スマホと先輩と後輩くん

ジュオミシキ

第1話

「後輩くん、スマホを出してくれないか?」

「はい」

「ありがとう、少し調べたい事があってね」

「あ、それならロック開けておいた方が良かったですね。ええと、パスワードは」

「え?」

「……あの、ひとついいですか?」

「なんだい?」

「どうしてもうロックが解除されてるんですか?」

「それはもちろん私が解除したからだよ」

「……?」

「……?、何か不思議な事でも起きたかな?」

「不思議な事というか、なんで教えてないはずの僕のスマホのパスワードを先輩が知ってるんですか?」

「いやあ、私も嬉しいよ。まさか君が私の誕生日をパスワードにしてくれていたとはね。なんとなく打ち込んでみたら本当にそうで驚いてしまったよ」

「あ……本当だ。そういえばそうですね、ちょうどぴったりでしたね。僕もびっくりしました」

「今、君が無意識のうちにそうしてくれていた事を喜ぶべきなのか私の誕生日が忘れ去られていた事を残念がるべきなのか迷っているよ」

「どっちでもいいので早く調べ物を済ませたらいいと思います」

「泣いてやるっ!」

「まったく……それはそれとして誕生日そのままのパスワードはやめておいた方がいい。すぐに変更してから私に教えてくれ」

「分かりました。というかサラッと言いましたけど教えるの確定なんですね」

「そういえば、先輩は自分のスマホ忘れて来たんですか?」

「いいや、ちゃんと持っているよ?」

「あれ? じゃあどうしてわざわざ僕のスマホを?まさか鞄から取り出すのが面倒だったからなんて事ありませんよね」

「いやいや、そんな事ではないよ。ちゃんと君のスマホに用があったんだ」

「僕のスマホにですか?」

「ただ連絡の履歴を調べていただけだよ」

「先輩、別れましょう」

「急に何を言い出すんだい!?」

「調べたい事と言ったので、てっきり検索か何かだと思ったんですが……。まさかそんなことをしていたとは……」

「ち、違うんだよ。きっと誤解なんだ、私はただ、君が他の誰かと親密な関係になっていやしないだろうかと思って確認していただけなんだ」

「どうしましょう、ぴったり予想通りで何の誤りも無いです。 まあ、別にスマホ見るくらいいいですけど」

「ほ、本当? 良いんだね?位置情報を私のスマホに送れるよう設定しても良いんだね?」

「誰がそこまでやって良いと言いましたか。……え、あの、本当にやってませんよね?」

「ふふん。大丈夫!私はそこまで機械に詳しくないのさ。いまだに動画の撮り方さえ分かっていないからね!」

「それは胸を張って言えることじゃないと思います。それくらい後で教えますから」

「いやあ、でも良かったよ。君から別れようと言われた時は目の前が真っ暗に……ん?その手はなんだい?後輩くん」

「先輩のスマホ貸してください。これであいこにしますから」

「え!?ちょ、ちょっと」

「まさか人のスマホを見ておいて自分はダメだとか言わないですよね?」

「……後輩くん、ちょっと怒ってる?」

「いえいえ、そんなことないですよ。ねえ」

「やっぱり怒ってるぅ……はい、どうぞ」

「では拝見します……って先輩、なんでそんな不安そうな顔してるんですか。ただ通話履歴見るだけですよ。……はっ、これは!」

「あ、あの、お願いだからひかないでくれると……」

「僕以外の通話履歴がほとんど無い……? え、先輩、友達いないんですか?」

「そっちか! しかしまあ、それならいいんだ」

「何も良くないと思いますが……。あんまりにあんまりなので僕の名字が先輩と同じ名字で登録されているのはスルーしておきましょう」

「スルーしてないじゃないか!もう、だから見せたくなかったんだ……」

「え?先輩の名前は逆に……」

「お願いだからもうスマホ返してくれないか!?」

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スマホと先輩と後輩くん ジュオミシキ @juomishiki

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