第49話 カプディアの真実・襲撃の終焉


「見つけたぞ、カプディア。」


白斗と悪栄教42司教カプディアは街のビルの屋上にいた。


「いや、こう読んだ方がいいか?世界防衛軍元第5番長カプディア・ソルタナート。過去最速で隊長に上り詰め、悪栄教司教5体の討伐を行なった者。」


「…今日はどうなさいましたか?」


「まだ知らん振りを続けるか。それとも俺から言ったほうがいいか?」


「はて、何のことやら。」


「お前が死んだカプディアの肉体に宿り、契約し、司教となった、第42悪魔アロケルだということはわかっている。」


「ほう、そうですか…。ですが、私はカプディア・ソルタナートだぞ?」


「嘘をつけ。もう情報は得ている。」



   ・・・・・


俺は先程、サイアスさんに話を聞いた。



「サイアスさん、戦闘前にすいません。」


「ああ、いまは大丈夫だが、どうかしたか?」


「カプディア・ソルタナートという人物を知っていますか?」


「勿論知っている。彼は俺の同僚だったからな。」


「そうだったんですか…。」


「彼は俺たちの代でも本当に優秀だった。今でも敵わないくらいだ。」


「そこまでですか…。」


「10年前、彼は第5番隊長だった。10年前に悪栄教司教5人、王クラス2体、公爵クラス2体、侯爵1体による防衛軍襲撃事件があったんだ。隊長が3人、他にも副隊長、隊員が沢山亡くなった最悪の事件だった。その時生き残った3人、現隊長でもある九重隊長、七聖隊長が王クラスを神崎隊長は公爵クラスを討伐した。他にも副隊長や亡くなった隊長2人によりもう1人の公爵も討伐された。カプディアと俺、そして現六番隊副隊長のデルタ・ビルディアの3人で残りの侯爵の討伐に当たったんだ。その司教は第42司教、【死眼】を持つ能力者だった。カプディアはその闘いの際に俺たち2人を庇って死んだんだ。…その司教は討伐したが、本当に悲しい事件だった。」


「カプディアさんは…もう死んでいたんですか?」


「ああ、そうだが?」


「サイアスさん…その時の司教に違和感はありませんでしたか?」


「そう言われると…他の侯爵に比べて遥かに強かった。それは王に匹敵する程、ヤツが死んでいたかのようだった。そして人とは思えないような威圧と力だった。」


「もし…第42司教の身体が死体であったら…。」


「?何かありそうだな…話してくれないか?」



「…成程。容姿は一致している。話し方なども変わらないようだ。だが眼の色は違う、彼は青色の眼、赤色ではない。それにオーラも魔属性ではなく、神属性だった。」


「オーラの質は変えれるにせよ、眼を永遠的に変えるのは不可能。もしかして誰かに主権が移っている?」


「悪魔の可能性が高いと言うことか…。」


「どうすれば助けれるだろうかな?」


「助ける?」


「僕はそんな善人の身体と名前にこれ以上不名誉を塗られたくない。助けたい。俺が惚れた娘の父を守ってくれたその人を助けたい。」


「いいだろう。本当は俺がしたいところだが、任せることにする。」


「ありがとう。」


「だが決して無茶はするな、相手は現隊長、世界TOP 3に並ぶ、いや伸び代を見れば超える可能性もあった男。その才能を悪魔に使われている上、地位も侯爵だ。」


「大丈夫、俺は【精護神】。だが護るのは何も精霊だけじゃない。誰かを助けることは誰かを見放すこと。でもそれでも報われる人がいるなら、助かる人がいるなら、俺はその人も護るよ。」


「絶対に死なないでくれ。ユーアを悲しませるなよ。」


「当たり前です。心に決めた人なので。」


   ・・・・・



「そうだろ?優秀な能力者の身体を乗っ取り、司教にする。それがお前のやり方だろ?だがら今カプディアの身体に悪魔アロケルの魂が入っている、違うか?」


「どうでしょうね?もう既に私が司教になって10年、カプディアの記憶と思考、そしてアロケルの意思が混ざり合いもうどちら、と決め付けるのは不可能です。私の半身は大悪魔、これによって他の司教より数倍も能力の熟練度も上がる。それにカプディアの素の能力も世界トップクラス、そこまで貴方が突き止めた。なら、殺してしまいましょう。」


「そうか、返り討ちにしてやる。」


「今日は楽しませてくださいね?まずはアロケルの力で【魔司能力・触手】」


カプディアの身体から触手が伸び、白斗に襲い掛かる。


「【重力魔法・重力点操作】あれに当たったら相当不味いか。」


白斗は触手から逃げるためにビルの側面に張り付いた。


「【絶零剣】…行くぞ。」


白斗は襲い掛かる触手を斬りながら屋上へと駆け登る。


「かなりすばしっこいな。」


白斗はそのままの勢いでカプディアに斬りかかったが触手に止められた。


(さっきまでとは違うのか?もしかしてコイツに近ければ近いほど硬くなるのか!?)


「【魔司能力・精神隔離】」


白斗は無限に広がる空間へ飛ばされた。


「能力の世界…させるか!!」


白斗は空間を斬って脱出したが、現実世界では自身の身体に触手が攻撃を行なっていた。


「グハッ!!」


「まだ小手調程度でこれですか?本来の力を使うまでもない。」


(【精神隔離】中は身体は現実世界で放置され、攻撃を受けてしまうってことか…。)


「陰湿な能力だな。」


「そうですか、ですがそろそろ飽きてきましたし、眼でとどめを刺してもいいですかね?」


「できれば、だがな!【命】!!」


白斗は触手を粉々にし、カプディアに襲い掛かった。


「塞がれるか。」


「私の触手は永遠に、無限に生える。一時的に消し去っても無意味ですよ。」


(くそ…勝てないか…。)


「もう終わらせましょう、時間が勿体ない。もっと楽しめると思っていたのですがね。」


「期待に沿えなくて残念だったな!」


「【魔司能力・死眼】」


カプディアの眼が白斗を貫く。


(昨日は一瞬だったが、まるでこの生気を刈り取られるような感覚、確かに並大抵の実力者でも即死する。だが今の俺には…。)


「【加護支配・湧き上がる生の力】」


「私の眼をなんとか塞いだ。だが眼を回避できてもお前は私の実力の足元にも及ばない。」


カプディアの触手が白斗を吹き飛ばした。




(終わり…なのか…。皆に任せられて…神様に力を貰って…それでも…俺は俺だった…。)


『貴方のこと、私達は信じています。』


(自分の力に自信を持ちすぎた…上には上がいる…わかっていたのに…。)


『私達の希望となり、この世界を救ってください。』


(俺に…できるのか?)


『貴方なら絶対に成し遂げられる。どんなことがあろうとも。』


(ああ、いくしかないな、ここまで期待されてるんだ。無下にはできない。)


『さぁ、新たな力を授けましょう。神となり、民を救うのです!』




「あっけなかったな……な!?」


カプディアの前には羽が生え、神々しい光を纏った白斗がいた。


「お前…死んでいなかったのか!?」


「【エクリルディオータル】」


(なんなんだ…あの白く、透明で、神々しく、だがそれでも圧倒的な力を持つ剣は…。)


「【世界支配・掌握】」


(不味い…触手を…。)


白斗は触手ごとカプディアを切り裂いた。


「【悪魔契約解放】!!おもしろい!!カプディア本来の力でいかせてもらおうじゃないか!!前司教を圧倒的力で蹴散らしたこの力を!!」


その力はアロケルの数十倍程の力であった。


「能力発動【完全理解】!!さぁ、第二ラウンドだ!!」


2人の力がぶつかり合う。


「【自然支配・荒ぶる自然の感情】」


あらゆる自然災害がカプディアを襲う。


「残念だったな。私の【完全理解】はその力の軌道、威力、属性、弱点などの全ての情報を理解する。それだけではただの解析に過ぎないが、私の身体能力によりそれが活きる。そして絶対無敵の感知能力となる。」


その言葉通り、カプディアは全ての攻撃を避ける。


(凄い。あの身体能力、反射能力はあの人のそのままの腕前ってこと。これが隊長クラス。)


「ぐはっ!!」


白斗はカプディアの攻撃を受けた。


「私の【完全理解】は私自身にも使えます。自身の弱点を理解し、自分に合った最高のトレーニングを行う。こうして私は最強に上り詰めた。そして戦闘中も最高のパフォーマンスをする、持久戦にも対応できます。」


(クソ、桁違いじゃあないか。だが、俺の力はまだ…。)


「まだ立ち上がりますか、無駄だというのに。」


「無駄かどうかなんて…」



    お前の狭い価値観で決めるな!!



「俺の【世界支配】はこの世界を支配する、それだけの能力。だが、エイトでも1%程度、最高でも62%しか使えなかった能力。俺はその力を力を隠した状態で既に50%使える。そして神格を開放している時は現時点で130%使える。つまり、この世界の全てに加えて、あらゆる法則、未知なる力を支配、また、相手の世界を強制的に自分の世界に落とすこともできる。」


「それがどうした?」


「簡単。既にこの空間は俺のテリトリー。ここの法則を決める神となる。【法則の支配者】」


「そんなことは…がぁぁぁぁーーーー!!!!??」


白斗の魔法がカプディアに当たったのだった。


「なぜ…なぜ…俺の【完全理解】は相手の様子から能力の発動、心眼を使って全方位の理解が可能。なのに…なのに…。」


「お前の【完全理解】が俺に効かないようにする【プライバシーの法則加護】、魔法が眼で見えないようにする【無色の法則加護】。」


「そんな…ことが…。」


「お前はたしかに強い。だが甘え過ぎた。もうお前はその能力なしでは闘えない。」


「舐めるな!!」


だが、カプディアがどれだけ攻撃しても白斗に当たることはなかった。


「なぜ…。」


「お前は努力をしたかもしれない。だが俺は既にお前を超えている。この世は努力なんて綺麗事では成り立っていない。どれだけ神や悪魔に好かれるか、ただそれだけだ。能力を使えないお前との勝負なら俺の勝利。」


「そんなことが…あってたまるか!!」


「もうお前は俺に触れられない。」


「が……が……。」


「カプディアさんの身体を成仏させる。【火炎魔法・溶無熱】」


「ダァァァァーーーーー!!!!!!!!??」


「そして後は…残った悪魔を消すだけ。」


「待て…来るな…来るな…。」


「魂だけのお前を消せば全てが消える、そうだろ?」


「やめ、ろ…。」


「さよなら。【命】」


「グワァァァァァァァーーーー!!!!!!!!!」




「俺は、カプディアさんを、救えたのかな?」


『救えたさ。』


その声の主は半透明となっていたカプディアであった。


『少年は私を悪魔という呪いから解放してくれた、命の恩人だ。』


「よか…った…。」


『涙を出すな。お前はきっとこの世界一の神になる。たとえ民に嫌われてもいい。お前はこの世界の人々を救ってくれ。それがお前へのメッセージだ。』



「カプディア!!」



サイアスさんがビルを登って、屋上へと来ていた。


「白斗君、間に合わなくてすまなかった。無事、討伐できたみたいだな。」


「はい、サイアスさんのお陰で。」


『お前も凄い刺客を送ってきたものだ。最後なんて圧勝だったんだぞ。』


「それは見てみたかったな!!」


『デルタは元気か?』


「ああ、元気さ。今は第六部隊副隊長だからな。」


『お前は出世したか?』


「俺は第四軍隊長、大出世だ。」


サイアスの目から涙が垂れた。


『お前さん、泣いてるのか?』


「そりゃそうだろ、もう絶対に会えないと思ってた仲間ともう一度会えたんだからな。」


『それもそうか。だがこれからはお前達を見守る。だから安心してくれ。]


「お前に見られてると安心はできないな!!」


『はは、そうだな。』


そして、遂にカプディアの身体が消え始めた。


『少年、絶対に負けるな、屈するな。サイアス、デルタにも伝えておいてくれ、「頑張れよ」と。』


「ああ。」


『ふたりとも、ありがとうな。お陰で俺は安泰だ。』



     ー地獄から見守ってるからな。



そして、カプディアは成仏した。


「わかっていたことだが、友との別れとは本当に悲しいものだな…。」


「そうですね、そして二度とこんなことを起こしてはいけない。」


「ああ、護ろう。彼が託した俺たちの手で。」






こうして、悪栄教司教による襲撃事件は幕を閉じた。


死者も沢山出て、街はほぼ壊滅状態となったが、エイトが【サイバー・コア】を、他の4人で街を治した。


もう、こんなことは起きてはならない。


そう決心し、俺たちは街を後にしたのだった。






                  第二章前幕・完

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「見つけた、第73悪魔ビリケル。」


「お前は…エスカ・パルフェイト。」


エスカ…白斗を助けた赤髪の男と悪魔ビリケルが話していた。


「助けに来たか、本当はいらないが、魂だけの今、悪魔門まで連れて行ってくれない…。」


「【完璧破壊】」


「…か。何故…。」


エスカによって、ビリケルの身体が突き抜かれていた。


「お前は…悪魔側の人間じゃ…。」


「すまないな。悪魔上層部の判断に逆らう者は皆排除する、そう決まっているのでな。」


「そんな…。」


「魂だけの悪魔などもってのほか、それなら悪魔を殺して別の悪魔を持ってきた方が早い。それは悪魔紋が出た状態で殺された司教の悪魔も同じだ。」


そしてエスカは緑色の玉に力を込める。


「お前はそのどちらにも当てはまる。やって真っ先に討伐依頼が出ているんだ、すまないな。」


「あ…。」


「【完壁消滅】」


そして、ビリケルは消滅した。


「エスカ・パルフェイト、勿論偽名だがな。」


     悪魔栄光復興教団第2司教

   エスカ・パルフェイト(偽名)王




この事件はまだ、この物語の序章に過ぎなかったのだった。

             

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