冬紛いの春に春の終わりを思う

帰り道に蕾が膨らんだ花を眺む。

もうすぐ春が来るのかと眺む。

まだ肌寒い冬紛いの春。

ただ、記憶の中の春は麗らかに風光る。

思い出の中の春を想っている。


でも去年の春何を思ったのかなんてことはどうでもよくて、今年の春何を思うのかもどうでもいい。

また、君を見たいとだけ思っている。


そうだ。

咲いた後を想っていた。

思い出の中の君を憶っていた。

春まで一足先に駆けていこうと思いついていた。


まだなんだ。まだ。春が来るのはまだまだ先。


だからこうして書いている。



あの麗らかな陽気と、握りしめた花弁を思い出して懐かしく思う。

言葉ごときでは語れないあの美しさを思い出している。

無言だけが表現するあの美しさを。



もうすぐだよ。

もうすぐ追いつくから少しだけ待っててよ。



君に届くまで僕は走ってるから。

君は花を咲かせて待っててよ。

3月の終わりくらいになったらまた君に会えるから。


でも、数週間でまた別れだね。

そしたらまた来年の春君に会えるまで、君に届くまで。僕は頑張るとするよ。

君がまだ僕を覚えているという1%未満の可能性を信じて。


梅がもう散り始めてて、次の桃が今咲いてて、その次、もうすぐが君か。

何だか待ち遠しいね。


桜。

君の花筏を今年こそは見られるだろうか。

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