第100話 廃墟に響き渡る銃声
「クソがっ! 舐めてんのか!」
廃墟である立国川ホテルの駐車場。
「マジで麗のクソビッチが
身毛津が仲間と思しき男の襟首を掴むと、恐怖に震えながら男は頷いた。
「ほっ……本当っス! 正確に言えば
「馬鹿野郎! アイツ等ツルんでいるから同じ様なモンじゃねーか!」
身毛津はそう言うと、男を首の後ろを抱きかかえるようにしながら、後腰に乗せ、車輪が回転するように投げつけ、地面に叩きつけた。
「あ……が……」
腰車で投げられた男は受け身も取れずにコンクリートの地面に叩きつけられ、白目を剥いていた。
身毛津の八つ当たりともいえる暴挙に対し、脅えきったメンバー達は非難しようともしない。
一度は
以前よりも力を誇示する事で再びトップに立った身毛津だが、その矢先に宿敵である
「これじゃあ、まるで
「ど……如何しましょうか?」
「決まってんだろ! 今度こそ
「しかし……
「じゃあ、人探しの掲示板に赤銅のガラを攫った奴に一人頭十万出すから攫わせりゃあいい」
以前の
「そうですね! ついでに麗の連中もヤッちまいましょうよ! マブが多いって話じゃないスカ!」
従来のメンバーは殆どが粛清された為、新しいメンバーには撮影されたと言う弱みが無い為、身毛津に反対する者は居なかった。
「あたりめーだ! 天網の女も今じゃ麗に加わっているって言うし、アイツにも借りを返してもらわなきゃ気が済まないぜ……ひゃははははっ!」
身毛津が下卑た妄想をして、笑い声を上げると、客など来るハズの無い駐車場から三人の男達が身毛津達の元へ歩み寄って来た。
「楽しそうな相談してるなぁ? 詳しい話利かせろや?」
犬の様に舌をだらりと垂らしながら、小柄な少年―
「ああ? 誰だテメーは?」
「ファントム……って聞きゃ分るか? まぁテメーみたいな田舎モンは知らねーか」
「んなダセーあだ名知らねーなぁ。それよりかテメーラ何の様だ?」
「ちょいとばかし、人を拉致るのに便利そうな場所探していてよぉ……ここ、テメーラのシマか?」
人を拉致するなど物騒極まりない事をさらりと口にする伊吹に対して不審に思いながらも、同類である身毛津はその事は流して答えた。
「そうだ。ここは俺達、
「そうかい。じゃあ、お前等邪魔だなぁ~」
「ああ? 今何て言った?」
身毛津の殺気が増したが、20センチ近くは小さい伊吹は全く恐れる様子も見せず、逆に舌を振り子の様に振りながら挑発した。
「舐めてんのか! ぶち殺すぞコラあっ!」
最初から機嫌が悪い身毛津は伊吹の襟首を掴んだが、伊吹の手に持つ黒光りする武器を見て動きを止めた。
「殺すって? 誰が誰を殺すんだ?」
「……ハッ! どうせ偽物だろ! そんな玩具で俺がビビるかとおも……」
身毛津が話し終わる前に発砲音が鳴り響いた。
「ぐわああああっ!」
肩を撃ち抜かれ、身毛津は大量の血を出しながら地面を転げまわっていた。
「うるせーぞ、イテェのは分かってるんだよ」
撃たれた肩を踏みつけ、伊吹は警察から奪ったと言うM360J SAKURAの銃口を身毛津に突き付けると、身毛津は大粒の涙を流しながら震え出した。
「そんな事は如何でも良いからよぉ、さっきの話の続きを聞かせろや?」
「さっ……さっきの話……って?
苦しそうに答えた身毛津に対し、傷口を蹴り飛ばし、踏みにじりながら伊吹は言った。
「そんな小者どーでも良いんだよ。それよりか麗の連中をヤッちまうとか言ってたなぁ? お前等? アイツ等の事詳しいのか?」
最悪最凶の敵が麗に忍び寄っている事。
そして、この先、伊吹が引き起こす、ある悲劇を武達はまだ知る由も無かった。
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