夏のバス停。忘れるという一線から僕は逃げる。

「君を待つ。僕は石を蹴る。いつまでたっても君は来ない。知っている。そんなこととっくにわかってるんだよ。でも、待っていたいんだ。」


なんてさ,,,,,,。

書いてみることはしたけど、そう言っても君はきっと笑うんだ。

わかってるよ,,,,,,。

わかってるんだよ! 

わかってる筈だ。

春を待つ。夏を待つ。秋を待つ。冬を待つ。雨を待つ。晴れを待つ。風を待つ。


そのすべてと同じように当たり前に君を待つ。


ずっと待ち惚けだ。

自分でも分からない何かに待ち惚け。

ずっとずっと。そう、それこそきっと、僕の人生が終わるまでずっとだから。


そんな風に僕は夏のバス停の下後ろの海を見て君を憶う。

君との思い出が霞む。

不鮮明になったところを必死で修復する。

もとに戻らない、元々のそれに近くもない代物が出来上がる。

どこかの作品のように。

思い出は限りなくそれに近いような気が僕にはするんだ。

でもそんなの嫌だ。

忘れたくない。

だから箱から記憶が漏れるのを必死で止めている。



君の声を忘れてしまう。

君の姿を忘れてしまう。

そんなの嫌だ。嫌なんだ!

だから辿っている。

君と旅した街を歩いている。

そして、もう居ない君を待つんだ。

いつか君の元に届くまで。

いつか昔の僕に届くまで。

でも僕は届くはずないことをしっかりと知っている。

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