第30話 ボクシング部員自己紹介……え? 俺も強制入部?
「取り敢えず、君たちの事を知りたいからそれぞれ自己紹介してくれないかい?」
「てゆーかぁ~自己紹介するならパイセンからやるのが筋ってもんだしぃ~」
どうもこの子は先輩を先輩と思わない節がある。
まだ勝子を谷間に挟んで頭を撫でながら流麗は失礼な態度を取っていた。
「コラっ! 先輩にそんな口を聞くんじゃない!」
俺が見かねて注意したが、先輩は怒るどころか流麗に同意した。
「いや、確かにギャル子さんの言う通りだ! 私はボクシング部所属。三年D組の
デカイとは思っていたけどまさかライト級とは想像以上だ。
これなら仮想男子相手のスパーリングも出来るかも知れない。
「えっとぉ、あーしはギャル子じゃなくて火明流麗っス。多分階級はライトフライ級(女子46-48キロ)かフライ級(女子48-51キロ)になるのかな? 試合は出た事無いっスけど、ジムじゃあ何時も男子ボコってました。てなわけで、パイセンの皆様方よろぴく♪」
あれだけ強くて試合に出た事が無いのが意外だった。
階級がライトフライかフライ級って事は大体麗衣と同じぐらいの体重か。
総合で相手の顔を挟んで締め技代わりに使えそうなダイナマイトオッパイはヘビー級なんだけどな。
「僕は吾妻香月です。階級は多分ライトフライ級(男子49キロ以下)でボクシングは経験あります。こう見えて一応男子ですけど、武先輩とお付き合いできるように精一杯頑張ります!」
吾妻君が丁寧に頭を下げると拍手が沸き起こった。
「良いぞ! 応援しているね!」
「てゆーか、女の子は女の子、男の娘は男の子を愛しあうのがトレンドって感じ?」
「最近麗衣ちゃんに青竹代わりに踏まれないからってついに男に走ったのね……良いわよ。貴方達なら歓迎するわ」
俺は頭が痛くなってきた。
と言うか、まだ入部届に名前すら書いていないのに何故この輪の中に俺が居るんだろう?
「次は武の番よ」
「いや……俺はまだ入るとは……」
パキポキ
「おっ……小碓武です! 2年A組です! 格闘技歴は半年です! Cクラスですが、キックボクシングのアマチュアトーナメントで優勝した経験があります。階級はバンタム級(51-54キロ*)ですが、次に試合に出るとしたらフライ級(51キロ以下*)に下げる予定です!」
自然と直立不動した俺は早口で自己紹介を行った。
勝子が軽く拳を鳴らしただけで身が竦み上がるのは勝子の「躾」の賜物だった……。
「ぷぷぷっ……あの堤見先輩を病院送りにしたと言うのが君かね」
音夢先輩は肩を震わせながら俺に聞いてきた。
「いや、病院送りにはしてないですが……」
「いやぁ~しかし、経験半年の子に倒されるなんて堤見先輩……修二も大したことないねぇ~。しゅうじぃ~しゅうじぃ~しゅうじぃ~ざまぁ~みろぉおおっ~ねぇねぇ? 負けるってどんなキモチぃ~~~?」
まるでその場に堤見選手が居て、目の前で敗北を喜ぶかの様な姿に俺達はドン引きしていた。
「えっと……私は2-Aの周佐勝子です。中一の時全日本アンダージュニア45キロ級で優勝しました。ブランクがありますが宜しくお願い致します」
勝子の自己紹介で音夢先輩は気味の悪い呟きをピタリと止めた。
「えっ? 君がまさか天才と呼ばれていた周佐勝子さんかい!」
「ええっとぉ、天才か如何か知りませんが、その周佐勝子です」
「うっそお! まさか
音夢先輩は勝子の両手を握りしめると手をブンブンと振り回した。
「その顔! 思い出したよ! 昔テレビで君の試合を観たけれど、あの悪魔のような威力のオーバーハンドライト! 対戦相手が殺されるかと思ったよ!」
「そっ……そうですか」
勝子は引きつった笑顔を浮かべていた。
褒め言葉と分かっていても面白くない事は想像がつく。
悪気はないんだろうけど結構無神経な先輩なのかも知れない。
「さてと、
いや、俺まだ入部するとすら言ってないんですけど……。
今更そんな事を言えない雰囲気になっていた。
◇
*アマチュアキックボクシングは団体により階級の体重が異なります。ご了承ください。
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