第111話 聞き込み
世間が連休で楽しんでいる中、麗とNEO麗は協力して3グループに別れ、街の不良達に聞き込みを行っていた。
一つは麗衣をリーダーとする、澪、静江のグループ。
もう一つが勝子をリーダーとする、香織、吾妻君のグループ。
最後の一つは恵をリーダーとする、俺と流麗、それに火受美のグループだ。
ファントムとやらは三人組、しかも神子や火受美と言った猛者を倒すほどなので、こちらも最低三人必要と判断したグループ分けだ。
本来は全員で纏まって行動した方が安全なのだが、それでは目立ってしまう事と一か所ずつしか聞き込みが出来ないのはあまりにも効率が悪いからだ。
NEO麗は一度敗れているので、麗ナンバー3の恵を加えた四人と一番人数が多く、戦力的に一番手厚い陣営になった。
俺が抜けた後、事実上麗のナンバー4の澪が喧嘩の実力では麗ナンバー2の麗衣、麗ナンバー5の吾妻君が麗最強の勝子につき従い、あとは甲乙つけがたい静江と香織をそれぞれ麗衣と勝子と共に行動する事で戦力のバランスを取った。
只、ファントムを発見しても単独グループでは挑まず、最低でも他の一つのグループと合流する事を約束ごととした。
「おっ! 小碓じゃねーか! マブばっか侍らせやがって! 可愛い顔してヤルじゃねーか!」
一昨日火受美達が近くでファントム達にやられたという、駅北口前のゲーセンで聞き込みを行っていると、一人のヤンキーが話しかけてきた。
「えっと、
津頬先輩は
それ以来、恨みを抱くどころか麗衣の隠れファンになったという変わり者で、そんなところが澪に似ている。
いや、実は
麗衣の美しさと姉御的な度胸に惹かれているのかも知れないけれど、この人達の方が年上なんだよな。
「因みに私達、武君と遊びに来ている訳じゃないんですよ?」
恵がにっこりしながら答えると、津頬先輩は「うげぇ」と嫌なものを見る様な表情をした。
どうやら今更恵が含まれている事に気づき、「マブばっか」と言った事に後悔しているようだ。
「んだよ、『天網』のクソ
以前、『天網』に所属していた恵達に
麗と同様に闘争が行われた相手とは言え、
「お生憎様。私と麗衣さんは固い絆で結ばれているから、麗が続く限り私達が離れる事はありませんよーだ!」
元々恵もNEO麗同様、麗衣以外の不良に対して良い感情を持っていないので、友好関係にある
険悪な雰囲気になる二人の間に立って、俺は宥める様に言った。
「まぁまぁ……恵の言う通り、今日は遊びに来たわけじゃないんですよ」
「ゲーセンで遊び以外の目的っていやぁ、喧嘩か?」
発想がまるで昭和のゲーセンの様だが、必ずしも間違っていない。
「ええ。ある連中を探していてファントムって呼ばれてるんですけど……伊吹と柏と阿蘇って連中、知りませんか?」
「ん? 柏と阿蘇なら何年か前はここいらじゃ有名だったな……何でも、女にやられたとかで神奈川かどっかに逃げたって噂だけど、アイツ等が如何かしたか?」
何処まで話して良いのか、躊躇して流麗と火受美に視線を向けると、火受美が軽く頷き、流麗が口を割った。
「アイツ等、あーし達、NEO麗に喧嘩売ってきて仲間を怪我させられたんだ。だから
麗衣似の美少女が
「ああ、思い出した。お嬢ちゃん確かNEO麗の子だったよな。美夜受の親戚ちゃんとか言う……」
「火明流麗っス。そんな事より、お兄さん、何か情報ねーっすか?」
「……麗と言いNEO麗といい折角の上玉揃いだから御礼参りなんて物騒な事は止めた方が良いと思うけれどなぁ……小碓。止められねーのか?」
「いや、それがファントムって連中は麗も狙っているらしいんで、黙っていたら寧ろやられそうだし、麗とNEO麗で協力した方が良いんですよね」
「お前等滅茶苦茶つえーけど人数少ないモンな……
「それが出来たら亮磨先輩か澪に頼んでますね。亮磨先輩にはこの前助けて貰っておいて、堅気になった亮磨先輩にこれ以上頼る訳に行きませんし」
「いや、不良狩りの件については恥ずかしい事だが、こっちにも身内にスパイが居てお前等を疑う様に仕向けられていたしな、貸し借り無しだろ?」
「へぇー度量が大きいんだね。少しは見直したよ」
本音なのかも知れないが、恵は余計な口を挟んだ。
「何言ってるんだ? 亮磨さんは度量がデカい人だぜ? それよりか兵隊は出せねーけど、その柏と阿蘇の情報、仲間に頼んで調べさせてやろうか?」
「ええ。ありがとうございます。宜しくお願いします!」
渡りに船の協力を得て、俺達はゲーセンを出ると、俺のスマホの着信音が鳴り響いた。
「武っチ、Kids Return鳴ってるよ?」
伝説のキックボクサー・小林聡の入場曲を鳴らしているスマホの画面を見ると、麗衣の名前が表示されていた。
まさか、もうファントム達と接触したという事だろうか?
俺達のチームに比べて戦力が手薄な麗衣達がファントムと喧嘩になったらマズいかも知れない。
俺は急いでスマホの受話マークをスライドさせ、耳元にスマホを当てた。
「武! 大変だ! すぐに立国川病院に来てくれ!」
急にそんな事を言われても理由が分からないが、病院に来いと言う命令からして悪い事が起きているのは確実だった。
「麗衣。落ち着け! その前に何があったのか説明してくれ」
「勝子が……香織が……!」
スマホ越しに聞いた麗衣の言葉は信じられないものだった。
話の途中であるにもかかわらず、俺はスマホを落としてしまった。
「武っチ! 如何したの!」
俺の異変に気付いたのか、スマホを拾ってくれた流麗が俺を見上げながら愁いに満ちた表情を浮かべているけれど、すぐに説明すべき言葉が出てこなかった。
俺は恐怖や怒りよりも大きな喪失感を覚えていた。
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