第13話 社長宅


 自見は社長と話している、場所は社長宅だ。本社では何かと人目につく、と云って、社長が備品庫室に来るわけにはいかない。で、定期的に自見に此処に来て貰うようにした。

 自見は、先ず改革の一歩として資本金の増資が必要だといった。現在大同警備は、ベコムの資本金の約7分の1強、バルザックの半分、これを先ずバルザックの資本金まで引き上げ、その資金を業務改善に充てる。

 第一に、機械警備事務所、常駐警備隊、空港保安事務所等、末端に至るまで隈なくパソコンを配布し、本社管理部と直結する。支社の管理部門は撤廃する、その準備としてエクセルVBAを隊員に教育する。

 第二に、正社員を限定する。パート社員を増やし、その余った経費は少子化が進む今日、大手2社より厚遇を与え、それをもって優秀な人材を獲得するための原資にあてる。

 第三に、正社員は、機械警備、常駐警備、空港保安警備、現金輸送警備等、どのポジュションもこなせるように綿密な教育計画を立てる。これは点で見るのではなく、面、立体で警備全般を見る力を養うため。

 第四に、今までの警備常識を排除する。警備会社は警備業務しか出来ないという固定観念は捨て、警備会社は異業種とも常に情報交換し、時に提携して新規事業に参入するとともに、人材の交流を図る。

 第五に、未来の日本の安全保障を担うのは警備会社で、大同警備はその中心に位置する、という高い目的意識を全社員が共有する。

 

「当社の現状分析と問題点その打開策、今後の大同警備20年計画案」の骨子を先ずざっと話した。それに伴う計画書は準備してある。


 一元管理は始まったばかりだが、具体的にどのように進めていくか、皆思案している状態が続き、改善が捗っていない。


 ここで一元管理とは、

 複数の種類のデータや情報を一か所にまとめ、出し入れしやすいように管理することを指す。一般的に、ヒト・モノ・金・情報の4つが一元管理の対象となる経営資源で、多岐に散らばる経営資源を一元管理することで、情報収集の時間や意思決定にかかるコスト、資源の重複を減らすことができる。それにより、経営資源を効率的かつ集中的に目的に投資することが可能となる。

 (インターネットから引用)


 社長は成程と頷き、やはり自見さんに経営改革会議に出席して欲しいと要望した。自見は、今はその時機ではないと思います。それでは、今携わっている人たちに失礼になると同時に、返って敵愾心を持たれる恐れがあります。もう暫く様子を見た方が良いと思います。


 「社長、少し話は変わりますが」

 「何でしょう」

 「実は、まだ噂の段階なので、社長のお耳に入れるのは早いとは思っていますが」

 「構いません、自見さんが懸念しているのなら話して下さい」

 自見は、佐藤女史が小耳にした情報を社長に言った。それは何と、水面下で大同警備と他社の企業合併が画策されているというものだった。しかもその合併相手は業界2位のバルザックだと。


 これには社長も驚愕した。社内の誰かが、会社の現況をリークしている、その地位にあるものは限られる、もしかしたら。

 「顧問」と初めて、呼び名を変え

 「顧問なら、大体の推量はついているのでしょうね」

 「はい、分かります」

 「私も、大体顧問と同じですが、これについては私のほうからも当たってみます」


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