6月2日.18:28

校舎越し。

入道雲。

青天井。


昇降口の階段の上で

立ち尽くして眺めていた。

幾度となく見てきた風景も

思い出の中なら

もっと鮮烈に映る。


無音。

逃げ水。

百日紅。

生温い風。

空駆ける鳥。

既視感。


所々霞がかった僕の記憶。

美化されて、

原型を留めなくなった記憶。


いつか見た幻想の中の君。


幽霊。

夜明け。

朝焼け。

スカートの裾。

海辺。

バス停裏。

錆びた自転車。

朝凪。

影法師。

沖の舟。

雲の高さ。

走馬灯。

群青。


追憶。過去を生きる僕が。

最後に君を想うのはここ。



最後だ。

最後なんだ。



だから。








君が僕を

忘れてくれますように。







そして僕は。









君を覚えていますように。









想うことはなくても。








君の存在を

記憶のどこかに

留めていますように。

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