第34話 新天地


ギルドから家に帰ってきた後の夜のこと。

ユーアは庭にいた。


「ユーア、どうしたんだ?」


白斗がユーアに話しかけた。


「少し……不安で……」


「ピグリスのことか?」


「……はい。師匠,私の昔の話を聞いてくれますか?」


「俺はいいが,ユーアは大丈夫なのか?」


「はい,ここで話しておかないといけない気がして。」


「じゃあ、お願いする。」


「そうですね。私の実家の話をしましょうか。」



 私の実家はティアナード家と言います。


 そのティアナード家はピグリスにある家で、ピグリスの中心を担っている家でもあります。


 私の父、ティアナード家当主はサイアス・ティアナード、世界防衛軍四番隊長を務めています。

 母は幼い頃、亡くなりました。病弱ながら私たち姉妹を産んだらしく、その後亡くなったんです。


 その父と母が産んだのは4人の女の子。

 因みに私は次女です。


 ティアナード家は【四季自然】というスキルを使う一族。

 それも隊長の娘、ということで期待されていました。


 私の姉、長女は【四季自然・夏式】、三女は【四季自然・春式】、四女は【四季自然・秋式】、それぞれがユニークスキルを開花させました。


 けれど私は駄目だった。春、夏、秋は勿論、一番相性が良かった冬式すら、開花しなかったんです。


 私は一族の恥と言われました。


 姉や妹、父は私を守ってくれた。


 だけど、それすらも私を傷つけた。


 私が家出したのはそれが理由です。

 私にユニークスキル【思想現実】があったから。

 だからこそ、自信を持って戦えた。


 まぁ、今となってはそれでも一番にはなれずしまいだったんですが。


 …話が逸れましたね。

 私がピグリスに帰りたくない理由。


 それは家族に会いたくなかったから。


 私を心配してくれたのに、私は裏切った。


 どんな顔をしてあえばいいのかわからなかったから。



「ごめんなさい。でいいんじゃないのか?」


「え?」


「普通の家庭なら心配してくれるさ。逆に生死がわからないままにしておく方が返って不安になる。もし,それで「出て行け」なんて言うものなら…」



 「俺が守ってやるさ。」


「師匠…」


「俺はお前の師匠だ。まだまだ未熟なところだらけだがな。だがユーアを守りたいという気持ちは変わらん。」


ユーアの目から涙が溢れた。


「ありがとうございます。師匠。」


「ほら、泣くな。ユーアは笑ってた方が可愛い。」


「照れますよ。師匠。」


「ははは,落ち込むな、前を向け。その方がお前は輝ける。」


その時,白斗はユーアの頭に髪飾りをかけた。


それは紐状のもので所々に青く小さな宝石が入っている。


「これは?」


「プレゼントさ。魔除けや幸運の効果があるんだが、どうかな?」


「うん,凄くいい。…これ手作りでしょ?」


「…はは、ユーアには隠し事が出来ないな。」


(私は今まで独りだった。だけど師匠は…白斗はそんな私を救ってくれた、手を差し伸べてくれた。こんな気持ち、初めて。ここまで『好き』って感じた事はない。)


「師匠、これからも一緒にいさせてもらってもいいですか?」


「勿論さ。こちらからもよろしく頼むぞ、ユーア。」



次の朝のこと。


「それでは、出発する!」


「「「はい!」」」


「目的地は《経済都市・ピグリス》!目的は【荷物の輸送】!移動方法は毎度お馴染みのこの【空島】だ!」


「ここまで,意気込んでおいて空島移動なんですね。」


「透明、高速、物理無効、家付、快適すぎるわね。」


「それでも油断禁物ですよ!何が起こるのかわからないのが依頼ですから!」


「では出発だ!」


だが旅はそんなエイトや白斗の予想を外れ,何もなく到着したのであった。


《経済都市・ピグリス》


この都市は港町であり,【物流の中心地】と呼ばれる程の経済都市である。


「綺麗だね〜!」


「俺はこっちの世界で初めて実物の海を見たな。」


「そうなの?」


「だだっ広い湖はいっぱい見たがな。」


「主は魔法を失敗して島に湖を作ったんですよ〜。」


「え!みに行きたいです!」


「今度ピクニックに行きましょう♪」


「お前ら、楽しんでるな……。」


どうやらユーアとシアはノリノリだが,白斗は怪訝そうだ。


「場所は何処でしたか?」


「確か…【ピグリス市役所】だった筈です。」


「う〜ん、市役所は皆が集まるところだからね。」


「家族と会うのはまだ怖いか?」


「少し気まずいかもね。」


「それじゃあ、会わないことを願って行きましょうか!」


「うん!早く終わらせて帰ろう!」


「そうね!行きましょう!」


そうして4人は市役所に向かったのだった。



               To be continued

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回予告

     第35話「運命の出会い」


ギルドマスターからの依頼を達成した白斗達が町を歩いていると、ある人物と会う。

その人物はユーアが家族と会うよりも気まずいらしく……。


次回新キャラクター登場!

お楽しみに!

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