第9話 ヤンキー女子高生の下僕は後輩からも絶賛弄られ中です

「トホホ……やっぱり総合ルールじゃ手も足も出ないね」


「まぁまぁ。キックと総合じゃ競技の相性的に仕方ないっスヨ」


「……そりゃそうだけどさ……それよりか、何時もドサクサに紛れてセクハラするの止めてくれないか?」


 落ち込んでいるとショートの赤髪で身長が170センチ近い男女、赤銅澪が慰めついでに俺のケツに指を這わせてきやがった。


「ええーっ! 小碓クンが負けたら可愛いお尻触らせてくれるって言うからわざわざ十戸武先輩なんか応援していたって言うのに!」


「それはお前が勝手に言っていただけだろ!」


 どうせ澪の事だから俺が勝っても負けても痴漢行為に及んだに違いない。


 こんな変態な澪だが、硬式空手という防具付き空手とボクシング経験者であり、麗の後輩メンバーでは最強を誇っている。


 また、身長も男子並みの為、女子会では貴重な仮想男子のスパーリング相手として結構重宝されているのだ。


 とは言え、俺の体をサワサワしたり青竹代わりに踏んだりして好きにしていい権利があるのは麗衣だけだぞ?


「澪ちゃんばっかりずるーい! 少しで良いのであたしも触って良いですか?」


 茶髪にパーマをかけた快活そうなギャル・吉備津香織きびつかおりは俺にそんなアホな質問をしてきた。


「駄目に決まっているだろ。如何して君達男の尻なんか触りたがる訳? 理解できないよ」


「勿論先輩が可愛いからに決まっているじゃないですかぁ~♪」


 男が可愛いと言われても嬉しくない事を解ってくれないのは、やはり吾妻君の近くに居て常人と感覚が異なるからなのだろうか……。


「じゃあ、こういうのは如何ですか? お互いに興味があるところ触り合うって事で?」


 あ……それなら良いかも。


「ウオッホン!」


 日に焼けた健康的な褐色の肌。


 シュシュで束ねられた金髪のポニーテール。


 目鼻立ちは美しく、凛々しくも濡れた妖艶な口元、俺よりも高い身長と比して長い手足はスラリと伸び、褐色な肌と筋肉質な脚はどこか野性的に感じる少女は我らが麗のリーダーで、俺のご主人様である美夜受麗衣だ。


 以前、苛められていた俺は自殺しようとしたところ麗衣に救われ、無理矢理キスされ「キンタマついてるなら責任取れや!」との事で下僕にされてしまった。


 経緯は強引であったが、俺なんかを助ける為に身体を張ってくれた麗衣に惚れ、それ以来、彼女がやっている暴走族潰しに協力する為、日々格闘技の修練をしているのだ。


 麗衣はわざとらしく一つ咳払いすると二人に注意した。


「この中でエロい行為は禁止だと言っているだろ?」


「「ハーイ! ゴメンナサイ!」」


 香織と澪は素直に謝ったが、特に澪はその場凌ぎで言っているに過ぎない。


「ところで麗衣先輩……高校生になるから、もうも良いんですよね?」


「あっ……ああ。そう言う約束だからな。でも本人の同意を得られたらだぞ……」


「勿論、解っていますよ♪」


 麗衣と香織は何か二人で秘密の約束でもしているのだろうか?


 麗衣は何処と無く気乗りしない様子だったが、香織の方は凄く嬉しそうな表情をしている。


「まぁ、焦るんじゃねーぞ。アイツの意思もあるからな……」


「ハイ♪ でも、大体趣向は解ったつもりですから心配は無用ですよ♪」


「そっ……そうか、随分アグレッシブなんだな」


「一日でも早く記憶を上書きしたいのを待ってましたからね」


「そうかい……お前がそう言うんじゃ、あたしから口出しする権利はないな」


「チームに迷惑をかけるつもりはありませんから」


 何の話をしているのか気になったが、そんな俺に二つおさげのチンチクリン、周佐勝子が近寄って来た。


「アンタ、十戸武だけには負けるなって言っているのに何あっさりと負けているのよ」


 小動物を思わせるこのチビッ子は見た目で判断をしてはいけない。


 何せ格闘技経験者が揃う麗の中でも最強であり、魔王サタンズ・鉄槌ハンマーの異名を持ち、その名を聞いただけで暴走族どもを震え上がらせる恐怖の存在なのだ。


「無茶言うなよ。総合ルールで恵に本気で来られたら歯が立たないよ」


「情けないわね……総合相手だって事さえ分かっていれば対処法何て幾らでもあるでしょ……ところで、貴方、気になっていたんだけれど、その拳サポ、自分で買った奴なの?」


 勝子は拳サポーターについて訊ねてきた。

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