第2話 プロ野球から捨てられたキックボクサー
「見つけたぜ
ツイストアップバングの茶髪。胸に銀色の髑髏をモチーフとしたおどろおどろしいアクセサリーを首に掛けた身長180センチ半ばはあろう、長身で細身の男が二人の男を引き連れていた。
暴走族潰しのチーム『
紆余曲折を経て俺も麗の正式なメンバーとなり、彼女と一緒に今まで数々の暴走族を潰してきた。
だから、チーム麗は暴走族から恨みを買っているが、狙われるとしたら俺のはずだが、顔が似ているせいか? この男は流麗を麗衣と勘違いしているようだ。
それにしてもこの男、何かで見た事がある様な気がするが……。
「てゆ~かぁ……まだ
自分が他人と勘違いされていると理解していないのか?
流麗は犬を追い払うかの様にしっしと手を払った。
「はっ! 交機なんざ怖くて不良やってられっかよ! テメーが逃げたいからって言い訳すんなよ!」
「全く……交機のおかげで助かったのがアンタ等だって事が分からないのかしらね……」
流麗の目がスッと鋭くなると、気のせいか雰囲気まで麗衣に似てきた。
だが、どうやら事情も分かっていない彼女を巻き込む訳には行かない。
俺は流麗を守る為に彼女の前に立った。
「なに? 少年! もしかして、あーしを守るつもり?」
流麗は驚いた様に声を上げた。
「流麗さん……だっけ? コイツ等が用があるのは多分俺だよ。だから君を巻き込む訳には行かない。君は逃げてくれ」
「ぎゃはははっ! おチビちゃん! もしかしてナイトにでもなったつもりか?」
ツイストアップバングと男達は俺を指さして笑い出した。
「あはははっ! 君……もしかして、あーしのオッパイ触りたかったから格好つけてない?」
男達だけならとにかく、流麗まで俺の事を笑い出した。
……何このカッコ悪い状況。
「良いから。ここは俺が何とかするから、君は逃げてくれ」
「やーだ! 不良達に屈服する何て絶対嫌だもん♪」
危険な状況を理解できていないのだろうか?
逃げる様に説得するも、彼女はいう事を聞こうとしない。
仕方が無い。ここでヤルしかないか。
俺は胸の内ポケットにある簡易バンテージと呼ばれるインナーグローブを両手に嵌めた。
流麗と男達の興味深そうな視線が俺に集まる。
「オイ? 知ってるぜ! それオープンフィンガーグローブってヤツだろ! もしかしてヤル気かよ?」
「バカ。似てるけどちげーよ。あれはボクシンググローブの中に嵌めるインナーグローブだ。俺も練習で使うけどな」
ツイストアップバングの男は俺が何を嵌めているのか知っていた。
「へぇ……もしかして、アンタも使うのかい?」
使うとはつまり格闘技を使うのかツイストアップバングの男に聞いてみた。
「ああ。今月プロデビューが決まっているぜ。俺は
俺はその名前に聞き覚えがあった。
成程、道理で見覚えがあるはずだ。
「へぇ……ドラフトでプロ野球入りが決まったけれど、不祥事でふいにしたって言う例の元野球選手がアンタか」
相田真。
ドラフト4位で埼玉東部ジャガーズに指名され、ほぼ入団が決まっていたが、契約直前に無免許運転が発覚し、折角のプロ入りの話が流れてしまったという。
その悪名は『暴走のナルビッショ』という不名誉なあだ名を付けられるに留まらず、無免許運転以外にも喫煙や喧嘩などで度々問題を起こしており、それらの素行が週刊誌などに広く取沙汰され、ジャガースも球団入りを見送らざるを得なかったらしい。
その後、SNSの投稿でも悪びれる事無く、世話になった恩人やファン達に足で砂を掛けるような発言で炎上後、その悪役っぷりが商売に繋がると思ったのか? ROSEというキックボクシングの団体の目に留まり、アマチュアの試合に一回も出場する事無く、僅か数カ月の経験でプロデビュー戦を迎える事になった。
「ハハハッ! どうせおチビちゃんはアマチュアでチマチマやっているんだろ? 俺は才能があるからお前ら凡人と違ってアマ経験なんか必要ねーんだよ」
まぁ、この男が本当にあの相田だったら言いたい事があったから、丁度良い相手だ。
「良いぜ。アマチュアの俺がアンタに胸を貸してやるよ」
俺は簡易バンテージの握り具合を確かめると、相田に向かって構えた。
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