女学校計画 其の一


 『帝室王女御用邸』は、四月に入り正式に私、『聖女岩倉姫宮雪乃』に売却されました。

 かなりの値段を支払ったのです。

 資産を減らすための窮余の策ですが、現金がへり、不動産が増える……全然減らないではありませんか!

 帝室資産管理局は無能ですか!


 えっ不動産の購入価格を私が欲しいと云ったので、かなり高額な価格をふっかけたが、必要なので渋々購入した事になっている……

 それって、法違反ではないの?


 何とでもする?


 なにか恐ろしいお返事がありましたが、私、聞こえませんでした!


 『帝室聖女御用邸』と名称が変わり、移管されていた、殿方の控え用の建物は取りあえず物品の備蓄倉庫になりました。

 この『帝室聖女御用邸』は、聖女本人と聖女の身近に使える者が住む、私的なお屋敷と発表されています。

 

 聖女の公的なお仕事の場所は、『恩賜財団 青鞜会』の施設が集まっている地域。

 広大な陸軍御用地を『恩賜財団 青鞜会』が借り受けたのです。

 賃貸料は支払いますよ。

 

 『恩賜青鞜会看護高等女学校』は帝国でただ一つの八年制の女学校、開学そうそうですが、女子高等師範学校と同レベルの女子最難関校と認識されています。

 

 そもそも、この帝国では、良家の娘さんは働くなんてことは『褒められたことではない』のです。

 よって女高師といえど、華族や富裕層の家から娘さんが通うことはありません。

 ただ国家に奉仕する、女高師と青鞜看護高女は、認めるというところのようです。


 でもね、『青鞜』と名が付いた以上、望めば就職は保証します。

 青鞜看護高女は卒業すれば、陸軍軍属ですからね。


 『恩賜青鞜会実科高等女学校』の姉妹校も設立予定です。

 現在、校舎を建設中で、ここは、聖女に仕えるための実技を学ぶ学校で、学費無料、ここも卒業すれば二十五歳まで年季奉公の義務が発生します。

 『恩賜青鞜会高等女子小学校』の上級校となる予定で、修業年限三年です。

 二年制の実科高等女学校の授業を三年で学ぶ訳です。

 事実上の実業高等女学校なのですが、『恩賜青鞜会実科高等女学校』が社会人を主に対象としており、夜間授業も行っているのですが、こちらは普通の女学校、ただね、この『実科』というのが……

 

 『恩賜青鞜会女官実科高等女学校』という名前が示すとおり、『恩賜財団 青鞜会』の正規職員として採用された方が、学ぶ女学校なのです。

 『女官実科』という以上、かなりの事をたたき込むと聞いています。

 一応、女生徒は『恩賜財団 青鞜会』の年季奉公人の『采女(うねめ)』ですから、一切の費用はかかりません。


 一般の二年制の実科高等女学校は年におしなべると週72時間授業ですが、『恩賜青鞜会女官実科高等女学校』は一日四単位、五限から八限、その上、土曜日は五限と六限の2時間、週22時間。

 週24時間必要ですので、足りません。

 年間42週らしいので、足りない分84時間は夏休みが三週間になり、ひねり出した四週間は平常どおりで88時間……

 大体帳尻があいますが、大丈夫なのですかね……


 えっ、嫌なら『恩賜青鞜会高等女子小学校』卒業時に、補助職員を選んでいただければ良い話し?まぁそうですが……

 一応、青鞜会がらみの学校の午後の時間割は次の通り。


 五限、1時から1時50分

 六限、2時00分から2時50分

 七限、3時00分から3時50分

 八限、4時00分から4時50分


 九限、5時30分から6時20分

 十限、6時30分から7時20分

 十一限、7時30分から8時20分


 『恩賜財団 青鞜会』の勤務時間は9時から5時までの8時間……

『恩賜青鞜会女官実科高等女学校』の生徒は、『青鞜会雇員』の扱いで午前中は青鞜会の雑務をしていただきます。


 ただね、女官実科とある以上、裁縫は普通の高等女学校と同程度、実科高女は36時間占めていましたが、五年生高女の20時間、余った14時間が、『女官作法』なのです。

 そして『実業』の内容は、『女子衛生 応用』、『女子衛生』とは、いわゆる『保健』となりますが……応用なのです。


 『恩賜青鞜会 高等女子小学校』の『実業』も、『女子衛生 基本』、いわゆるまっとうな『保健』となります。

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