第16話 特攻の理由
「ところでさぁ、さっき麗衣がバイクの後ろに乗せていた子なんだけれど、あの子って知り合いなの?」
「ああ。アイツは
麗衣に似ていたのは親戚だったからなのか……。まぁよくあるオチだ。
「あの子、何処かで見た事があると思ったら、流麗ちゃんって
「勝子、あの子を知っているのか?」
勝子に訊ねると、二つおさげを軽く弾ませながらコクリと頭を下げて肯定した。
「うん。と言っても二年位前に一度会ったきりだけど、麗衣ちゃんによく似ていて凄く可愛い子だなって思っていたけど」
「で、麗衣さんとその流麗さんが如何して体育館に特攻をかけたのかな?」
恵が興味深そうに麗衣に聞いた。
「特攻した訳じゃねーよ! 流麗が入学早々遅れそうだからバイク乗せろって言われたんだよ!」
その時の事を思い出して苛立っているのか? 麗衣は興奮した様子で話を続けた。
「だから、わざわざアイツの家に迎えに行って、ニケツしてやったのに『運転が乱暴過ぎるから自分と代われ!』とか我儘ぬかしやがって……仕方ねーから運転をアイツに任せたら、あのクソビッチ、バイク転がし出してから免許持ってねーとかほざきやがって」
俺も無免許の麗衣のバイクにニケツさせられて死ぬような思いを経験したから、それに関しては麗衣も威張れたもんじゃないぞ?
「で、アイツがブレーキも分からねーまま強制チキンレース状態で学校に着いちまって、体育館に突っ込んじまって、その後も暴走続けてバンディットもお釈迦になっちまったんだよ……」
幾ら無免許だからって、ブレーキも分らんってさっき麗衣が叫んでいたように自転車にも乗った事が無いってことだろうけど、そんなので何でバイクなんか乗りたがるんだ……。
「……というか、二人とも怪我して無いの?」
恵は心配そうに麗衣の体中を見回しながら訊ねた。
制服は至る所が汚れ、擦り傷は膝や足についていたが、見たところ骨折や打撲の様な重傷を負っている様には見えない。
「ああ。死ぬかと思ったけど、壁にぶつかる寸前に流麗をバックドロップして後ろに放り投げて、あたしも投げる勢いを利用して地面に落ちたら何とか助かったぜ。校庭がコンクリだったらマジ死んでたわ」
「お前はベテランのスタントマンかよ!」
俺を自殺から救った時は一緒に屋上から飛び降りたりしたが、キックボクサー以上にスタントマンの方が向いているんじゃないのか?
「そこに美鈴ちゃんが駆けつけて来やがってな……あたしが足止めしている間に流麗は逃がしたってわけさ……美鈴ちゃんに立ち向かったは良いけど全然敵わなくてよぉ、三回ぐらい投げられて意識朦朧にさせられた挙句、立ち関節技喰らって御用になったってわけさ」
「いや、立ち向かったら全然良くないだろ!」
事故った直後に格闘技使う教師と殴り合うヤンキー何て男子でも聞いた事が無い。
聞いているこちらの方が全身痛くなるような話だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます