第4話【大自然と成長】

  処女作です。誤字脱字報告、よろしかったら是非お願いします!

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*小説家になろうでも連載しています。https://ncode.syosetu.com/n7518gv/


*午後七時に更新(度々更新日を変更して申し訳ありません。一週間に1~3話投稿する予定でしたが、それも厳しいので、10日ずつ1話投稿しようと思います。最近仕事が忙しいため、更新日を減らさせていただきました。ある程度仕事が落ち着いたら、更新日を明確にし、投稿頻度も増やそうと考えています)


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 そうして意気揚々と第二階層に足を踏み入れた俺たちを出迎えたのは、まるで地上にいるかのような大自然の雄大な景色だった。

 燦々と陽光が降り注ぐ美しい草原と植物が生い茂る広大な大森林が俺たちの視界を埋め尽くす。


 第一階層の汚らしい土の迷路とは似ても似つかない、力強くも美しい光景に、楓と美羽は目を奪われているようだった。

 俺が近づいても全く反応がない。普段であれば人形のような無表情な顔で頭を下げてくるのにもかかわらずだ。

 まあ、普通の中学生が、唐突に六日間もあのような場所に閉じ込められたと考えれば、この景色に呆然とする理由も多少納得はできるので今は放置しておくか。

 刹那の楽しみ程度は与えてやってもいいだろう。

 最近、二人ーーーー立場をようやく分かってきたようなので人として数えることにしたーーーーはかなり従順にしているしな。


 それよりも、問題は大森林から感じる夥しい数の殺気だ。やはり、この第二階層にも黒斬狼のような敵対生物がいるのだろう。

 ここを『迷宮ダンジョン』と仮定すれば、それも当然か。

 ただ、気配は感じるものの、一切姿が見当たらない。おそらく、姿を透明にしたり、景色に溶け込む《才力スキル》を所有しているか、近くまで行かないと見えないほどに小さいのだろう。


 それを考慮するとかなり厄介な相手だ、奇襲を受ける可能性が高いし、残念ながら多少の犠牲は出さざるを得ない......

 しかし、それはあくまでも数刻前までの話。現在こちらには、使ってもなくならない捨て駒がいくらでも存在する。

 早速俺は楓と美羽の身辺警護をさせている黒斬狼主達に、『下位種召喚』の使用とそれを利用した偵察を命じた。


「全ての黒斬狼主に命じる、『下位種召喚』を使用し、下位種に大森林の偵察をさせよ」


 俺の命令に従い、七匹の黒斬狼主が『下位種召喚』を発動する。地面から幾何学的な魔法陣が浮かび上がり、黒い光とともに黒斬狼たちが現れた。

 黒斬狼主たちが吠えると黒斬狼たちは命令を理解したらしく、森に向かって走っていく。


 殺気の強さをから察するに、殺気の持ち主は召喚した黒斬狼よりも多少強いみたいだが、多少程度ならば問題はない。

 何せ、こちらの数は無限に等しい。相手の数も相当なものだが、俺たちには劣る。

 まあ、実際は魔力量の関係もあるため、本当に無限に召喚することはできないが、魔力量が回復すればすぐに召喚することはできる。

 つまり、殺気の持ち主は自分と殆ど実力差のない相手と永遠に戦うことになるのだ。

 機械のような存在ならばともかく、そうでなければいずれ力尽きるだろう。


 そんなことを考えながら森に向かう黒斬狼を観察する。黒斬狼の索敵能力ならば敵の強さはわかるはずなのに、一切恐怖は感じていないようだ。

 第一階層の黒斬狼と遜色ないように見えるが、所詮仮初めの命ということか。まあ、捨て駒が感情を持っていた方が面倒だな。


 そして黒斬狼たちが大森林に入った瞬間、ついに殺気の持ち主が動き出した。百は軽く超える数の気配が、ものすごい速さで黒斬狼たちに近づいてくる。

 そのまま襲ってくると思ったのだが、何故か気配は黒斬狼たちの周囲を囲み、動きを止めた。一体どういうことだ?


 気配が急激に近づいてきたことに気付いた黒斬狼も戦闘態勢に入る。しかし、姿どころか匂いや音すらも感知できないようで、黒斬狼は敵を見付けられずにいた。

『嗅覚強化』と『聴覚強化』を持っている黒斬狼が感知できないとは......この殺気の持ち主は、俺の予想よりも手強いようだ。

 いや、それとも数が多すぎて分かり難いのだろうか?気配は混ざりすぎると分かり難いし、音と匂いもそうだろう。


 本来ならそれでも黒斬狼の『魔力感知』も併用して、より詳細に感知できるだろうが、森全体が幻惑属性の魔力に包まれているらしく、使用しても意味がないらしい。

 まあ、そうでなければ美羽の『鑑定』も効いているだろうし、とっくに殺気の持ち主の正体はわかったいる。

 とはいえ、これじゃあ本当に八方塞がりだ。

 何故か殺気の持ち主も攻撃してこないしな。カウンターを狙うこともできない。


 ............もうこうなったらあれを使うしかないか。俺も久々の綺麗な景色はできるだけ壊したくなかったが、今回は仕方ない。

 今のところ、これ以外にこの階層の攻略の道はないのだから。

 数が多すぎて分かり難いのであれば、全ての気配に攻撃を仕掛ければいいいのだ。

 俺は、未だに呆然としている楓を呼んで、気に入った光景を壊すことに少し苛立ちながらも、素早く命令を下した。


「楓、『炎壁フレイムウォール』で森を焼き尽くせ」


 瞬間、自然豊かな大森林に炎の壁が出現し、炎は森を徐々に侵食していった。




炎壁フレイムウォール


『盾魔術』の下級炎属性魔術だ。この魔術は単純で、名前通りに「炎の壁」を創り出す魔術である。

 下級とはいえ、かなり汎用性が高く、炎の温度の高さや壁の巨大さなどを追加で注ぎ込んだ魔力量によって変化させることもできる。

 上位互換のような魔術が現れるまでは、この魔術を使い続けても問題はないだろう。


 そしてこの魔術、実は先ほどの命令からもわかるように、楓が取得した魔術だ。

 しかし、名前から予想がつくように、物理系戦闘職である『盾士』は基本的に魔術を使うことなどできない。

 いや、修練すれば可能かもしれないが、楓が『は取得していなかった。

 というか、修練しようとしても元の世界では魔術などはなかったので、どのように修練すれば良いかわかるはずがない。


 それなのに、何故楓が魔術を取得できたのか?答えは至極単純だ。少し考えれば誰でも思いつくだろう。

 そう、実は黒斬狼主の討伐後、黒斬狼たちだけでなく、楓と美羽もLv上限に達し、次の段階に足を踏み入れていたのだ。

 ああ、とはいえ別に普人族ヒューマンをやめたわけではない。黒斬狼たちのような《種族》ではなく、二人の《天職》が昇格クラスアップしたのだ。


 黒斬狼たちが進化先を決めた後、進化の為なのか黒斬狼たちは一時的に眠りについた。

 おそらく、進化には多大なエネルギーを消費するのだろう。エネルギーの消費を少しでも抑えるためには眠るのが一番だからな。

 そしてその直後、つまり丁度黒斬狼の全個体が眠りに着いて瞬間、楓と美羽の『ステータス』が俺の前に現れたのだ。


 § § §


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『固有名』雨野あまの かえで

 《種族》普人族ヒューマンLv40  《天職》盾士LvMAX(40)

 性別:女      年齢:13


 能力値

 筋力:E- 魔力:E- 速力:E 妖力:E- 堅力:E 魅力:E


 《才力スキル


 近接物理戦闘系

 『盾術Lv2』『格闘術Lv2』

 物理生産系

 『家事Lv3』『算術Lv3』

 身体能力強化系

 『身体能力強化Lv2』

 状態異常耐性系

 『恐慌耐性Lv3』

 特殊能力系

 『従順Lv4』『胆力Lv3』


 所有者マスター剣崎けんざき しずく


 進化クラスアップ候補


 盾士LvMAX(40)→ 硬盾士Lv1

 盾士LvMAX(40)→ 盾隷術士Lv1


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『固有名』桃瀬ももせ 美羽みう

 《種族》普人族ヒューマンLv40  《天職》鑑定士LvMAX(40)

 性別:女      年齢:13


 能力値

 筋力:E- 魔力:E 速力:E 妖力:E- 堅力:E- 魅力:E


 《才力スキル


 近接物理戦闘系

 『逃走術Lv1』『格闘術Lv2』

 物理生産系

 『商術Lv3』『料理Lv2』『鑑定Lv2』

 身体能力強化系

 『脚力強化Lv2』

 状態異常耐性系

 『恐慌耐性Lv3』

 特殊能力系

 『従順Lv4』『胆力Lv3』


 所有者マスター剣崎けんざき しずく


 進化クラスアップ候補


 鑑定士LvMAX(40)→ 中級鑑定士Lv1

 鑑定士LvMAX(40)→ 闘隷鑑定士Lv1


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 黒斬狼たちを進化を終えたら、また俺の目の前に二つの『ステータス』が現れ、二人の《天職》がLvMAXになったことを知らせいてきた。

 黒斬狼たちと合わせて、これで戦力がさらなる飛躍を見せるだろう。黒斬狼主の討伐は、俺たちに多大なる恩恵を齎してくれるようだ。


 久々に見たが、こうして二人の『ステータス』を見ると、これまでの鍛錬の成果がよくわかる。


 俺が教えた『格闘術』を覚えているし、戦闘と『調教』の影響によって、『恐慌耐性』、『胆力』、『従順』と三つもの|才力《スキル》も覚えている。

 いや、楓は元々『胆力』は所持していたので|才力《スキル》は二つだな。


 そして、この覚えた《才力スキル》二つは、戦闘を生業にする者にとっては非常に重要なものだ。

 俺が持っていないのが気になるが、おそらく戦闘に身を置く者たちにとっては必須級の《才力スキル》だろう。


『恐慌耐性』と『胆力』は、普通の女子中学生だった二人の精神力を支えてくれる。

 最近、一流のように落ち着いて戦闘をしているのは、まず間違いなくこの二つの《才力スキル》の影響だろう。

 戦闘の恐怖をに飲まれず、動揺しない強靭な精神を身につけていることは、一流以上の武人になるための条件の一つだ。


 また、基本的に戦闘にはあまり関係のない『従順』だが、これは俺たちのパーティーには上記の二つの《才力スキル》よりも重要だ。


 俺がいちいち『調教術』による命令をしなくても良くなるという素晴らしい効果を持っている。

調教テイム』には成功して間もない時は、時々二人で力を合わせて俺を殺そうとしてきていた。

 その度に、いちいち相手をするか、魔力を消費し、『調教術』で命令に従わせていた。

 正直、魔力を消費すると、戦った後のように精神が摩耗するような感覚があり、かなり嫌だった。

 最近、二人が従順になって改善されたと思っていたが、この《才力スキル》によるものかもしれない。


 さらに、この《才力スキル》は、俺を絶対的な柱としているこのパーティーでは、連携の質を上げることにも多大な貢献をするだろう。

 以上の効果から、今回の|才力《スキル》の中では間違いなく最も良い《才力スキル》なのだ。


 また、『ステータス』の各能力値も順調に上がってきているし、元々持っていた《才力スキル》も成長している。

 最初の『ステータス』とは比べ物にならないほどの強さだ、昇格クラスアップして優れた攻撃手段を手に入れたら、次は楓一人で黒斬狼主を討伐できるかもしれないほどに。

 一見あまり変化はないように見えるだろうが、堅力だけでなく、速力もEになった影響はそれほどに大きい。この能力値、一つランクが変わるだけでも劇的に変化する。


 非戦闘推奨職の美羽は、《天職》によってマイナス補正がかかる能力値が多いから分かり難いが、魔力と速力はいい速度で成長している。

 そして何よりも、美羽には戦闘の才能がある。世界が変わる前でも、一流の武人になれたほどの才能だ。

 もしも戦闘推奨職だったならば、楓と同等の強さどころか、戦闘では絶対に楓よりも上だっただろう。まあ、俺としては『鑑定士』の方が便利なのだが。

 一流程度では、雑魚の処理以外は足手纏いにしかならないしな。


 さて、色々と情報を整理していたが、そろそろ昇格クラスアップさせるとしよう。


 これは俺の予想だが、おそらく硬盾士と中級鑑定士が普通の上位職で、盾隷術士と闘隷鑑定士が『調教術』か『従順』によって発現した特殊な上位職だろう。

 もちろん、俺の予想とは違うもしれないが、全く違うということはないはずだ。

 そして俺の予想を正しいとしてゲーム的に考えると、これらは正規ルートと派生ルートのような感じに近いと思っている。


 正直、本来であれば正規ルートと派生ルートの両方を育ててみたい。だが、俺は天職一人しか所有していない。

 両方のルートの配下を手に入れることは、どう考えても不可能だ。残念極まりない。

 まあ、地上に戻ったら問題も色々と解決するから、そしたら盾士や鑑定士に留まらず、色々と『調教テイム』しよう。


 で、実際にどのルートを選ぶかだが、それは既に決まっている。現状を考慮すればどちらのルートが正解かはすぐに分かるからだ。

 ただ単純にLvを上げて発現しただけの《天職》と、そこにさらに何らかの追加条件が必要だと予想している《天職》。

 どちらがより強力そうに感じるかは一目瞭然だろう、名前から考えてもな。

 まあ、最終的には正規ルートの方が強くなるかもしれないが、今は出来るだけ早く俺の役に立つレベルまで成長して欲しい。

 今の実力だと、俺が全力を振るえば敵と一緒に死んでしまうため、一人の時以外俺が全力を出せないしな。


 俺はそこまで考えをまとめると、迷わず盾隷術士と闘隷鑑定士を選択した。


 § § §


 まあ、そうして無事に二人は盾隷術士と闘隷鑑定士に昇格クラスアップしたわけだ。


 盾隷術士に昇格クラスアップした楓は新たに『盾魔術』を手に入れ、『炎壁フレイムウォール』を含む三つの魔術を覚えた。

 他の魔術は、『雷界ライトニングゾーンと『魔力盾マジックシールド』の二つだ。

 基本的にこれらの魔術を『鑑定』して現れた説明文を見ると、全て防御用の魔術のようだが、どれもかなり汎用性の高い優れた魔術で防御以外にも使えそうだ。

 実際、今楓が『炎壁フレイムウォール』の炎で森を焼いて敵を炙り出したしな。妖魔系の《才力スキル》は便利なようだ。


 そして楓が炙り出した、森に隠れて俺たちに殺気を放っていた持ち主についての情報が判明した。

 大森林が燃えたことにより、幻惑属性の魔力も消えたようで、美羽の『鑑定』が効くようになったからな。

 殺気の持ち種族は、森魔霊。Lvは25~35で、全個体が楓のように妖魔系の《才力スキル》が使えるようだ。

 なるほど、物理的な身体を持たない幽霊のような魔物だったのであれば、気配はあっても見えない理由も分かる。

 実際、現在も薄っすらと姿が見える程度で、これも幻惑属性の魔力があれば見えなくなるだろうしな。

 しかし、何故襲ってこなかったのだろうか?妖魔系の《才力スキル》もあるし、この夥しい数で攻めて来ない理由がわからない。


 とりあえず、俺たちは『調教テイム』用の十匹のみ残して、大森林が燃えたことで出てきた森魔霊の群れを討伐することにした。


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