第23話 社長、自見、大河原、佐藤女史


 「佐藤さん、お久しぶりです。この度はご協力有難う御座います」 

 「社長さん、こちらこそ、あの時の社長さんのお姿は目に焼き付いています」

 自見の提案で、現状況を一旦整理するため、佐藤女史にも協力を仰ごう、と。

先ず、大河原の情報と佐藤女史の情報は一致している。裏で糸を引いているのは、次期社長の噂が高い、バルザック創業者の孫、内野通泰副社長に間違いないだろう。問題は何を企んでいるかだ。


 「佐藤さんはどう思われます」と社長が

 「そうですね、バルザックは吸収合併を目論んでいることは確かです。しかし、それはそう簡単には行きませんわ」

 「対等合併の態をとるのでしょうか」と大河原が、

 「否、それはないでしょう、それではバルザックに旨味がありません」と言う自見に、佐藤女史が更に

「M&Aを有利に導くために、大同警備の時価株の低下を待っていると考えられます」


 多分、遠藤専務の役割は、大同警備の経営改革を阻害し、もって社内内紛を株主に流し、昨今の大同警備の業績不振は現社長の無能にある、とアピールする道化役だろう。


 遠藤専務とバルザック内野通泰副社長の密会の現場を押さえることが肝要だが、だが見つけたからと云って、それをもって遠藤専務の会社に対する背信行為だと弾劾するのは少し無理がある。

 内部資料がバルザックに流出している事実があれば別だが。


 皆一様に黙ってしまった。

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