第37話 魔霊洞窟


「は!?」


サイアスは目の前に積まれた宝石を見てすっとんきょうな声を出した。


「【天神の落物】297個、献上いたしました。」


実の娘であるユーアがにっこりした顔で話した。


「は!?」


「正攻法で2個、生産魔法で10個、天神様に285個、合計で297個で御座います。」


「この際、正攻法は分かった、生産魔法も妥協しよう、だが、【天神様に285個】とはどういう意味だ?」


「精霊神のシアが神界の天神様にお願いしにいったようで…。」


「天神様は私のお義母様なので、お願いを呑んでもらったのです。」


「は〜……。だが、まだ試練は2つある!第二の試練を受けて貰う!」


「お父様、もうやけになってるような。」


ユーアが小声で話した。


「それで第二の試練だが、未突破・SS級ダンジョン【魔霊洞窟】を突破することだ!」


「魔霊洞窟?」


「確か最近出来たダンジョンかつ、SS級ダンジョンの中でも最高位に値するダンジョンですね。」


「知っていたか、不正をしないようにニアを連れていってもらうぞ。いいな?ニア?」


「はい,勿論です。」


「それでは行ってきてくれ。健闘を祈る。」


そうして俺達はティアナード家を後にした。


「魔霊洞窟は明日の朝から行きますか?」


「勿論!」


「そうですね、流石に疲れていますからね、それに魔霊洞窟は夜、活性化しますしね。」


「何を言ってるんだ?今から行くんだぞ?」


「え?活性化するんですよ?」


白斗、シア、ユーアは「?」という顔でニアを見つめてくる。

唯一、エイトは「仕方ない」という感じの苦笑いをしている。


「成程、あなた達といると調子が狂う、ということは理解しました。それでは行きましょうか。」


「ではlet's goだ!」


そうして5人は【魔霊洞窟】に向かった。


ー魔霊洞窟前ー


「おい!此処はお前らのような餓鬼どもが来るところじゃねぇぞ?あぁ?」


「そうですか、ですが大丈夫です。」


イカツイ冒険者に話しかけられたが、それを白斗が断った。


「あぁ?俺らがわざわざ忠告してやってんのになんだ?その態度は?」


「は!お前ら程度に入る資格はねぇよ!」


その横にいた冒険者達も次々と喋る。


「このカードを見てもそれが言える?」


ユーアが出したのは冒険者カードだった。


「SS!?こんなガキが!?」


「しらねぇのかよ、コイツらSS級魔物やS級冒険者,悪栄教を討伐して、最速でSS級に上がったという冒険者だぞ。」


「コイツらに喧嘩ふっかけたら殺れるぜ。」


「だがそんな奴らでも熟練度が低い!ここに入る資格は…」


「…資格、ですか。主、これでよかったんでしたっけ?」


エイトが出したのは一枚の紙だった。


「これ……ティアナード家当主、防衛軍第四番隊長のサイアス様の許可状か!?」


「なんだと!?しかも金印、サイアス様直々の許可状じゃねぇか!?」


「それにあの白髪の娘、ティアナード家護衛長、ニア・ナイティカルじゃねぇか!?」


「そんなことが……あるのか!?」


「これで大丈夫ですか?」


「はい……どうぞお入り下さい。」


「それでは…」


5人が入っていく中、ニアが目の色を変えた。


「お前ら、我が主やその師匠、及び従属の方々を侮辱した刑、万死に値する。次は無いと思え。」


「?ニア〜!行くぞ〜!」


「わかりました!白斗様!」


ニアが白斗達の所に向かっていった。


「……何が起こったんだ?」


5人の影が洞窟の中に消えていったのだった。


ー魔霊洞窟ー


「未突破と言ってもそんなに大したことないね。」


「そうね、島のダンジョンに比べて簡単ね。目を瞑ってもいけるわ。」


「城(うちの家)に比べたら簡単すぎますね。」


「3人とも、いくら易しめだからといって油断大敵ですよ。」


その4人の会話を聞いてニアは呆然としていた。


「このクラスのダンジョンで『大したことない』なの?島のダンジョンとかうちの家って?」


「島のダンジョンは主の家の近くに作ったダンジョンですよ。」


「第一層から[アースタートル]が出てきた時は本当に焦ったわね。」


「暴走した時も大変だったな!」


「[アースタートル]の暴走…SSS級!?」


「そうですね。そしてうちの家っていうのは…」


「私の家、精霊神城のことだよ!」


「精霊神城!?未だ一度も入れたことがないっていう!?」


「私、精霊神だからね〜。」


「師匠は転生者なんだよね。」


「それだとしても……異次元すぎる。」


「ニアもこの洞窟を出るときには同じようになってるよ!」


ちなみにこの会話はシアがスキルで強大な魔物を近づけずに、ユーアと白斗が遠距離を魔法で処理、エイトが近距離を聖剣で処理している中での会話である。

そしてニアはその事実にも気づいていない。


「あ!白斗様!ボス発見です!」


「ランクは?」


「オーラの感じからSS+級ってところでしょうか?」


「戦闘もしておきたいから通して闘おうか。」


「ニアさんの実力も知りたいですしね。」


(何言ってるのよ!?SS+級なんて私でも即撤退レベル!それと戦うの!?)


「私はニアの戦い方を知ってるけど、相当強いよ。」


「ユニークスキル【属性魔力操作】…どれ程の物か見せて貰いますよ。ニアさん。」


「何故私のスキルを知ってるのかは置いとくわ、貴方達がいれば失敗しても安心だから、行かせてもらうわよ。」


ニアの手に茶色のクナイと赤色のクナイが現れた。


「【属性魔力操作・自然武具】」


「このクナイ、地属性と火属性か?」


「ニアのスキルではオーラを固めて能力を操れるんです。その中でもニアは自然系をクナイに固めて戦うの。それだけはずっと前から変わらない。」


「行きますよ、見ておいて下さい。【地轟・アースクラフト】【炎轟・炎煉黒臨開】」


一撃目の茶色のクナイは敵の前で砕け、敵を岩で動かなくした。

二撃目の赤色のクナイはニアから離れた瞬間から炎をあげ、敵を文字通り火車にした。


「手応えあり、次で仕留めます。【雷轟・雷神覇天】【水轟・激水覇奏】」


ニアが出したのは黄色のクナイと青色のクナイ。

黄色のクナイは雷を纏い、青色のクナイは水を大量に出した。


そして2つは反応し、爆発が起こった。


「生命反応消滅……討伐完了です。」


「これは凄い…予想以上だ。」


「自然系を自由に支配する、面白いですね。」


「魔力とスキルだけであそこまでの自然、かなりの実力ですね…。」


ニアはその青い髪を爆風に孕ませていた。



               To be continued

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次回予告

   第38話「サイアス・ティアナード」


ティアナード家当主・防衛軍隊長であるサイアス・ティアナードから最後の試練が課される。

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