第7話 特別顧問に(社内外には秘密) 

 

 社長室に自見はいた。

 「浅学非才では御座いますが、懸命に勤める所存です」

 「有難う、これで私も、そして大同会長も喜んでいることでしょう」

と、満面の笑みを浮かべた。

 「ついては、机だが秘書室を使って下さい」

 「社長、それについては今まで通り備品庫室でお願いします」

 「いや、ちょっとそれではいくら何でも」と、言う社長に自見は、私が特別顧問就任と公になれば、社内対立が激化すること、また、隠しておいた方が逆に改革が進むと思われる、何故なら、それは私の発案ではなく社長自らの強い意志だと。

 改革案の提案者が、自見であることは絶対に知られてはならない。遠藤派がそれを知ったら、社長の能力を疑い、それを口実に自分が社長にと、幹部達にアピールするだろう。

 それでなくても、臨時最高幹部会議での自見の調査報告書で恥をかかされた遠藤専務が、この特別顧問就任を知ったら何と思うかは容易く想像出来る。結果、これはあくまで社長と自見だけの秘密で、口外しないこととなった。

 泉業務課長は、社長室から出て来た自見を見て、

「今度こそ首だろう、たかが備品庫室係が何か偉そうに幹部会議で言ったらしいな、で社長の逆鱗を買って呼ばれたのだよ」と周りに話した。

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