第12話 嬉しい情報、曇る顔
久しぶりに佐藤女史を見た。眼鏡からコンタクトに、黒髪が肩までゆったりと流れている、居酒屋で一緒に飲んだときその美貌に驚いたが、ますます女に磨きが掛かっている。
楽しい夕餉が済み、良子と美紀と由香はテレビを見ている。自見は2階の書斎で佐藤女史と話した。
佐藤女史は、先ず幸子の話をした。幸子は近々結婚するとのこと、お相手は何と管理センターの所長。
怒りが収まらず、単身幸子は総合ターミナル物流センター警備隊に乗り込み、ひと騒動が起きた。その事情を聴くため、近藤隊長と騒ぎの張本人の幸子は管理センター所長に呼ばれた。所長は、近藤隊長からあらましのことは聞いたが、さらに詳しく聞くため、先に近藤隊長を帰し、改めて幸子に事情を聴いた。
幸子の話を聞き、幸子が怒るのは無理からぬことだと思った。深く同情したセンター長は、今日の騒ぎは不問にします。幸子さんも落ち着いて、その自見さんとやらの調査結果を待って見てはどうですか。もし差し支えなければ、その後のこともお聞かせ下さい。
幸子はその調査結果をセンター長に話したら、とても喜んでくれた。どうやら、そこから付き合いが始まったようだと。
嬉しいことだった、何が縁となるか分からない、実に人生は不思議で面白い。幸子さんから結婚式に呼ばれたら、妻や美紀、由香を連れて祝福してあげたい。
嬉しい話から始まったが、次の話は流石に自見の顔は曇った。佐藤女史は、東京大学法学部卒業後司法試験に合格し弁護士となった。東京の法律事務所で仕事していたが、K市で弁護士事務所を開いている父からあとを継いでくれないかと言われ、郷里に戻った。
しかし、今も最初に勤めた所長から応援を頼まれる。それは佐藤女史がM&A、所謂企業合併のスペシャリストだからである。
今回もその応援で東京にきた、応援内容は精錬所の合併だが、その話が一段落し、雑談の時間となった。そしてある弁護士が、いや面白いね、警備業界も嵐が吹くか、もう一人が、ま、そうなれば俺たちの仕事も益々忙しくなるなあ。
佐藤女史が、何か楽しそうですね、私にも聞かせて。普段から佐藤女史を気にして、最初に面白いね、と言った弁護士が、まだ決まりではないけど警備会社のM&Aがある、噂されているのは、ここと此処だと。
聞いて驚いた、噂かもしれないが、これは自見さんに知らせておいた方がいいのでは。
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