第6話【魔物と戦狂】


 処女作です。誤字脱字報告、よろしかったら是非お願いします!

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 *小説家になろうでも連載しています。https://ncode.syosetu.com/n7518gv/


 *午後七時に更新(基本的に10日に1話)


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 ————————これは、剣崎けんざき しずくが眠っている間の話。世界が生まれ変わった後、地上で暮らす人々の話。




 僕の名前は、天光あまみつ 勇哉ゆうや。武術の名門、天光家の跡継ぎであり、既に一流の境地に達した武人の一人だ。


 約一週間前、僕たちが住む美しい世界は唐突に終わりを迎え、残酷で血濡れた悍ましい新世界が始まった。


 無邪気に友達と駆け回っている子供、家族のために一生懸命に仕事に励むサラリーマン、公園のベンチでのんびりと日向ぼっこをしていた老夫婦............

 その全てが、瞬き一つした後には無くなっていた。彼らの四肢は捥げ、胴体は食いちぎられ、首は跳ね飛ばされていた。

 残されたのは、幾つもの血溜まりだけ。彼らがこの世界に存在した跡は、見る影もなくなっていた。


 それらの情け容赦ない惨事を成したのは、おそらくに突如現れたと思われる、これまで空想上の存在でしかなかった怪物————魔物————たちだ。


 魔物と一言で言ったが、魔物という名称は幾つもの種族の総称でしかない。

 僕がこれまで直接発見することができた魔物は一種族だけだが、現在僕と共に過ごしている人々の中には僕が発見したのとは違う種族を発見した人たちも多くいる。

 一つの街だけで複数の種族が発見されていることを考えると、世界中に出現したとなると最低でも数百種族、運が悪ければ数万種族が存在しているだろう。

 それなのに、僕たちがそのような膨大な数の種族を総称で呼んでいる理由は、現状発見されている全ての種族の魔物が、僕たちにとっては最悪な一つの共通点を持っているからだった。


 その共通点とは、現状発見されている中で最も弱いと目される種族ですらも、二流以上の武人の実力がないと討伐できないという点だ。

 しかし、それは単純に魔物が強いから討伐できないということではない。いや、確かに強い個体もいるが、それは絶対的な理由ではない。

 殆どの人々が討伐できないのは、僕たち普人族ヒューマンには決定的な弱点があるからだった。


 僕たちが今住んでいる街の最弱の魔物の《種族》の名前は、小邪鬼ゴブリン。多少知性を持っているが、その代わりに他の《種族》よりもかなり劣った身体しか持たない魔物だ。

 しかも、その多少の知性も普人族ヒューマンと比べたら大きく劣り、武器を使ったり、肉を焼いたりぐらいしかできない。

 そして、小邪鬼ゴブリンは武器を使うというよりも、振り回しているのに近い。武器の使い方を知らないのだろう。

 だから、小邪鬼ゴブリンの攻撃は、身体能力が普人族ヒューマンよりも優れているから当たったら致命傷になるが、注意すれば一般人でも当たることはない程度でしかない。


 だが、そんな小邪鬼ゴブリンでさえも、二流以上の武人でないと討伐は不可能なのだ。彼ら一般人にも熟練の軍人やプロのスポーツ選手などの十分な身体能力を持つものも含まれているが、それでも不可能だったのだ。


 僕たち武人が一般人を手助けしたとしても、彼らが対峙前にはどれだけ勇ましかったとしても、どれほど戦闘に慣れた者たちであっても............何故か彼らは魔物を見るとすぐに逃げた。

 逃げた彼らに聞いてみても、「身体が勝手に逃げ出す」と言うだけだ。

 だから銃火器を渡して、目隠しをさせ、拘束し、僕たちが方向を示すということもしてみたが、残念ながら魔力もしくは妖力(主に氣を使用)がない弾丸による攻撃は、魔物には無意味だった。


 世界が変わって以降、世界各地では天光家も含む名家が主導となり、人々を保護し始めた。

 いつものように傍観して政治家たちに任せるという案も出たが、流石に今回は僕たち名家が表に出ないと人類が滅びる可能性がとても高かったからだ。

 現在では多くの人々が保護下に入っており、不満もあるだろうが農作業などの仕事をしてもらっている。

 また、僕のような二流以上の武人は、二人組もしくは三人組で魔物を討伐している。複数人なのは、貴重な戦力がもしもの時になくならないためだ。


 元々、名家との関係が深く、一流以上になると超人的な能力を持つ武人の価値はとても高かったが、現在僕たち武人の価値はさらに高まり続けている。

 それは現状、二流以上の武人以外には討伐が不可能な魔物が膨大な数存在し、今も尚増え続けているからだ。

 だが、魔物たちは際限なく増え続けており、討伐可能な武人の数に対して守護すべき一般人の数があまりにも多かった。

 このままでは、いつか僕たち普人族ヒューマンは滅んでしまう。これはなんとしてでも避けなければならないことだ。


 僕たちは必死に考えた。戦闘時以外の時間を、新たな策を見つけ出すために全て注ぎ込んだ。人脈、資源、部下たちを使って新しい世界について徹底的に調べさせた。


 だが、妙案が思い浮かぶことはなかった。


 どうにかして、早急に一般人でも魔物を討伐できる手段を探し出さなければならない。

 何で逃げ出してしまう、戦闘経験があっても優れて身体能力があっても逃げ出してしまうのは何でだ!?

 一度でも魔物を討伐することができれば、『ステータス』に覚醒して、遥かに楽に討伐できるようになるというのに......!


 § § §


「雫様、起床の時間です。起床する時間になりました。雫様、時間です............」


 耳元から機械のような冷たい印象を与える声が、延々と聞こえてくる。だが、冷たい声から灼熱のような怒りが伝わり、俺は反射的に目を覚ました。


 声が聞こえた方向に顔を向けると、楓が森魔霊の群れと戦闘した後とは思えないほどに綺麗な服を着て正座していた。

 楓と美羽の二人には、「もしも俺が熟睡していて、二人の方が先に目覚めたら起こせ」とは命令していたが、まさか怒りに反応して起きることになるとは思わなかった。

 まあ、俺が二人にしたことを考えれば、怒っているのは当たり前だ。むしろ、殺気を抱いていないだけ現実が見えていると言っても良いだろう。

 もう一人の美羽は既に怒りという感情すらなく、まるで人形のようになってしまっているしな。......とはいえ、それも年齢を考慮すると精神が異常をきたすのは当たり前か。


 とりあえず、目が覚めたので昨日寝る前に命令した森魔霊たちを呼ぶ。だが、実際に声に出して呼ぶのではなく、楓に『炎壁』を発動させて集める。

 流石に、寝起きで声を張り上げることはしたくないのだ。


 俺が森魔霊たちに命令していたのは、この二階層の強敵ボスの居場所を探すことだ。森魔霊たちは霊なので眠る必要がなく、丁度良かったので俺たちが寝ている間に探させていた。

 森魔霊たちがいなければ黒斬狼主に召喚させた黒斬狼にやらせただろうが、大森林もなくなり見えやすくなったこの大草原では、空から見た方が見つけやすいだろう。

 これでまた一つ、偵察役としての森魔霊たちの価値が上がった。やはり、結構使えるな。


 そして、早速森魔霊たちが集まってきたので、強敵ボスの居場所について順に聞いていく。

 ............どうやら、8体目の森魔霊が強敵ボスの居場所を見つけたらしい。俺たちは荷物を纏めて、森魔霊に案内をさせながら強敵ボス部屋に向かって進んでいくのだった。


 § § §


 森魔霊の案内から約3時間後、森魔霊が時々空中から大草原を見渡して方向調整をしながらも進み、俺たちはついに二階層の強敵ボス部屋の入り口を見つけた。


 どうやら、今回は強敵ボス部屋の門が地面に設置されているらしい。道理で大草原なのに、歩いている途中見渡しても影一つ見えない訳だ。

 これは空からでないと見つけるのに苦労していただろう。食糧的な問題であまり時間は浪費したくないし、森魔霊たちに捜索を任せて正解だったな。


 ......門を眺めていてふと思ったが、強敵ボス部屋の門は巨大でなければならない理由でもあるのだろうか?

 前回の門も相当な大きさだったが、今回の門は前回の2倍近い大きさをしていて、だいたい10mほどありそうだ。


 そして、今回の強敵ボス部屋への入り口にも巨大な門があるところを見ると、これからも強敵ボス部屋への入り口には門があるのかもしれないな。

 それならば強敵ボスに奇襲される可能性は殆どない、いいことだ。まあ、確定ではない以上油断はできないが。


 いや、油断なんてする余裕はないか。

 巨大な門は、今回も前回と同じように重圧を放っている。さらに今回は、俺以外の配下全員が苦しそうにしているしな。巨門越しに強敵ボスの強さは伝わっているはずだ。

 二人は脂汗まで出ているし、前回とは比にならない相当な重圧みたいだな。

 また、前回は二人の息が多少重くなり、黒斬狼たちには平気だったので魔物には効果がないと思っていたが、どうやら違ったようだ。

 単純に力量の問題の可能性が高い。それなら両方とも俺に効いていないのも納得できるしな。

 まあ、巨門に描かれている森魔霊たちに角を生やしたような、鬼の模様からしても強そうだ。


 とりあえず、俺はさっさと地上に戻りたいので、苦しそうな配下に命令して巨門の先へと足を踏み入れた。




 やはりというべきか、今回の巨門の先、強敵ボス部屋にいる強敵ボスは巨門に描かれていた鬼だった。

 だが、前回の一階層強敵ボスである黒斬狼主と違い、あまり大きくはない。黒斬狼主は全長3mを超える巨躯を誇っていたが、今回は2m程度。

 背の高い普人族ヒューマンと同じぐらいの大きさだ。というか、頭の角さえなければ最早普人族ヒューマンにしか見えない格好をしている。

 これは面白いな。こいつを『調教テイム』するのもいいかもしれない。


 まあ、とはいえまずは情報収集だ。これは戦いの基本だろう。俺は素早く美羽に『闘眼』の使用を命じた。


「美羽、鬼に対して『闘眼』の使用を命じる。分かった情報を俺たちにすぐに伝達しろ」


「はい。あの鬼の『ステータス』は以下の通りです。


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『固有名』

 《種族》魔霊鬼Lv50      《天職》幻魔術師Lv10

 性別:雌           年齢:0


 能力値

 筋力:D 魔力:C- 速力:D 妖力:E- 堅力:D 魅力:E


 《才力スキル


 近接物理戦闘系

 『格闘術Lv4』

 遠距離妖魔戦闘系

 『幻惑魔術Lv5』『風魔術Lv4』『土魔術Lv3』『火魔術Lv2』

 状態異常耐性系

 『物理攻撃体制Lv4』『精神耐性Lv4』

 特殊能力系

 『霊体Lv5』『仮体Lv5』『身体能力強化Lv3』


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 《才力スキル》『仮体』によって、物理戦闘も可能になるようです。」


 こいつは............強いな!この鬼は世界が変化した後、俺が出会った中では間違いなく最強の存在だろう。しかも物理戦闘も可能か。

 これは絶好の機会と言える。魔術も含めれば、滅多にいない達人級の実力者。

 適度に弱らせて『調教テイム』するつもりだったが、気が変わった。最近はまともな殺し合いができていなかったから、身体が鈍っていたんだよな。

 よし、決めた。


「お前たち、隅の方で集まってじっとしていろ。楓は攻撃が飛んできたら『盾魔術』で守れ。あいつは、俺一人で討伐する。」


 久しぶりの真剣勝負に、高揚感が治らない............!


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