からかってくる後輩の表情が可愛くて憎めない

闇野ゆかい

第1話からかってくる後輩

6月中旬、水曜日の昼休み。

図書室の隅にあるこぢんまりとした一室のパイプ椅子に腰かけ、僕は昼食を摂り始めた。

バンッと、大袈裟に大きな音をたて、扉が開いた。

「もう~何でいつものとこに居ないんですか?私と一緒に食べるのが幸せなひとときって言ってたのにぃっ」

こちらに大股でドシドシと歩み寄ってくる女子。

「そろそろ厭きてきっ、ああっちょっとぉ!」

僕なりの抵抗として、場所を変えた理由を言おうとしたところ、彼女が残りのミニハンバーグを素手で行儀悪く摘まんで口に入れて、顔を見つめながら、可愛く笑う。

「楽しみに取っておいたのにぃぃ。はぁー」

「残念でしたぁっ。いつもみたいに話そっ麻視音せぇ~んぱいっ、いいでしょ。ねっ!」

前屈みになる彼女のブラウスの胸元からちらっと、ブラが見えた。

「もう麻視音先輩って、えっちぃですよぅ。そんな興味あるの、私の──」

「ちちいっ違うからっっ!見たくて見たわけじゃないよぅっ、ほんとだから!」

「ははっぁ。可愛い反応を見たくて言っただけですよ、分かってますから安心してください」

彼女は、可愛らしい笑い声をあげ、満面の笑みを浮かべる。

彼女のからかいは、人に危害を加え痛め付けようとする弄り、陰湿ないじめという感じではなく、友達にする可愛らしい弄り、からかいだと伝わっているからこそ許せる。

「そんなに面白い?僕の反応って」

「面白いです、見てて楽しいですよ。麻視音先輩って。隣いいですか?」

「いいよ、隣。返しに困るよ、そう言われても」

「お言葉に甘えてぇっ。今日は何について話しますぅっ?」

彼女は、近くに置かれたパイプ椅子に近付いて、隣におき、腰かけて話題を振る。

「えっと、何がいいかな?じゃあ──」

「それなら私は──」

彼女──花見真依夏は、話し出す。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る