第17話 またもや校庭にバイクが襲来しました
特攻の経緯に呆れたが、とにかく麗衣と流麗の関係は解った。
ならば俺が流麗に不良達への襲撃を止める様に説得するより、麗衣に説得させた方が良いかもしれない。
「ところであの流麗って子が不良狩りみたいなことしているって知っている?」
「何だそりゃ? 昔そんなテーマの漫画あったらしいけど、流麗がそんな真似しているのか?」
麗衣は流麗が何をしているのか知らないのだろうか?
それとも知っていて嘘を吐いているのか?
「で、それだけじゃなくて、流麗さんが麗を名乗っているみたいだ」
「オイオイ……マジかよ!」
麗衣が驚きの声を上げると、横から勝子が反論した。
「私が知っている流麗ちゃんは多少ヤンチャっぽくても喧嘩はしないイメージだったよ? それに何でアンタがそんなこと知っているのよ?」
体育館に特攻をかけた時点で多少のヤンチャどころではないと思うが。
流麗が麗衣に似ているという事もあるからなのか、勝子は流麗の事を贔屓目に見ているのだろう。
「亮磨先輩に聞いたんだよ。マズイ事に
「それは面倒くさい事になりそうね……」
比較的良識的な恵は顎に軽く握った手を当てて、考え込む様な仕草を見せた。
「いやいや、流石にそれは無いだろう。流麗がやったって言う証拠でもあるのか?」
「それは……」
俺も似非麗の不良狩りに巻き込まれて流麗に殴られた被害者である事を話すべきだろうか?
そんな事を考えていると、近づいてきた幾つもの爆音が校庭に鳴り響いた。
校庭の中をバイクで走り回られるのは今日2回目だし、以前も
「おっ! まっ昼間から珍走かよ! 丁度暇つぶしに良さそうじゃねーか!」
事故った後、美鈴先生にボコボコにされ、体育館の跡片付けと説教を喰らった後なのに麗衣の瞳は活き活きとしていた。
本当にタフな奴だ。
「麗衣ちゃん。少なくても校庭で喧嘩は駄目だよ? 今度は退学させられちゃうよ?」
確かに生徒や教師達の面前で暴走族と喧嘩なんかしたら今度こそ美鈴先生も庇い切れないだろう。
「んなこたぁ解ってるよ。要は
麗衣にとって暴走族潰しも遊び程度の物に過ぎないという事か。
待ちきれないと言わんばかりにスタスタと歩いて行った。
◇
校庭のど真ん中には10台以上の単車が集まっており、その中心に居た人物が俺達の事に気付くと、単車から降りた。
「テメー等が
口元に罰字の派手な傷痕があり、茶髪をリーゼントにした男が麗衣の顔を見るなり、因縁をつけてきた。
「あ? テメー等なんざ知らねーよ……てゆうか誰だ?」
「ああっ! 俺は泣く子も黙る、
コイツ等暴走族じゃないのか?
それに首師高校の総番だって?
以前、俺と同じジムに通っていた
「首師高校だぁ? ああ、あの偏差値25で卒業率50パーセント以下の底辺高校の事か。てか、テメーラのトップの足振とかいう雑魚なら大分前にウチの武がシメたんだけど、テメーが番長気取りか?」
「ハッ! 情報が古いぜ! 足振は俺にシメられて今の首師高校はこの俺、朝来名様がトップだぜ!」
ふうん。
スパーリングでは一方的に俺に叩きのめされ、喧嘩でも30秒ぐらいで俺に倒された足振程度の実力では番長の座を維持するのも難しいだろう。
首師高校の下剋上の話を聞いても特に感慨が湧かず、寧ろそんなものだろうと納得してしまった。
「足振なんざどうでも良いんだよ! それよりか、4日前、テメーらがやった連中は俺の舎弟だ! だから御礼参りに来てやったんだよ!」
「折角来ていただいたところ歓迎したいのはヤマヤマだけどよぉ、それはあたしらの仕業じゃないぜ?」
「とぼけんじゃねーよ! ボクサーとキックボクサーと拳法使いの女三人、それに舎弟の先輩がキックボクサーっぽい男のチビにやられたって言っていたぞ! どう見てもテメーラの仕業だろうが!」
あっ……最初の3人は誤解だけど、最後はもしかして俺の事?
ややこしいことになったな……。
「知らねーな。テメーラがアンパンでも吸っていて幻覚でも見たんじゃねーか?」
当然身に覚えのない麗衣だが、流麗を麗衣と思い込んでいる朝来名とは話が噛み合わなかった。
流麗の事は黙っておくべきだろうか?
判断に迷っていると麗衣から切り出して来た。
「テメー等の言いがかりだけどな、納得いかねーって言うならこの近くに六森って場所があるだろ? あそこなら滅多に邪魔が入らねーから、そこで待っとけ」
「良いぜ。後悔するなよ? テメーラ行くぞ!」
そろそろ通報される事を警戒しているのか?
朝来名はバイクに跨ると仲間を率い、盛大な爆音と鼻が曲がりそうなガソリン臭を残し、校庭から去って行った。
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