あと1年しかない私の命

@iori_130

第1話

私はあと1年しか生きられない____




それは、もう一ヶ月前から決まっていたことだ。

医師に余命宣告をされた時、

驚きと共に焦りがあった。

付き合っている彼氏に、どう打ち明けようか、どうやって別れようかを考えていてどんどん時間ばかりが過ぎていってしまったのだ。



現に、今も余命のことを口に出せずにいる。

あと残り1年という短い時間の間、

早く別れて、打ち明けてしまった方が楽なのだ。

その方がお互い、否、彼は楽になれるから。




杏子きょうこ?どうしたの?」



「ううん。なんでもない。あっち行こう」




そう言っていつも通り手を繋いで街を歩く。

私がこんなことを言えば、彼は絶対に離れてくれない。

絶対そばに居るだなんて言ってしまうだろう。

言わずにこの世を去ってしまうのもいいかもしれない。





彼と会ったのは今からちょうど3年前____

バイトをしていたカフェに彼が来たことがきっかけだった。

話すようになって、一緒に帰るようになって、

彼は常連さんになった。


あの時から、初めて会った時から、

私は彼のことを見ていたし、好いていた。

つまり

彼からのアプローチもあってか、出会って1年して付き合った。



あの時は、まだ病気のことなんて何一つ知らなかった。自分が病に侵されていることも、

その病がその時点で治らない病気ということも。


健康診断で判明した病。

もう治らない段階まで来ているらしい。

そして医師から伝えられたのは1年の余命。



「杏子。あっちの店とか良さそうだね。」


「うん。そうだね。そっち行ってみようか。」



あぁ、今日もこのデートが終わりを迎えてしまう。

あと30分もすれば帰る時間で、

何一つとして彼に病のことを打ち明けていない。

一体いつになったら打ち明けることが出来るのか。

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