第62話 エルフの森に授かりし、姫巫女の戦装束!

 それは、現代日本でのこと……

 日本人のぼくが生まれるずっと前、大ヒットした女児向けアニメがありました。

 それはとある女子中学生が、セーラー服をモチーフにしたヒロインに変身して、

 その仲間たちと共に、悪の妖魔たちと戦い続ける──そんなお話でした。

 ただその【セーラー服】っぽいコスチュームのせいか、

 その人気は女児だけにとどまらず、いわゆる【大きなお友達】にまで波及して~


(こ、これっ モロにソレじゃないかぁぁ!?)


 しかも、件のアニメは【レオタード】にセーラー服を合わせた感じだったのに。

 このコスは……ヒモパンビキニになってるし!?

 スカートも超ミニ&ローライズだから、ヒモパンの上がはみだしちゃってる。

 その布面積の少なさは【超エアロモデル】といわれるルシアママのビキニ以上!?


(ここっ こんなの……ただの【えろえろ系コスプレイヤー】じゃないかぁぁ!?)


 なんて、ぼくがワナワナしていると……


「あぁっ アイナさまっ ご覧ください♪」

「これが千年前っ エルフの森に授かりし【姫巫女の戦装束】です♪」

「ビキニアーマーが神託の防具として広まる、そのずっと前から……」

「授けられていたなんて、すごいですよねっ♪」

「え、ええ……すごい……ですね?」


 アイナママ、お顔を真っ赤にしてぼくをみてる、

 それってじぶんで装備してるビキニより、恥ずかしいってことですよね!?


「ふむ……ではクリス、精霊魔法はどうかな?」

「う、うん……じゃあ精霊さんたち? ボクを浮かせて──わっ」


『∩(´∀`∩) ワショ──イ!!』


 【風精霊魔法】の浮遊術。

 それを試したとたん、いつもより元気な精霊さんたちの声が聞こえてきた。


「ちょっ これ……すごぃぃぃっ!?」


 まるでロケットみたいに一気に上空へ、ぼくのカラダが浮かび上がった!?

 いつものように風圧も感じないから、どこまでも上がっていきそうで──


「すっ ストップ! 止めてぇ!?」


 ぼくがそういうと、あっけなく止まったけど……


「た、高っ!? あ、あんなに村が小さいぃぃ!?」


 いままでも、人に目立ちにくいようにって、それなりに高くは飛んでたけど……

 こんな高さは初めてで、思わずぼくのおいなりさんがヒュンって──


「あぁっ【おいなりさん】がないぃぃ!?」

「うぅっ なんという喪失感……」


 とはいえ……泣いていてもしかたないので、飛行実験を続けるぼく。

 その心もとなさに、思わずおっぱいとおまたを手でおさえながら~


 ◇◆◆◇


「ふむ……さらに鍛錬を重ねたようだな、アプリル」

「あ、ありがとうございますっ ルシアさまっ♪」


 そんなふうにアプリルさんを褒めるルシアママ、それをよろこぶアプリルさん。

 ぼくのカラダで女のコっぽく。


「でもスゴいよ! このカラダに慣れてないぼくでも?」

「すっごい【風精霊魔法】が使えちゃうんだ!」

「えへへ♪」


 お空を飛ぶスピードや魔法防壁、そして風刃の威力も……

 ほぼルシアママと同じくらいだったんだ!

 ただし? それはルシアママがビキニを装備する前のお話。


(ビキニを装備したルシアママとは、まだまだ差があるかな~って感じ?)


 とはいえ、このえろえろコス──もとい【姫巫女の戦装束】を装備すれば、

 普段はレベル20台【一人前】のアプリルさんが【英雄級】になっちゃう!?

 それって、ホントすっごいコトだよねぇ?


「それにこの【封印】の魔法もすごいですよぉ!」

「えへへ♪ 本当にすごいですよね♪」


 裏山で魔物をさがしたら、ジャッカロープがいたから試してみたんだ。

 まず討伐寸前までダメージを与えて、封印魔法を唱える。

 そうしたら、風がスライムを【ぎゅぅぅぅ】って小さく丸めちゃって──

 最後には手のひらに乗るくらいの大きさの、球状になってたんだ!?


(で、でもこの魔物を封じてるこのボール(?)のデザイン)

『○○ゲットだぜ!』

(って感じのに似てるんだけど……気のせい?)


 ただアプリルさんによると、このボールを持てる数は最大6個まで。

 封印されてた魔物は6体だから、すぐ封印を解いて討伐しちゃった。


(んー、でも魔物を使役するっていうのも、ちょっとロマンだよねぇ♪)

(けど? 魔物使いにアイナママがさらわれちゃったから、印象悪いけどね~)


「ともあれ【封印】の魔法が使えるのは幸いだったな」

「そうだね、ルシアママ♪」

「ふむ、ともすれば【悪霊】は、アプリルを誘い出したのやもしれんな」

「そ、そう……なのでしょうか?」

「ああ、アプリルは私と親しく近づきやすい」

「そしてアプリルの身体を奪えば、再封印できる者は他にいない」

「あ、あぁぁ……」

「それで隣町で待ちぶせ、宿に泊まるのを見極めた後、メイドとして近づいた」

「だがクリスの存在を知り……アプリルの身体は早めに始末することにした」

「とまぁ、そんなところだろう」


 っていうか……

 さっきからルシアママが、キレッキレなんですけど!?

 いつもぼくを甘やかしてるルシアママしか知らなかったから、なんだか新鮮!?


「では、その【封印】の際にはクリス? 頼んだぞ」

「……え? ぼくがやるの!?」

「ああ、私の身体を【搦め手】で奪うのに失敗した以上……」

「【悪霊】がそれらの魔物を使い、力押しで来る可能性は高い」

「そ、それはそうかもだけど~」


 思わずアプリルさんを見ちゃうぼく。


「はいっ ですが幸い、あの魔物たちは千年の時を経て、魔力が枯渇しています」

「まりょくがこかつ」

「いわゆる……【干物】になっているイメージでしょうか?」

「おそらく小さく丸まったまま、すぐ元には戻らないと思います!」

「そ、そうなんだ」

「ただ、何かしらの方法でそこに魔力を注ぐことができれば……」

「うぅ、それでぼくらをおそってくる……よねぇ?」

「はいっ 特にルシアさまを、ですね」

「そうだな……それで私を倒せずとも、弱らせて唇を奪えれば良いわけだ」

「そ、それはまずいよねぇ」


 すると、アイナママが……


「そうすると、ルシア……?」

「ん?」

「貴女はその魔物たちとの戦いに、参加しないほうが良いかもしれませんね」

「な、なぜだ!?」

「何かしらの隙きを突かれて、身体を奪われたらどうするんですか」

「だ、だが私が不在では、相当な戦力ダウンではないか!?」

「ですが先程貴女が述べた様に、悪霊はただ【唇】を奪えば良いのです」

「その隙すら絶対に与えない……そう誓えますか?」

「うぐぐ……」

「幸いアプリルさん──今はクリスですが、貴女に準ずる力を持っているのです」

「ここはクリスに任せて、貴女は──」

「わ、私は?」

「お留守番をしていてください」

「がーんっ!?」


 ショックで膝からくずれ落ちるルシアママ。

 でも、しょうがないよねぇ?

 そしてアイナママ?

 アイナママはいっしょに来る気、まんまんですね?


「それに、伝承にはこうあります!」

「てんしょう?」

「はいっ 初代の姫巫女がその魔物たちを封印したそのさなか……」

「姫巫女と縁近い者たちが【運命】に導かれ、従者として覚醒した──と!」

「えんちかいもの?」

「はいっ 姫巫女の身近な【四人の乙女たち】の身体に次々と……」

「【巫女の戦装束】をまとう為の発動アイテムが、授けられたそうです!」


 ええとそれ……

 いまぼくが穿いてる【ヒモパン】ですよね?


「え、ええと~ これって予備とかは?」

「ありません!」

「え? じゃあ……おせんたくとかは~?」

「大丈夫です! なぜかこの下着──戦装束は汚れないんです!」


 いま【下着】って言ったよねぇ!?

 ビキニですらないのぉ!?


「よ、汚れないって……いくらなんでも──」

「ふしぎなちからです!」

「えー」

「で、ですからお風呂とお手洗いの時しか脱ぎませんけど……」

「不潔だなんてことは、絶対にありませんからっ!」

「おぅふ」


 と、ともかく?

 アプリルさんもお顔をまっかにしてハァハァしてるし?

 これ以上ふれないでおいてあげよう……

 今はぼくのことだけど~


「あ、あの……アプリルさん?」

「あっ はいっ アイナさん」

「先程の……4人の従者というのは?」

「はいっ 日頃から姫巫女を慕い思いやっている、そんな女性たちが従者に──」

「ですが……ここはエルフの森から遠く離れた人族の地です」

「貴女を思いやる者、というと……(ちらっ)」


 アイナママ、ルシアママをみてる?


「あー、残念ながら私は対象外だぞ?」

「あら、そうなのですか?」

「うむ、先程アプリルも言っていただろう? 四人の【乙女たち】と」

「つまるところ従者になるのは【処女】の娘だけなのだ」

「あぁ、なるほど……(ほっ)」


 アイナママ?『もしかしたら自分も?』

 そう思ってましたね?

 っていうか『その格好をしなくてよかった』……そんなお顔してますよね?


「いや残念だなぁ♪ 出来るなら私も従者として力を貸したかったが……」

「すでに【処女】ではないし? いや誠に残念この上ない♪」

「ルシアママ? アイナママに【あのこと】お話し──(ぽそ)」

「申し訳ありませんでした!」


 秒で見事な土下座をキメるルシアママ。

 だってルシアママが【処女】じゃなくなったのって……つい最近だもんね♪


 ◇◆◆◇


 ともあれ……

 なんとかして、ぼくとアプリルさんの身体を戻す方法を探すとしても、

 この【入れ替り】の件は、なるべくヒミツ! そういうことにしたんだ。


「とりあえず、今ここにいる4人のほかには……ミラさんとマハさん?」

「ねぇアイナママ? レイナちゃんはどうしよう?」

「ええ、そうねぇ」

「他の人と違って、レイナは一緒にいる時間も長いし……」

「それにクリスとレイナしか、知らない事も多いでしょう?」

「うん、そうかも」

「あの……レイナさんという方は?」

「わたしの娘ですよ、アプリルさん」

「クリスとは同じ歳で、家族として一緒にここで暮らしているのです」

「あ、そうなんですね? うふふ、お会いするのが楽しみです♪」

「ええ、ですが……今の貴女はクリスですし」

「あっ」

「なら、最初から話してしまったほうが良いかもしれないわね、でないと……」

「で、でないと?」

「クリスがレイナとの思い出を忘れてしまったと、あの子が塞ぎ込みそうで……」

「やっぱりお話したほうがいいよねっ!?」


 見れば、アプリルさんもほっとしてるみたい。

 そんなレイナちゃんのあいてをするのは、アプリルさんだし?


「ふむ、ではレイナには話してしまおう」

「ええ……」

「なに、レイナも聡明な娘だ……口外などしないだろうさ」

「そう、ですね……ありがとうございます、ルシア」


 そんなふうに、お話がまとまりかけた、そのとき──


「あっ あのっ」

「ん? どうした、クリス──いや、アプリル?」

「じ、実はそのぉ……お、お手洗いを──」

「ああ、では私が案内しよう」

「ふふ♪ うちの厠はちと凄いぞ? きっと驚く──」

「で、ですがっ その……うぅ」

「ん? どうしたのだ?」

「ええと……お、男の子って……どうやってするんですか!?」

「うぅぅ 恥ずかしぃぃ」

「あ」

「おぉ、そう……だったな」

「それは……盲点、でしたね」


 真っ赤になって恥ずかしがってるアプリルさんを、ママたちは見てたけど……

 そして今度はぼくを見て──


「アイナ? どっちにする?」

「そうですね……ではわたしがアプリルさんを」

「ふむ、では私がクリスだな」

「え? ママたち……なんのおはなし?」

「ん? もちろん──」

「用の足し方を、教える役目ですよ♡」

「「えっ」」


 するとアイナママは、アプリルさんの手をとって……


「さあアプリルさん? お手洗いに行きましょうね♪」

「えっ?」

「アプリルさん? 最初は驚くかもしれませんが……」

「慣れれば男の子のそれは……可愛いものですよ♪」

「えっ ちょ──アイナさま!?」

「じゃあ行きましょうね? んふふ♡」


 そうして……アプリルさんはアイナママに強制連行──

 いえ、連れられて……お手洗いに行きました。


「その後はクリス? 私が【女のやり方】を教えよう♪」

「えっ?」

「なに、少しばかりコツがいるだけだ♪」

「角度とか」

「なんの角度!?」

「安心しろ、私がじっくり教えてやるからな♡」

「えっ えっ!?」


 そしてぼくも、ルシアママにしっかりと見られながら──

 最初のソレをしたのでした……


 ◇◆◆◇


「こ、こんな角度なのぉ!?」

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