第4話 いつものこと

 午後の授業が始まるチャイムを無視して、俺と亮磨は向き合っていた。

 亮磨は迷いながらもなにかを語ろうとしている。

 奏の幼馴染。


「奏ちゃんと僕の両親は昔馴染みでね、その影響もあって小さな頃から家族みたいな関係だったんだ」


 過去のことを亮磨は語ってくれた。

 奏の性格や亮磨に対する言動。

「僕にとって初恋が奏ちゃんだった」

 恋焦がれる目をする亮磨は虚しそうに笑った。


「君に出会ったことで奏ちゃんは恋をした」


 僕じゃなく君に。

 知らない奏の話に俺は生唾を飲んだ。

「君にでもあるけど、もう一つ」

 勢いよく風が吹く。


「死に恋をしたんだ」


 脳裏に浮かんだ。

 死んだ瞬間の奏の表情が、声が、俺の感情が。全てが沸き起こる。

 奏に出会った頃の俺は、どんな人間だったか、思い出せなかった。

「......変な話だよね」


 自嘲的な笑みのまま亮磨は小さく呟いた。

「いつもそうだ」



 翌日、俺は朝早く目を覚ました。

 悪い夢を見ていた気がしたから、俺は早くに目を覚ました。

 なんだっけ。

 夢の中では1人の少女が俺に笑顔を向けていた。

 俺は手を伸ばして叫ぶ。

「行くな......」

 どうしてそんな言葉を叫んだのかわからない。

 だけどよく見る夢だ。

 いつものことだ。


「死ぬのは怖いよ」


 奏を忘れられないのは俺も同じだ。

 死に恋するなんてバカらしい。

 亮磨はあの後、なにも言ってはくれなかった。

 ただ、帰宅後、亮磨から来たメッセージには予定が書かれていた。


『日曜日、13時半に高校の前に来てくれ』


 わけわからずに俺は「わかった」と返した。

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