第一章 君と幼馴染について
第1話 日々
高校2年の夏休み明け、俺はいつも通りに1人を満喫していた。
教室中に響き渡る文化祭への高揚感に俺は追いついていけていない。
しつこい暑さはもうすこしで終わるのにしつこいイベントが目の前で待ち構えている。
「面倒くさいなぁ」
声に出てしまった。
だが、誰にも聞こえていないようだ。
安堵と同時に俺の目の前の席に誰かが座る。
「やぁ、神崎くん」
俺の苗字を呼んでいる。
「
俯いていた顔を上げるとそこにはいかにもイケメンなミルクティー色の髪をした男子がいた。
「僕の名前は、
名前までは把握していなかったが、そんな奴もいたなとだけ思った。
「なんで俺なんかのところに?」
「仲良くなりたいと思って」
「急ですね」
「前から思ってたよ」
ファーストコンタクトは正直、調子に乗ったイケメンと会話しているとしか感じなかった。
「僕のことは亮磨って呼んで」
「じゃあ創太で」
苦手なタイプだと思った。
翌日、俺が投稿してくるとまたしても亮磨は俺の前の席を陣取っていた。
俺が来たのを見つけ、手を振って来る。
やめてほしい。
「おはよう創太」
「ああ、おはよう亮磨」
いつかもこんな風に強引に関係性を作らされたのを思い出す。
「創太は好きな人とかいないの?」
適当に相槌を打ちながら会話していた時のことだった。
亮磨の問いに俺は戸惑った。
「いねぇよ」
「へぇーいそうなのに」
「いねぇって」
友達とはこんなくだらない会話をする関係なのか。
知らなかった。いや、知っていたはすだ。
「僕は好き人いるよ」
亮磨の目が変わった。
真剣で正直な目だ。
「どんな人?」
俺は尋ねる。
「うぅーん。いい人というかなんというか、自由な人かもな」
「自由な人?」
「そう。僕にはできないことをやってのける自由な人」
自由奔放、褒め言葉とも悪口とも捉えられるこの言葉が会う人間は数多くいると思っている。
だが、それは他種あるはずだ。
「想いは伝えないのか?」
疑問をぶつける。
「伝えないよ。だって伝えられないから」
「お前って意外と弱いんだな」
「バレた?」
「ああ」
恋の話なんていつぶりにしただろうか。
叶わない恋ほどいいなんて言葉、俺には一生理解できないが、恋焦がれる人間は皆生き生きとしている。
「俺もなぁ」
ふと呟いた言葉に俺は、首を振った。
何言ってんだ俺。
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