第2話 ファイブG号

ファイブG号に乗り移った俺は船員のグリシャに迎えられた。


「ようこそファイブG号へ。僕は船員のグリシャだ。大変な旅だっただろう。」


 黒髪マッシュで丸眼鏡をかけた姿から、とても優しい印象を受ける。穏やかな声と優しい口調に、俺は安心感を覚えた。


「アレクセイだ。助けていただき感謝する。」


 俺はグリシャに右手を差し出した。それに呼応するように、グリシャも右手を差し出し、固く握手をする。


「あぁ、この宇宙船でゆっくりしていくといい、と言いたいところだが、この宇宙船には少し面倒事が起こっていてね。ゆっくりはできないと思うけど、仲良くしよう。」


「あ、あぁ。よろしく頼む。」


(面倒事?たしか、救難信号を送った時も、都合がどうのって言っていたような、、、)


「とりあえず、みんなが集まるカフェテリアへ案内しよう。そこでお互いのことを知ってもらおうか。」


 俺はグリシャの提案に首を縦にふる。一抹の不安を抱えながらも、俺はグリシャの案内に従い、カフェテリアに向かった。


◆◆◆


 カフェテリアは広く、真ん中に十人ほど囲んで座れる円形のテーブルが置かれていた。

 それよりも、、


「グリシャ、誰もいないんだが、、」


 大きなテーブルに席に着いている者はいない。そして、テーブルの中央に『danger』と書かれた赤いボタンが設置されていた。

(物々しいボタンが、なんでカフェテリアにあるんだよ。)


「あぁ、悪い悪い。今船員達はそれぞれのミッションをこなしている途中なんだ。すぐに招集するよ。」


 そう言って、グリシャはテーブルの真ん中にある、赤いボタンを押した。宇宙船内に甲高いアラート音が鳴り響く。


「・・・なぁ、グリシャ。その『danger』って書いてるボタンを気軽に押して大丈夫なのか。」


 俺は少し呆気にとられながら、聞き返した。普通なら『danger』なんて書いてるボタン押す機会なんて滅多にないからだ。


「すまない、アレクセイ。説明がまだだったね。このボタンだが、簡単に言うと、緊急会議を連絡するボタンなんだ。このカフェテリアは船員の会議場としても使われているからね。ここに置いておくのが都合がいいんだよ。それと、このボタンは旧式みたいでね。指紋認証を行い、認証を行った人しか押すことができないんだ。しかも、一度きりしか押すことができない。実に不便なボタンだろう。」


「それって、グリシャは2度とボタンを押せないってことだろう。大丈夫なのか?」


「大丈夫、大丈夫。そんな危ない状態になることの方が珍しいからね。」


 (そういうものなのだろうか。)


 少し引っかかる部分もあるが、この宇宙船の船員がいうのだから間違いないのだろう。

 そんな会話をしていると、カフェテリアに入る三つの入り口から、それぞれ話し声が聞こえてきた。


「みんなも来たみたいだね。僕達も席に着こうか。」


 俺はグリシャに促されるがまま、席に着くのだった。

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