第16話 保護者代理のナーさん

「ソフィアちゃん、行き先は本当に神殿なの?」


「うん、そうだよ?・・・ねぇ~はやくいこーよナーさーん・・・」


 ナーさん――ナハトさんは、昨日お世話になった例の門番さん。


 どうしてナーさんなのかというと・・・言えなかったから。

 どうしても発音が上手くできなくて、ナハトのハが言えずに困っていたら、ナハトさんが「それなら、ナーで良いよ」って言ってくれた。

 だから、門番のナーさん。


 リアムが仕事で来れなかったから、今日はナーさんが連れて行ってくれるのだとか。


 自分が行けない代わりに代理の保護者を用意するなんて・・・。


「・・・リアムってかほご?」


「いや、二歳児を一人で出歩かせないってのは常識でしょ?!」


 ボソッと言ったはずの呟きに、即座にツッコミのような台詞が飛んでくる。


「あ。・・・しつねんしてた」


「何?」


「なんでもなーい!」


 そう。失念していた。


 私の年齢は二歳。


 ――という設定になっている。


 体の実年齢は私にも分からないから、ナハトさんがパッと見で「うん、二歳!」って決めちゃったのを採用した。


 ・・・言えない。


 中身は職業経験のある成人女性だなんて・・・口が裂けても言えない。


 そんなことばれたら、はずかしねる。


「うがぁ~~~」


「早く歩かないと置いて行くよー」


 自分の黒歴史(現在随時更新中)に悶絶していると、ナーさんの姿が遥か先まで移動していた。


 いけない。置いて行かれる。


 保護者のくせに二歳児(暫定)を置き去りにするなんてなぁー。

 リアムに言いつけよう!


 はっはっはー!

 幼女だから、卑怯とか言われても分かんないもんねっ!


 えぇい、ままよ!


 てってってっとナーさんに走り寄って、両手を差し出す。

 いわゆる抱っこポーズだ。


 このやるせない気持ちは神殿で聞いて貰うとして、黒歴史な事実たち号泣&添い寝事件は一旦忘れよう!

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