第5話今まで聞けなかった後輩の過去

夕飯を摂り終え、花見を送り届けるように母親に言われ、彼女の自宅近くまで付き添うことに。


当然かの如く、恋人繋ぎをしてきた彼女。


「は、花見さんってさ......昔から、何ていうか......そ、のっ」


「何ですぅ?先輩は何を言おうとしてるんですかっ!訊きづらい内容なんですかぁ~」


「ああっとぉっ!僕以外の男子と深い関係っていうか、そういったことって......あるのか、なぁなんて」


「ないですよー、さすがにぃ~!何人かから告られたことはありますけど、そういった──麻視音先輩が考えてるえちえちなことをしたいだなんて思わせてくれなかったですよぅ~彼ら。本気マジにさせてくれる魅力もなかったくらいですしねぇ」

笑顔を浮かべ返してくれた彼女の顔に一瞬ではあったが、陰がさしたように見えた瞬間があった。


僕には備わっていて、告白してきた彼らには備わっていなかった魅力はどういったものなのか、未だに分からない。


「そ、そうなんだ......へ、へぇー」


「先輩から訊いてきといて、詰まらなかったみたいな返事ってどうかと思いますけどぉ~!経験してた方が良かったですか?」


「いやっ!いやいやっ、そうじゃなくて。魅力って僕になんて無いものっていうか......」


「魅力......?ええっと......先輩?ガツガツし過ぎてなくて、謙虚なとこって感じが良いってことです、先輩の魅力は。相手を尊重して、接してくれてるって感じられるのが先輩だけってことですよっ!」

首を傾げていたが、僕から感じる魅力を伝えてくれた彼女。


「それで......か。えっと、何ていうか......ありがとう、花見さん」


「あ、ああ......どう、いたしまして?」


不思議な空気が二人の間を漂うのを感じ取った。


その後、夜道を無言のまま歩み続け、彼女を花見家へと無事に送り終え、自宅へと駆け出した僕。

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