追憶、去年の夏

一年生のコンクールは

メンバーになれなかった。

メンバー発表の時は悔しくて泣きそうになったけれど、

嘆いても仕方ない出られないなら出られないで頑張ると心に誓った。

その後もメンバーの子に言われた事などに毒づいたりしたけれど、

それを踏み台にして伸び上がるためだと言い訳をした。


一年生の時は銅賞だった。


先輩たちの涙を見て、その想いを胸に来年はせめて銀賞をとってみせる!

そう仮引退式の時に思った。

けれど、

それは無くなって、

大嫌いだった先輩達との、

当たり前に過ぎるはずだったコンクールが無くなって、

初めて私は先輩達のことが嫌いなわけじゃなかったことを知った。


なんで後になってから。


本当になんで後になってから。


わかってたなら盾つかなかったのに、

文句だって言わなかったのに、


また一緒に演奏したい。

合奏したい。

一緒にコンクールに出たい。

このまま引退しちゃうのは寂しい。

また何かで演奏したい。

どこかのステージで一緒に演奏したい。

一緒に役員だってやりたい。

感謝したい。

謝りたい。

一緒にまた、




部活をやりたい。

待ってる。

待ってるから。

お願いだから。


一緒の時間を過ごさせて。




そんな風に願った去年の夏があったことを私は今、

先輩の居ない音楽室で追憶する。

結局コンサートもなくなり、先輩方と最後に演奏出来たのはたったの2時間。

またいつか演奏したいな、だなんて思う。

またいつか、もし会えたなら私は感謝を伝えられるだろうか。


もしこの文章を先輩方が見つけてくれたなら、、、。

そんな奇跡に縋るのはやめよう。

でも見つけてくれたなら。

そう願うから私はこれを書くし、

今年の夏にあるコンクールで先輩に誇れる結果を、と頑張るんだ。


あの頃の音を懐かしみながら、さらに上へと手を伸ばすんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る