第2話後輩が自宅に押し掛けることに

放課後。

部活に所属するクラスメイト達が練習着に着替えている光景が広がっており、運動部活の道具一式が床に置かれたりして、通路が塞がれている。

教室内に残り、談笑するクラスメイトもちらほら視認でき、踏み越えようにも申し訳なさがわき上がり、中々進もうにも進めないでいた。

「せんぱ~いぃっ!麻視音せんぱぁい、一緒に帰りましょ~!先輩が通れないので、早くどかしてください!先輩方っ」

教室の扉近くで、大きく手を振りながら一緒に下校しようと大声で誘ってきた花見。

彼女が床に置かれた部活の道具を指差し、誘う声とはうって変わり、低い声で通路を通れるように指示した。

クラスメイト達は愚痴を吐くことなく、素直に指示に従う。

校内で人気なだけはある彼女。

「せんぱぁい~早く帰ろ~ってぇ!は・や・くぅ~ってばぁ!」

小走りで彼女のもとに近付くと、手を握りしめてきた彼女に促されるまま、手をひかれて歩きだした。


昇降口を抜け、校門を通り抜けて通学路に出たと同時に沈黙を破る彼女。


「麻視音先輩の自宅にお邪魔したいけど、良いかな?」

と、食事に誘うかのように軽く訊ねてきた。

「良いよ......って、だめだよ!騙されるとこだった、絶対だめだからっ!」

「良いって言ったじゃん、今。はっきりと聞こえましたよ、良いよって。嘘つきは良くないですよぅ~麻視音せぇーんぱぁ~いぃっ!」

「うぅぅっ。嘘なん、て吐いて......」

「もしかしてぇ~大量のエ──」

「なっないよ!花見さんが言うのなんか。

それを確認したくて言ったの?」

ヤバい単語を恥ずかしげもなく言おうとする彼女を遮って、否定した。

「あっやしいぃ~なぁ、その慌てっぷりはぁぁ~!」

彼女がにまにまとにやけ面を向けてきた。


彼女が期待するようなブツは自室に無い。

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