第25話 アルタム商会へようこそ♪

「えっ その……アイナさん、それは……」

「ええ、ほんとうです」

「いままで予備役という扱いで、ギルドに籍を置かせていただきましたが」

「そそっ そんなあぁぁぁっ!? あ アイナ様がっ!? ついに引た──」

「また現役に戻らせていただこうかと……あの、アマーリエさん?」

「いえっ!? なんでもありませんっ うふふっ」


 あれから10日くらいたったある日、

 ぼくとアイナママはまた荷馬車に乗せてもらって、街にやってきています♪

 それで、まずはギルドにお話を通しておこうってことで、

 アマーリエさんとお話させてもらってるんだけど……


「あの、やはりなにか問題でも?」

「いっ いえっ とんでもありませんっ」

「問題どころか、ギルドとしましてはそうれはもう……大歓迎ですっ」

「そ、そうですか……それはなによりです」

「それでそのっ やはりアイナさんの復帰の理由は……」

「やはり、クリスくんに関係が?」


 そういうとアマーリエさんは、ぼくのお顔をじっと見つめる。

 う~ん、あいかわらずの美人さんだなぁ。

 そしておっぱいがおおきい♡


「ええ……この子、クリスが今後も定期的にギルドの依頼を受けてみたい」

「そう申しますもので」

「あぁっ さすがはクリスくんっ もおっ…しゅき♡」

「……はい? 今……なんと?」

「いえっ 何でもありませんわっ うふふっ」

「そ、それでは今後、アイナさんもクリスくんとご一緒に……」

「ギルドの依頼をお受けいただける、と?」

「ええ、ですがあくまでクリスが主体で……ですが」

「わたしはあくまでその補佐、という形で同行しようと考えています」

「な、なるほど……それではその、アイナさんへの指名依頼などは?」

「申し訳ありませんが、それはよほどのこと──」

「人命がかかったような緊急事態にのみ、お受けさせて頂こうかと」

「な、なるほど、つまりは現状維持……ですね」

「ええ(ニッコリ)」


 やっぱり救国の英雄の【聖女】が現役復帰なんてしたら、

 そりゃぁいっぱいお仕事が来ちゃうよねぇ


「いえっ それでもアイナさんの現役復帰には、あり余る価値があります!」

「あら、そうでしょうか?」

「もちろんですっ」

「それにクリスくんは先日!」

「長いあいだ塩漬けになっていた依頼を……見事に達成した期待の新人っ!」

「えへへ♪ レニーさんたちのおかげですよぉ」

「あぁんっ なんて謙虚なんでしょう♡」

「そしてクリスくんっ」

「は、はひ?」

「今後もああいった難易度お高めの【塩漬け依頼】……」

「お願いしちゃって、いいんでしょうか?」

「はい♪ ぼくはできるだけ、困ってる人をたすけてあげたいんです」

「あぁっ もおっ もぉぉぉっ♡」

(う、うしさん?)

「はぁはぁ♡ 失礼しました……つい興奮してしまって うふふっ♡」

「は、はい」


 そんなかんじでぼくたちは……

 これから7日から10日ごとに街にやってきて、

 ギルドの依頼を受けることになったんだ♪


 ◇◆◆◇


「おー、ここが武器と防具のお店♪」

「ええ、アマーリエさんにご紹介頂いたお店ね」

「ここはドワーフの店主さんが自ら、武器や防具を作っているそうよ?」

「すごいっ ドワーフさんかぁ♪」


 ファンタジー作品でおなじみの亜人種族【ドワーフ】も、この世界にはいる。

 主に鉱山の坑道に住んでいて、貴金属の発掘と鍛冶がおもなお仕事。


(ちょっとガサツでガンコ、そして強いお酒に目がないんだって♪)


 そして魔法はいっさい使えなくて、重装備での力押しが基本です。

 大斧やハンマーが主な武器で、パーティーを組むとすっごく頼りになるみたい。

 ちなみに平均寿命は250歳くらいあるんだって。


(勇者のころはなんどか見かけたことがあるけど……)

(おはなしするのは初めてだな~ 楽しみ♪)


 そしてぼくは……ついにぼく用の防具を買いにきたんだ♪

 これからは、魔物と戦うことにもなりそうだし?

 ならしっかりと装備をととのえよう! ってことになったんだ♪


(うふふ♡ この前のおちんぎんでお金もけっこうあるし?)

(ちょっとお高くても、カッコいいのが買えるといなぁ♪)


 そんな期待をしながらぼくとアイナママがお店に入ると……


「うわぁ」

「あら……これはすごいわね」


 さほど広くないお店には……壁一面に剣や防具があったんだ。

 それこそ、お安い剣なんかは雑に箱に立ててあったり、

 逆にお高いのはカギ付きの格子戸のむこうに飾ってあったりと、いろいろだ♪


(お~、あっ【万物真理ステータス】)

(このお店でいちばん強い剣はどれ?)


 パッ!

-------------------------------------

【炎の精霊剣】

種 別:片手剣

制 限:【耐久度:78/100】

価 値:金貨21枚

性 能:【攻撃力+88】

    火の精霊【サラマンダー】の宿りし火属性を持つ魔剣。

    特に水属性の魔物には絶大な効果を誇る。


特 記:水に濡らすとストレスで夜泣きをする。

    その切ない泣き声に、良心を苛まれる所持者は多い。

    ただし水拭きによる清掃は問題なく、むしろ好む傾向にある。

-------------------------------------


(夜泣きするの!?)

(でも水ぶきは好きなんだ……)


 ともあれ、ぼくのもってるお金じゃもちろん買えない。

 もちろん買えるとは思ってなかったけどね~


(こういうときは……)

「あのぉ ごめんくださーい」

「は~い」


 お店の奥から聞こえてくる高い声。

 そして店員さんらしい人が、こっちに歩いてくる。


「いらっしゃいませ♪ 武器と防具の店【アルタム商会】にようこそ」

「あ、こんにち──わ?」


 そこに現れたのは……ぼくと同じくらいの背の女の人。

 ううん、もしかして……女のコ?

 そんな感じの、小柄でややポチャっとした人だったんだ。


「ええと、ここの店員さん……ですよね?」

「ええ、そうですよ?」

「ワタシがこの店の店主の【アルタム】です」

「て、店長さん!?」

「あはは☆ よくそうやって驚かれますけどね~」


 だって、ぼくの知ってるドワーフは……

 いわゆる背が低くてガッチリとした、いわゆる【筋肉ダルマ】体型。

 肌は赤銅色に日焼けして、それはもうテッカテカ。

 そしてフッサフサのおヒゲを生やしてるイメージ、なのに……


「女でも鍛冶の腕と、目利きには自信がありますから大丈夫ですよ♪」


 なのに、アルタムさんは肌はまっしろでポニョポニョ♡

 体つきはややポチャッとしてるけど、とってもおっぱいがおおきい。

 胸のあたりまである髪を、ゆったりとみつあみにして……

 女性らしいぽちゃっとした童顔の丸顔で、ニコニコとほほえんでる。

 あえてドワーフらしいところをあげれば……


(背のひくいところと……おヒゲ?)


 そう、このアルタムさん……おヒゲ生えてるんだよね。

 しかもフッサフッサの。

 そんなアルタムさんにおどろくぼくだったけど……


「それで、今日のお客さんはあなたの方ですか?」

「あっ はい! ぼくの防具がほしくて……」

「ああ、冒険者になったばかりな感じですか?」

「そうです……なので、なにを装備したらいいか、ぜんぜん」

「あはは☆ 最初はみんなそうですよ♪」

「とはいえ……とりあえずあなたのレベルと体型なら……これかな?」

「ええと、これ……?」

「ええ、入門者から初心者まで装備できる、ビキニアーマーですけど?」

「ぼくっ 男のコですけどっ!?」

「えっ ウソぉ!? そんな可愛いのに!?」

「か、かわいくなんてありませんのだ」


 って……アイナママ!?

 なんでアルタムさんに『激しく同意』っぽくうなずいてるの!?


「え、ええと? たぶんあなたなら……」

「え? ぼくなら……?」

「ビキニアーマー、加護がもらえると思うけど……装備してみない?」

「やーでーすー!」


 ◇◆◆◇


 そのあと……

 アイナママが過保護ぶりを暴走させて、フルアーマーを装備させようとしたり。

 あ、とうぜんサイズが合うのがなくて、お話にならかったけどね~

 他にもいくつかサイズが合うのがあったから、試着してみたんだけど……

 ことごとくアイナママとアルタムさんが


「これは……可愛くありませんね」

「ええ、クリスくんの魅力が半減ですね」

「って、それはダメな理由としてどうなの!?」


 それで、アルタムさんがお店の奥から持ってきてくれた──


「これは、ちょっといわくつきの防具なんですけどね」

「ああ、もちろん【呪い】なんてありませんから」


 その防具が……これ。

 いわゆるオーダー品らしくって、上から下までのフルセット。

 鎧下(アンダーウェア)は落ち着いた紺色のセパレートタイプ。

 金属製の胸部アーマーと籠手こては、すごく丈夫なのに軽くて……

 靴は革製のショートブーツで、とっても走りやすいんだ♪

 そして赤いショートマントを羽織って剣帯をつければ……

 すっかり軽剣士っぽいスタイルにしあがった♪


「これは……いいですね♪」

「あー、もうこれで決まりですよね♡」

「えへへ♪ そんなにいいかな?」

「ええ、とても」

「はい、ばっりちりです」

「「すごく可愛いですよ♡」」

「だからっ どうして【かわいい】基準なの!?」

「だって……」

「……ねぇ?」

「うぅ、ぼく男のコなのにぃ」

「まぁまぁ♪ でもその防具、軽くて着心地がいいでしょう?」

「あ、はい♪ すごくいいです」


 胸と腕の金属プレートもすごく軽いし、

 なんというか……すごく身体が軽く感じるんだよね、これ♪


「その防具一式はね? とあるお金持ちの商家が……」

「冒険者である自分の子供のために、オーダーで作ったものなんですよ」

「そうなんですか?」

「ビキニアーマーほどじゃないけど……それ、魔法がかけてあってね」

「まほう?」

「【瞬発力】がアップする魔法なんです」

「なにそれすごい!」

「でしょう?」

「わたしがそのプレートを打って、ひとつひとつ原材料を吟味して」

「そして王都の一流の魔法使いに、バフの魔法をかけてもらったのに」

「肝心のその子供さんが、ね……」

「ま、まさか……」

「ええ、モロに直撃しちゃって──」

「あぁ……そんな」

「そういう訳でね? キャンセルになっちゃったんです……それ」

「それは……」

「事情が事情でしょう? だから前金はそのまま頂いちゃって」

「でも、店先に並べるのもどうかと思って、しまっておいたんです」

「そんな理由が……」

「とまぁ、これが【いわく】の理由なんですけど……」

「どうですか? やっぱりイヤ、ですか?」

「それは──」


 悲しそうに目を伏せるアルタムさん。

 アイナママも手をそっと組んで、その人の冥福を祈っているみたい。

 けど、ぼくは──


「いえ、ぼく……この防具にします」

「……いいんですか?」

「はいっ それにぼくがこの後、しっかり使ってあげることで……」

「喜んでくれるんじゃないかって、思うんです!」

「クリスくん」

「きっと、その亡くなった人も──」


「えっ? その人、亡くなってはいませんよ?」

「えっ? でもさっき、直撃して……って」

「ああ、それはね……」

「当たったのは、子種♡」

「……はい?」

「あのね? そのお嬢さんが……」

「おじょうさん!?」

「冒険者の彼氏とね? 婚前なのに、いたしちゃってね?」

「いたしちゃった!?」

「それはもう……見事に直撃しちゃったんです♡」


 この時点で……

 アルタムさんはほっぺを染めながらくねくねしてるし!?

 アイナママはふいって、目をそらしちゃうし……


「さすがにおめでたのお腹じゃ、冒険者は無理でしょう?」

「だからそのお嬢さん、そのまま結婚して引退しちゃったんです」

「な、なな……」

「という訳なの、どうかしら?」

「え、ええと……つまり、この防具は──」

「あ、うん。女性用ですよ♪」

「ぼくっ 男のコなんですけどっ!?」

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