第17話 神殿と書いてお化け屋敷と読む。

 街中で道草を食いつつも、体感では二時間くらいで目的地に到着だ。


「・・・えっと、ここが神殿なんだけど・・・ソフィアちゃん本当にここに来たかったの?」


「・・・。う、ん。ここがしんでんなら、ここであってる、はず」


 着いたのは、まるでお化け屋敷みたいなおどろおどろしい廃屋。


 白い石で造られていたのだろうと思われる建物は、なんというか・・・変色している。

 緑っぽいってことは、これは苔なのかも。


 全面が蔦っぽい植物に覆われていて、長期間人が手入れをしていなかったことが分かる。


「ナーさん、ここはかみさまっていうよりおばけがいそうだねー」


「ちょっと!自分そういうのホントにダメなんでやめてくださいよー!この場でそれは、シャレにならない・・・」


 青褪めた顔のナーさんは、よく見ると若干涙目だ。

 まさか、ナーさんが怖がりだったなんて・・・意外だ。


 そう言うの全く信じてなさそうに見えるのになー。

 本当、人は見かけによらない。


「うーん。しかたないなぁ。・・・ナーさん、わたしちょっといってくるから、ここでまってて!」


 私はナーさんを外に置いて行く事にした。


 リーチェ様と会うなら、多分一人の方が良い。

 それに、ナーさんが可哀想だしね。


「え?いやいや、帰ろうよソフィアちゃん。肝試しじゃないんだからさー」


「じゃあ、いってきまーす!」


「え、ちょっと?!」


「おじゃまします!」


 何故か開きっぱなしになっていたドアの隙間をくぐる。


 埃だとか苔だとかで汚れていてお世辞にも綺麗だとは思えないステンドグラス。それが沢山使われているから中は意外と明るかった。


 でも、汚いものは汚い。


 足元に積もった埃は歩く度に舞い上がり、きらきらと光を反射する。

 うっかり吸い込んでしまうと、咳が止まらない。


 頭上を覆い尽くすのは夥しい数の蜘蛛の巣。

 埃がくっついていて、とっても汚い。


 ありがとう二歳児の身長!

 おかげで蜘蛛の巣は素通りできるよ!

 ナーさん連れてこなくて正解だったかもなー。


 そんなことを考えながら、ただひたすら突き進む。

 真っ直ぐ歩いていると、やがて行き止まりになった。


 目の前にあるのは巨大な扉。

 入口のとは違って、この扉は閉じられていた。


 蔦の下に見える石造りの扉には、細かな彫刻がびっしりと施されているように見える。


「うわぁ。いったいいくらかけたのかな?これ」


 あくまで予想だけど、この扉一枚で家が買えるんじゃないかな?

 もはや芸術品だよ。


 私は扉の彫刻をもっと見ようと手を伸ばした。

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