端午の節句は殿方のお祝い?


 五月五日の四時に、殿下がお越しになられました。


「いやあ、呼んでいただけるとは光栄だな、日曜しか来てはいけないと思っていた♪」

「よくいわれますね、日曜以外にも、時々来られるではありませんか♪」

「それに殿下なら、いつでも歓迎しますよ♪」


「そうか♪この頃忙しくて、なかなかこれないのでね」

「いかがわしいところへは、行かれるのですか?」

「行かない行かない」


「お約束ですから、こっそりなら、構いませんよ、殿下も十九歳ですから……」

「私も十四歳になりました、夜毎のことは教えられています……」


 二年になり、『女子修身』では殿方の欲望のことなど……

 まあね、確かに殿下はたまっているでしょうから、変な女に捕まるよりは、後腐れのない女でね……


 たしかに殿下は、ここしばらく、女っ気はないようです、『解析』が教えてくれるのです。

 

「面と向かって雪乃さんに云われると、ばつが悪いな……」

「でも、お願いですから、よその女にのめり込まないでくださいね」


「私は約束は必ず守る、それにあと四年で、雪乃さんは妻になってくれると信じている、それぐらい我慢できる、それにこっそり、夜の女を買うぐらいは認めてもらえるのなら、なんてことはない!」

「そうですよ♪四年たったら、ここにいる者は全て殿下の女ですからね」


「雪乃さんを筆頭に、綺麗な方ばかりだから、男冥利に尽きるというべきかな」

「殿下のハレムは、ここなのですからね」


 こんな会話をしていますが、『愛人』さんや『斎女(さいのめ)』さんたちは、耳を大きく聞いているようですね。

 でも、こればっかりは仕方ないですからね、皆で殿下を愛するしかないのですよ。


「雪乃様、そろそろ、殿下に柏餅をお出ししたほうが……」

「いけない、そうでした、柏餅を作ったのですが、お食べ願えませんか……あずきの味が上品な……あまり甘くないように、作ったので……」


「それは嬉しいな♪今日は端午の節句でもあるし、そうか、雪乃さんの手作りなのか♪」

「そのほかにも粽を作っております、ぜひ、お持ち帰りください……」


「ここでは食べてはならぬのか?」 

「おこわになりますので、ご夕飯が食べられなくなるのでは?」

「ならば、夕餉を抜こう♪」


 無意識に女を『たらす』殿下です。


「そ……うですね♪では早めの夕餉と云うことで……」


 『おやつ』と夕餉が一体となった食事となりました。


「やはり上手い!この粽はいくらでも食べられる♪やはり雪乃さんの手料理は美味い!」

「こんなに可愛い上に美しい雪乃さんが私の妻になり、毎日上手い手料理を食べられると思うと、これほどの幸せはない!」

「私と雪乃さんが夫婦となり、二人の間に可愛い息子や娘が出来て、ここにいる皆とも子作りに励んで、仲良く暮らす明日を想像すると、四年ぐらいなんて事は無い!」


 殿下、テンションが高くなっています。


 雪乃さん、子作りを想像したようで、真っ赤な顔です。


「雪乃様、お顔が赤いですよ♪」

「その……殿下のお子を身籠もる……子供を産むのよね……私と殿下の子供……」

 

 少しばかり、パニックになった雪乃さんですが……


「私の子供……きっと可愛いわよね!皆で殿下の子を産むのよ……可愛い幼稚園が出来るわ♪ダイアナ様も文子様もきっと可愛い子を授かるわ♪千代子様も、八重様も良子様も冨士子様もお母さんになるのよ♪」

「愛様も和様も、きっときっと可愛い子のお母さんよね♪」

「殿下、頑張ってくださいね♪」


 雪乃さんの言葉に、この場にいた女たちは、想像したのでしょうね……

 母になる事を……そして真っ赤な顔になっていました。


 愛様が、

「殿下、私たちも殿下の……その、子を授かっても、よろしいのでしょうか?」


「当然だろう、皆、私の妻になってくれるのだろう?帝国の世継ぎは申し訳ないが、雪乃さんの第一男子にならざえないが、その一点を除けば、年長の順、私は子が出来れば分け隔てはしない」


「まして私のハレムは、正妻の雪乃さんが預かるわけだ、雪乃さんなら、子は公平に育ててくれるのは確実と思っている」

「それに、夜の事についても、雪乃さんに任せるつもりだ、雪乃さんがちゃんと差配してくれるはずだし、お願い出来るであろう、雪乃さん」


 もう!たしかにそうなりますが、丸投げなのですね!

 せっかく幸せな明日を夢見ていたのに、現実に引き戻すのですから!


「そうなれば、お任せ下さい、ついでに殿下の手癖の悪い、『おこさん』もしっかり管理して差し上げますよ!」

「正妻の義務だから、そうなるだろう、母上もしっかり父上を管理しているし」

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