本編

第5話 異世界到着!って嘘でしょぉ?!

 リーチェ様と別れた後、一瞬の浮遊感と共に私の感覚が戻ってきた。


 ゆっくりと目を開き、瞬きを繰り返すこと数回。


「・・・?」


 目の前にあったのは途轍とてつもなく大きな――城(らしきもの)だった。


(え?なにこれ。・・・城なの?リーチェ様なんでこんな所に送り込んだの?!もっと平和な田舎にしてほしかったぁ!)


 過ぎてしまったことは仕方が無い。と改めて周囲を見回した。


 まず目の前にあるのは大きなお城。

 某夢の国で見た何とか城よりもはるかに大きい。

 すべてのパーツが2.5倍くらいありそうだ。


 城門の前には二人の騎士?がいる。

 どちらも男の人。

 馴染み深い黒系の髪色にどこかほっとした。


 横にあるのは見たことのない木だ。

 なんか、でか過ぎる。

 ただ高いのではなく、幹の太さも葉の大きさも異常だ。


 自分の手より大きいのでは?と葉っぱを拾おうと手を伸ばし、彼女はフリーズした。


「・・・は?」


 自分の口から飛び出た声にビクッとして、全身をペタペタと触りだした。


(うわぁ・・・肌がすべすべ。ほっぺたもぷにぷにだー。あ・・・胸が・・・元から無かったけどね?)


「ってちがーう!は?え、にゃに?どういうこと??ようじょ幼女とか、きいてないんですけどぉ?!」


 あり得ない。と、城門前で独り慌てふためく幼女(不審者)は、いつの間にか目の前に来ていた門番のお兄さんに捕獲された。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「で?お嬢さん、パパとママはどこにいるの?」


「・・・わかりません」


「あー、迷子か。今更だけど、君の名前は?」


「・・・おぼえて、ません」


 何故か、私の記憶は欠けていた。


 向かいの席に座っているのは先程の門番さん。


 彼らがいるのは騎士団の詰め所の一角だ。


 通常不審者は問答無用で地下牢に放り込まれることを考えれば、彼女は十分すぎるほどに幼女化した体の恩恵を受けていた。


 もっとも、本人はそれに気付いていないのだが。


「お、可愛い嬢ちゃんじゃねぇか。どうした?迷子か?」


 歯を見せてニカッと笑って見せる彼は随分と雄々しい人だった 。筋骨隆々でたくましい感じだ。


「多分ですよ。自分の名前すら分からないようで。・・・あっバルドさん、そういえば副団長が探してましたよ。今回は何やらかしたんですか?」


「それがな?花街d・・・いや、子供の前でする話じゃなかったな」


「・・・はぁ。またですか?バルドさんも懲りませんねぇ」


 色々とツッコミどころのある会話だったが、どうやら私は記憶喪失扱いとなるらしい。

 それは良いとして、バルドさんとやら・・・ふ~んそーゆー人なんだぁ。


 しょっちゅう花街に赴くらしいバルドさんは、トラブルメーカーらしい。

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