彩風移る

風に揺れてカーテンが膨らむ。


私はそれをボーっと眺めていた。


クラス内の珍しい静寂に一息ついてしまった。


でもそれもまたいいとボーっと思う。


そして私は

本の世界へと意識をとばす。

淡い光が本の影を薄く作り出す。

涼しい風が私を本の世界へと誘った。


本の中で主人公は自分の音に悩みながらも冷戦下のDDRを懸命に生きていた。

私はその姿を目に焼きつけるように必死に目で追っていた。


いつの間にか静寂の破れ目の時刻になっていた。

憂鬱な時間が始まる。




ここからの時間を描く必要はない。




でもただ一つ描くとしたら、

理科室から教室に帰ってきたとき


風は色を変えていたということ。


葉をざわめかせ、影を揺らす強くて冷たい風。


私は寒い風を遮るために窓を閉めようとする。


でも、その行為が少し惜しいような、悲しいような気がした。

そして一人思う。


「私は色を変え続ける風が好きだ」


と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る