の人物を弟君の仲間にするように仕向ける何て、虎に翼をつけて放したようなものじゃないですか?」
「だって、『御腕』の儀って神代の戦いを模した儀礼な訳で、余りにも一方的な勝利じゃ神々に不敬だと思わない?」
「はぁ……私には貴方がそれ程信心深い方には見えませんが」
タイ出身で仏教徒であるセーナからすれば神道の儀式など興味が無いのだろうが、そんな彼女から見ても俺が不信心に見える様だ。
「やっぱりそう見えるかい? 神様にバレなきゃいいんだけどね」
舌を出した俺の事をセーナは呆れ気味な表情でみていた。
◇
ここまでは、俺のほぼ思い通りだ。
俺が目を着けた『麗』に麗衣達が仇とする暴走族等をけしかけ、実戦の経験を積ませる。
その中から輩出した強者を腹違いの弟……ファントムと組ませて、
この計画を考えたのが、武君の手助けした時、『麗』の存在を見出した時からだ。
ファントムの事だから、『御腕』の儀に向けたメンバー選定に苦難している事は目に見えていた。
まぁ、アイツの場合タイに在住していたし妾腹というハンデもあった。
それでもファントムは阿蘇と柏と言う地域レベルではそこそこ名の知れた不良達を仲間にしていた。
当然の事ながら、彼らの過去について調べたら驚いた事に麗衣や『麗』の周佐勝子、吉備津香織とも浅からぬ因縁があった。
この偶然は『御腕』の神が賜いしものなのだろうか?
この絶好の機会を逃す術は無い。
俺は早速、ファントムに麗の存在、そして武君の事を教えてあげた。
武君の動画に関してはワザと古いもの観せたけれど、それでもファントムは武君の成長性を見抜いて興味を持ってくれた様だ。
そして、麗とファントムの戦い。
俺の予想ではファントムが麗を倒し、武君を配下におく物だと思っていたけれど、予想を覆し、異常な速さで成長をみせた武君がファントムを倒してしまった。
これは流石の俺も驚愕した。
初めて武君の喧嘩を見た時、素人相手に苦戦をしていたのが遠い過去の様に思えるけれど、実際は僅か八カ月程前だと思うと、正直その才能に羨望の念を抱かざるを得ない。
おかげで若干計画が狂ったけれど、考えてみればクリアーが約束されたユルゲーみたいな人生なんて面白くない。
俺は計画を立て直し、警視庁から得た情報を元に、麗衣の弟、
案の定、麗衣は麗の活動を再開して、再び暴走族潰しを行うようになった。
まだまだ麗には成長の余地がある。
特に幼馴染としてだけでなく、武君のファンになった俺は、武君がどこまで強くなるか見てみたくなった。
だから、武君の成長の鍵である麗の活動を止める訳には行かない。
そして麗衣……君の仇が俺と繋がりがあると知ったらどう思うだろうか?
麗衣が彼の前に立つ資格を得るか。
それは今後の彼女の成長次第だ。
「さてと……まだ『御腕』の儀まで期間はある訳だし、いきなりファントムクラスをぶつける様なクソゲーは止めて、じっくりと成長を促すことにしよっかな。イキの良いコマも沢山増えたみたいだしね」
俺はタブレットの画面に映る
毎回毎回、麗の喧嘩動画がアップロードされているのは勿論、俺が一躍買っている訳だが、いつも防犯カメラをハッキング出来る訳じゃないし、そもそも防犯カメラが設置されていない場所もある。
そんな場合は誰かが喧嘩動画を撮影できるように予めビデオカメラなり防犯カメラを設置する必要があるのだが―
「しっかし、いつも喧嘩の度に動画がアップロードされているのに仲間を疑いすらしないなんて、相変わらず麗衣もおめでたい性格をしているよなぁ~まぁ、こちらとしては仕事がやりやすくて助かるんだけれどね♪」
俺は独りごちらずにはいられなかった。
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