第7話【鬼才と天才】

長らくお待たせしました。しかし、申し訳ありませんが、次の投稿はより遅くなると思います。次の投稿は5月9日(日曜日)を予定しています。ただ、その代わりに5月10日から始まる週には二話以上投稿します。


今回は多少短いですが、私は非常に頻繁に改稿するため、文字数は増えます。もちろん、大幅に内容が変わったりはしないのでご安心ください。少し、戦闘描写を加えるだけですので。......戦闘描写って、難しいですね。


処女作です。誤字脱字報告、よろしかったら是非お願いします!

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます!!


*小説家になろうでも連載しています。https://ncode.syosetu.com/n7518gv/


*午後七時に更新(基本的に10日に1話。10日よりも遅い場合もありますが、その場合は次の更新を早くします。)


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 それは、現実では失われて久しい、まさに天上の領域の戦いであった。神話の神々の戦いが実際にあったのだとしたら、このような光景だったのだろう。




 ......よし、楓が『炎壁フレイムウォール』、『雷界ライトニングゾーン』、『魔力盾マジックシールド』の三つの魔術を発動させた。これで、俺と魔霊鬼の戦闘の余波が防げる。また、魔霊鬼が万が一楓たちを狙った場合でも、一撃は凌げるだろう。


「さて、では行くぞ!」


 さて、まずは小手調べといこうか。《才力スキル》と能力値だけ見るとかなり強そうではあるが、実際の戦闘技術はどれぐらいだ?ずっとここにいたのならば、戦闘経験は全く無さそうだが。


「『影刃』『衝波ソニック』」


『影刃』により、俺の黒い巨大剣ツーハンデッドソード————正式名称、狼斬王クフィネウプト————が柄まで真っ黒に染まり、振り下ろすと黒く染まった『衝波ソニック』が魔霊鬼に向けて飛んでいく。


 小手調べではあるが、もしも正面から当たれば魔霊鬼でも死ぬ可能性のある一撃だ。まあ、この程度の攻撃は避けられるだろうが。


 だが、魔霊鬼がそれを避けることはなかった。魔霊鬼はそのまま『衝波ソニック』に首を切り裂かれ、頭部が地面に落下した。

 あまりにも呆気ない結末に、配下たちが一瞬呆然とする。だが、この程度の攻撃で魔霊鬼が死ぬはずがない。これが『幻惑魔術』か、かなり厄介だな。


 その予測を裏付けるように、俺の背後から不可視の風の刃が迫ってくる。やはり、あれは幻惑だったようだ。

『幻惑魔術』を持っていることは知っていたのに、見てるだけだと幻惑だと分からなかった。流石だな、見分けることは不可能か。


 しかし、折角の奇襲の機会なのだから『風魔術』ではなく、もう少し強力な攻撃にすべきだったな。そうすれば、俺に多少なりとも怪我を負わせられたかもしれないのに。

 まあ兎も角、この小手調べで魔霊鬼の実力はある程度は把握した。予想よりも強力な《才力スキル》のようだし、ここからは本気でいく必要があるようだ。

 時間を掛けて戦闘経験を積ませたら、いくら俺でも厄介なことになりかねない。魔術、予想よりも遥かに戦闘に有用だ。


「『瞬歩』、奥義【八連蒼撃】」


 剣崎流刀剣術の奥義の一つ、【八連蒼撃】。


 今から三代前の宗主、剣崎けんざき 豪刃ごうじんが編み出した奥義だ。魔霊鬼が自身の幻惑をどれくらい作り出せるのかは知らないが、最低でも八つは作れなければ避けられないだろう。

 まあ、そもそも幻惑を作り出す時間があるかも分からないが。この奥義は、奥義の中でも上位に位置する速度の技。時には達人ですらも反応できない一撃だ。

 まあ、とはいえこの程度の攻撃はどうにかして避けて欲しい。久しぶりの強者との戦い、こんなに早く終わらせるのは惜しい。さて、一体どのように避けるのか?



「『霊体』」


 ......っっ!なるほど、そういえば『霊体』も持っていたか。森魔霊の時と同じで、氣をまとった攻撃や魔術以外は通用しないということだな。

 全く、これまで培ってきた技が殆ど通用しないなど、霊系の魔物は武人にとっての天敵かもな。


 ああ、最高だ。予想よりも全然楽しめそうだっ!


 § § §


 戦い始めて、約10分が経過した。未だに、互いにかすり傷程度の攻撃しか負っておらず、致命傷には程遠い。実際、俺も魔霊鬼もあまり消耗していない。


 キンッ!


 俺の黒い巨大剣ツーハンデッドソードと奴の異常なまでに頑丈な拳がぶつかり、そこを中心に部屋全体に衝撃波が広がる。

 その身を震わすかのような強力な攻撃を体感し、思わず口角が吊り上がる。無意識に笑みが浮かび、しかし眼は一瞬たりとも閉じたりはしない。

 もしも目を一時でも相手から離せば、その次の瞬間には自分の首が宙に舞っていると互いに理解しているからだ。それほどに双方が強く、そして実力が拮抗している。


 俺、剣崎けんざき しずくは戦いが好きだ。斬るのが、叩き潰すのが、捻り千切ることが好きだ。殺し合いが好きだ。


 もちろん平穏な日常も好きだが、それと同じぐらいに————いや、それ以上に血に塗れた戦いが好きなのだ、愛していると言ってもいい。

 弱者を嬲り、蹂躙し、虐殺する戦いに恋し、強者と命を削りながら、己の全てを引き出す戦いを愛している。

 特に俺と対等に戦える強者との戦いでは、この俺が相手に敬意を向けるほどに愛し、恋い焦がれているのだ。


 そもそも、俺が平穏な日常を心から好きになったのは、俺と対等に戦える奴が地球上にいなくなってしまったのが原因の一つだ。

 もしも、この魔霊鬼のように俺と対等に戦える奴が、俺よりも強い奴らが大勢いたならば、俺は日常を好きになることはなかっただろう。

 ただ、残念なことにもう世界には弱者しか残っておらず、その者たちも俺と戦うことから必死に逃げていたから、戦いに対する情熱が一時期冷めてしまっていただけで。


 だからこそ、俺は今戦っている二階層の強敵ボスである、魔霊鬼に対して久方ぶりに”感謝”という感情を向けているのだ。


 正直、俺の予想では魔霊鬼が俺と対等に戦えるほどだとは思っていなかった。嬉しい誤算というのは、きっとこういうことを言うのだろう。


 魔霊鬼が持っていた《才力スキル》、『格闘術』のLvは4。本来なら武人としては一流程度で、俺に敵うほどの実力はない。

 しかし、魔霊鬼の持っている『幻惑魔術Lv5』を中心とする遠距離妖魔戦闘系の《才力スキル》とLv4の『物理攻撃耐性』、高い堅力の能力値などの『ステータス』の恩恵が、奴を飛躍的に強くさせていた。

 ああ、『ステータス』にも感謝しなければいけないな。

 おかげで対等に戦うことができ、その恩恵で俺と魔霊鬼を、達人の領域すらも超えた、人外の領域へと足を踏み入れさせつつあるのだから。


 これほど素晴らしい戦いは初めてだ。少なくとも、現時点ではこれが俺の人生で最高の戦いであると断言できるほどだ。

 戦えば戦うほど、身体が熱く、そして恐ろしいほどに頭が冴えていく。おそらく、急激なLvアップが発生して、『ステータス』の能力値と《才力スキル》Lvが急成長しているのだろう。

 そして、それは魔霊鬼も同じ。だが、才能の差とは酷なものだな。


「感謝するぞ、魔霊鬼ッ!!」


 さて、そろそろ決着をつけるとしよう。俺と10分も打ち合えたことは最高の誉だぞ、魔霊鬼。


 § § §


 私たちは、一体何を見ているのだろうか?


 これが、武の頂と呼ばれていた男の真の実力なのか?


 影すら踏ませず、刃すら交えさせず、認識すらさせない。圧倒的という言葉すら生温い、絶対的な強者。


「『氣纏』『瞬歩』『影刃』、奥義【八連蒼斬】!」


 瞬きした後には、既に敵の背後にいる。その巨大な剣の刃は影に覆われ、蒼き剣光を閃かせ、八つに分裂する。幻惑で幾つもある敵の首が、四肢が、胴体が、いつの間にか切り刻まれている。


 ......私は、きっと心のどこかで彼を侮っていたのだろう。どれだけ優れた武人といっても、結局は同じ人間なのだから、そこまで大きな差はないと思っていたのだろう。

 努力すれば、いずれ届く領域だと。才能の差はあるかもしれないが、その程度武器や状況次第でいくらでも埋められると。

 だからこそ、美羽と協力し、奴を————剣崎けんざき しずくを————殺そうなどと、身の程知らずなことを考えてしまっていたのだ。


 そんなこと、できるはずもなかったというのに。


 何故、科学技術が大幅に発達したこの世界で、武の頂と呼ばれ、世界中の権力者たちから恐れられていたのか、一般人である私たちには理解できなかった。想像が、できなかったのだ。


 どれほど肉体が堅くなろうと、ナイフで切り裂くことや弾丸で貫くことはできる。

 どれほどその動きが素早かったとしても、音速すらも超えた攻撃を避ける術はない。

 どれほど筋力が優れていようと、破壊できない物など数多く存在している。


 そうやって考えていたし、実際、何故国家の代表までもが彼に媚びているのか分からず、それに反発する組織も多かった。

 しかし、今ならば分かる。例え『ステータス』の恩恵などなかったとしても、科学技術が凄まじい速さで急発達したとしても、あの男を殺すことなど不可能なのだ。


 私たちは、魔霊鬼を直接見る前、巨門から溢れ出る殺気の重圧にすら耐えることができなかった。命令だから従い、強敵ボス部屋に入ったが、心の中ではすぐに訪れるであろう死に絶望していた。

 そして、私と美羽に悪行の限りを尽くしたこの男も、私たちと共に死ぬことになると考え、哀れみの目さえ向けていたのだ。


 だが、結果を見ればどうだろうか?


 あの男は部屋に入り、美羽から魔霊鬼の『ステータス』を聞くや否や私たちを部屋の隅へと追いやった。久しぶりの強者と、一対一で戦うことを望んだ。

 そして、本当に魔霊鬼と一人だけで対等に戦い、さらに戦いの中で成長し、今や圧倒するまでに至った。脅威的なまでの成長能力だ。

 例え対等に戦える相手がいたとしても、数分後にはその相手を格下として扱える力。......こんな存在、勝てるわけがないのだ。




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『固有名』剣崎けんざき しずく

 《種族》普人族ヒューマンLv50  《天職》侍Lv25

 性別:男      年齢:17


 能力値

 筋力:C- 魔力:E 速力:C- 妖力:D 堅力:D 魅力:B


 《才力スキル


 近接物理戦闘系

 『刀剣術Lv6』『騎馬術Lv4』『格闘術Lv4』

 遠距離物理戦闘系

 『投擲術Lv4』

 物理生産系

 『商術Lv3』『家事Lv2』

 身体能力強化系

 『氣纏Lv5』『身体能力強化Lv3』

 特殊能力系

 『勇気ブレイブLv6』『気配感知Lv5』『指導Lv4』『調教術Lv2』


 《固有権才オリジナルスキル


 【天壌の刀勇Lv1】


 配下一覧


 雨野あまの かえで

 桃瀬ももせ 美羽みう

 黒斬狼主×7

 黒刃狼×3

 森魔霊×10


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