第10話 君の名は?って今更すぎる!!(前編)

「ソフィアー!走るのは良いが、こけるなよー!」


 私は副団長さんを置き去りにして、王都の大通りを駆け回る。

 さっきまで副団長さんに抱きかかえら捕獲されていた反動もあって、自分の足で走り回るのがとっても楽しい。


「わぁ?!・・・このおにく、おいしそう・・・じゅるり」


「はぁ・・・聞いていないな」


 辺りもすっかり暗くなってきた頃、私達は屋台の前にいた。

 店舗を構えている店は閉まっている所も多くて、空いている所はまばら。

 でもその代わりに、夏祭りの出店を思い出すような屋台が立ち並んでいた。


 ハンバーグ。フランクフルト。ステーキ。ホットドッグ。


 どうやらこの世界(国かもしれない)にあるのは洋食?のようだ。


「ふーくだーんちょーさーん!ここのーおにくー!たべたいでーす!」


「ソフィア、叫ばなくても聞こえるから」


 と、副団長さんはやや呆れ顔。

 でも私は怯まない!だってお腹すいたし、美味しいは正義だから!

 それに、初の異世界料理にテンションが上がっていたりする。


「それと、気になっていたんだが・・・」


 初めて見る、副団長さんの深刻そうな顔。・・・何だろう?

 眉間に寄ったしわ。

 奇麗な顔なのにもったいないって言おうとしたけど、これはこれで様になっていた。

 様になるって言っても、威圧感倍増だけど。


 あれ?私、何かやらかした?


 必死に自分の言動を振り返るけど、心当たりがありすぎて逆に見つからない。


「どうか、しましたか?」


 自分でもわかるくらいに、顔が引き攣っている。


 そんな私を眺めながら、副団長さんは苦々しい顔をした。


「・・・どうして私を副団長と呼ぶんだ?」


 ぼそっと呟かれた疑問。


 ・・・はい?

 今何と仰いました?

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