疲労の極み

ツヨシ

第1話

疲れている。

自分じゃどうしようもないほどに。

常に頭が痛い。

めまいや吐き気もしょっちゅうだ。

幻聴まで聞こえる。

幻聴なんて生まれて初めてだ。

幻覚も見た。

幻覚なんて生まれて初めてだ。

仕事をフルタイムでして、残業まである。

そして生まれてまだ数ヶ月の女の子の子育て。

その上炊事洗濯などの家事全般。

子守は私が仕事の間に義母が少し手伝ってくれるがそれだけだ。

私の負担は大きい。

一日で自分の時間は一切なく、睡眠時間も削られている。

夫はいくら言っても何もしてはくれない。

私に文句を言うだけだ。

もう疲労は極限まで達している。

今日も仕事から帰ってすぐに子守。

さっきまで泣いていたが、ようやく眠ってくれた。

義母はもういない。

赤ちゃんを一人のこして帰ってしまった。

いつものことだ。

夫が言うには今日は会社の飲み会だそうだ。

帰ってくるのは日付を超えてからだろう。

今日は夫の世話をしなくていいんだ。

もう何もしたくない。

冷蔵庫の中にまだ食べられるものがあるはずだ。

それを電子レンジで暖めて食べることにしよう。

本当につらい。

せめて赤ちゃんさえいなければ。

――赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん……。

私はレンジの蓋を閉め、スイッチを押した。

そしてソファーで横になった。

――!

何か聞こえてきた。

こもったような赤ちゃんの鳴き声だ。

もう起きたのか。

ベビーベッドを見たが、赤ちゃんはそこにいなかった。

――えっ?

泣き声はまだ聞こえる。

いったいどこから。

そして私の目は、電子レンジに釘付けになった。


       終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

疲労の極み ツヨシ @kunkunkonkon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ