第39話 決戦準備


 社長宅の応接間に、自見、大河原取締役、佐藤女史、図師、栗木、本橋順子、が。

 最初、図師は

 「自見さん、私が行ってもいいのでしょうか」

 「社長にご了解を頂いています。貴方は経理に明るい、是非力を貸して下さい」


 社長が

 「皆さん、顧問から皆さんのことを色々お聞きしています。栗木さん、本橋さん、ご足労掛けました。佐藤さん、有難う御座います。図師さん、良くきてくれました」、と労いの言葉を掛けた。


 自見が、

 「社長、先ず佐藤弁護士からM&Aの状況について、ご報告申し上げます」

 佐藤女史は、

 大同警備株価低迷に乗じ、株買い占めの動きがバルザックにあったが、大同警備大株主の古川氏が、各株主にバルザックの野心について回覧を回し、その動きを封じ込めた。従って、各銀行、証券M&A担当者は、大同警備とバルザックの合併は単なる噂だったと。

 次に、遠藤専務秘書大場咲提供のフラッシュメモリーの内容、警備計画書、警備実施要領、配置人員、それに基づく警備料金の見積書ファイル、が、遠藤専務のパソコンからバルザック管理部への送信記録とともに、応接間の壁にプロジェクターで映し出された。

 そして、栗木と本橋順子が夫婦に扮して、K市郊外温泉郷、ホテル瑞鶴での、遠藤専務とバルザック内野副社長が親密に話している様子、そして茶封筒の、“仮名称、中央道高井戸総合ターミナル物流センター受注に関わる戦略とその見込み、見積もり予定価額”、がクローズアップされた。

 おおっと、一同声を出した。そして一瞬静まり返った。誰の目にも、怒りが宿っていた。


 自見が、

 「図師さん、この情報がバルザックに渡ることに依る当社の損失はどれ程になるでしょう」

 「はい、先ず中央道高井戸総合ターミナル物流センターは警備料金で10億は下りません。警備料金は兎も角、その宣伝効果の損失は計り知れません。今後の大同警備成長にそれはボディブローのように効いてきます」と、具体的にグラフで示した。


 自見は

 「社長、時機を見て臨時幹部会を開き、遠藤専務の背信行為を追及するとともに、K市の総合ターミナル物流センター大場管理センター所長のお力を拝借したいと考えます」

 「そうですね、K市総合ターミナル物流センター警備隊の評判は業界でも高く評価されています。今度の中央道高井戸総合ターミナル物流センター受注で、当社に利はあるでしょうが、大場さんの協力があれば鬼に金棒です」

 「顧問、早速大場さんに連絡お願いします。大河原取締役もお願いします」

 「社長、実は大場さんに、此処に来て頂いています」

 「顧問」、と社長は呆れたように自見を見た。

 

 大場管理センター所長を加え、

 「社長、中央道高井戸総合ターミナル物流センターの情報が漏れたことは、返って好都合となりました」と、大河原取締役が

 自見も

 「そうです、バルザックは、遠藤専務の行動を我々が探っているとは、夢にも思っていないでしょう」

 「大場所長さん、受注に関し、警備先が尤も注目する事項はなんでしょうか」、と、社長。

 「社長の前で僭越ですが、警備を依頼する我々にとって、それは警備の質です。平たく言えば警備員さんの高い目的意識です。常に安全、安心に最大の注意を払って頂ける警備の方が居てこそ、私達も業務に専念出来ます」

 そして、現K市総合ターミナル物流センター警備隊の質の高さは、他警備会社の比ではない。これは中央道高井戸総合ターミナル物流センターを受注するに有利となるでしょう。

 警備料金も重要ですが、官公庁の入札ではないので、警備料金は一つの目安に過ぎません

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